親子と寒気
ヨハネスが戻ってきて、俺たちにこの騒ぎの説明をしてくれた。
「それにしても、まずいことになったわね!」
フィリムは深刻な表情を浮かべている。
「もしガブネス王子の配下が手柄を立てたら、評価によっては豊饒祭で国王陛下に選ばれる王子が変わるわよ!?」
「なんだって!?」
俺はこのままヨハネスが国王陛下になるものだと思っていた。このタイミングでその状態になるのはさすがにマズイと思った。
選択肢は一つしかない。
「ヨハネス! 今回の戦争、俺が行ってくる!」
「レイス殿! 水臭い。こういう時こそ剣聖クレアの出番だ! 私も一緒に行こう!!」
「私も当然行くわよ! 休暇中に短剣も鍛えたし、任せなさい! ヨハネス。アンタは王宮で騒いでるみんなを安心させてあげて!」
「すまない。では早急に父上(オルダニネス国王)に報告をしにいく。着いてきてくれ」
敵の戦力が分からない以上、クレアとフィリムが来てくれるのはとても心強い。
ギルドで何度も討伐依頼で訓練したお陰で、恐怖や不安という気持ちは殆どなかった。
♢
王室の手前で、ガブネス第二王子が待ち伏せていたかのように此方をニヤニヤ見ながら立っていた。
「大変なことになったんだネ。でも、ボクの私兵団が既に現地に向かっているし、ボクの私兵団は王宮内でも一番強いし、今回は任せて欲しいんだネ」
「兄上……」
この一大事にゲラゲラ笑いながらガブネス王子は姿を消した。
戦争が始まる寸前だというのに。余程自信があるのか、あるいは……。
オルダニネス国王がいる王室。
ヨハネスは俺たちが戦に行くことを告げた。
俺たちはオルダニネス国王の前で跪いている。
オルダニネス国王は、俺たちを眺めた後に再びヨハネスの顔を見てこう発言した。
「ヨハネスよ、良き仲間を見つけたな。剣聖クレア、レイス君、フィルム公爵令嬢。国の一大事に其方達のような心強い者がヨハネスの下にいること、私は嬉しく思う。今後とも息子を宜しく頼む」
前に表彰式で初めて会った時の、玉座の間にいたオルダニネス国王の雰囲気とは違い、何処となくヨハネスと親子の会話をしているような感じに聞こえる。
今は国王陛下というよりも、息子想いのお父様という感じのイメージだ。
俺たちは立ち上がり、さぁ行くぞというタイミングで、急に嫌な空気に変わった。
この部屋ごと金縛りになるような雰囲気に……。今までそこには誰もいなかったはずなのに、目の前には全身から闘気が溢れ出るようなオーラを出している者がいた。
「かっかっか!! 戦争なら俺様も出番だ。そうだろう? 親父」
オルダニネス国王は化け物を見るような表情で震えていた。




