タキロンとの出会い
現在の日にちは7月1日。
急遽学校を休んで九州のじいちゃんの家に来たのだった。爺ちゃんは結構な金持ちのようで、大きい家に会社を経営している伯父さんと一緒に住んでいるのだとか。
というか、いいところのお嬢様なんだよな一応オレも……。母さんがいいところの出身だからな。
オレはあまり乗り気じゃないが、家に入っていく。
使用人もいるのなんかむず痒いぜ。オレは案内されるがまま中に入ったとき、なんか見知った顔がいた。
「タキロン……?」
「えっ、ラズリさん?」
タキロンがいた。
タキロンは驚きを隠せてねェ。もちろんオレもだ。
「えっ?」
「もしかしてラズリさん、親戚だったんですか!?」
「えぇ?」
タキロンの言葉を思い返してみる。
怖い人が来るといっていた。それってもしかしなくてもオレか? オレが怖い人で嫌だったという話か?
どんな偶然だよ。たしかにこっち側に来るのは初めてだけどよ……。大体じいちゃんがうちに来てたしこっちに来ることはほとんどなかったが。
「相談された怖い人ってオレのことかよ……」
「は、はい……。従兄妹じゃぞっておじい様から見せられた写真で……その、ちょっと怖くて?」
「ピアスとかファッションだろうが……! あのじじい、頭がかてぇからなァ。怖くないって言えよクソじじいが……」
「誰がクソじじいじゃ」
そういって、オレの頭を思い切りぶん殴ってきた爺さん。
いつの間に背後に?
「ふしだらな格好しおって! ワルの道に落ちるとは!」
「ワルじゃねェよ! ピアスは普通にファッションだろうが! だから若者に馬鹿にされるんだよクソじじい! というかいきなり人の頭を杖で殴るか普通!」
「おぬしは少し雑に扱っても問題ないからのぅ! なんてったってタフさが売りのうちの娘の娘じゃからなぁ!」
「だからといって殴るこたァねェだろうがよボケ!」
このじじい嫌いだ。
口うるさいし、オレのこのファッションに難癖付けてくるのがすごいむかつくし。兄さんとかにはなんも言わねェくせにオレだけやっかみを受けるんだよ。
「タキロン、行こうぜ。ここ案内してくれよ」
「えっ、あっ……」
「あんな頑固じじいは放っておいてな」
オレはタキロンを連れて出ていったのだった。
「あ、改めて、私は井原 友理奈っていいます……」
「巽 司。よろしくな」
「はいっ」
オレは九州鹿児島の街を歩く。
鹿児島といえばサツマイモとか? 桜島も見に行ってみてェなァ。
「あの、おじいさまにあんな態度でいいんですか? こ、怖いのに」
「いんだよ。あのクソじじい、オレにだけやっかみつけてくるんだよ。そりゃピアスつけてるのオレぐらいだけどそれだけで怒ってくるのもおかしいだろうが」
「そ、そうです、ね?」
「まァ、昔からオレはあの爺さんに関してはああいう態度だからいいんだよ。オレは別にそういうお嬢様とかでもねェしな。母さんがいいところのお嬢様だったってだけでオレに強制させられるわけがねェ」
ピアスなんてのは普通に若者のファッションだ。
オレもそんなごちゃごちゃつけてねェし、無難なピアスとかイヤリングにしてる。それなのにいきなり頭をぶん殴ってきやがって。
「それより話し方普通でいいよ。ゲームで会ったときみたいな。別にオレに恐怖してかしこまらなくてもいいよ。オレあまり怒らねェから」
「それって信じられますか? 怒らないから名乗りなさい見たいな感じの圧力がありますが」
「あれ絶対怒るよな。怒らないからっていって自白させて怒るの。あれすげー嫌だよな」
「わかる! 小学校の時先生が怒らないから名乗り出なさいって言って名乗り出た子がめちゃくちゃ怒られてトラウマになったって言ってた」
怒らないからという言葉は信用できない。これ常識。




