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たとえこの身が壊れようとも

最終回

春、新しい環境になった


今日から高校生になったという緊張と紅葉が入り混じった気持ちで俺は入学式に挑んだ


はしゃいでる俺とは反対に相変わらず隆重は眠そうでだるそうだった


俺らはいつも通りの調子でその日を過ごしていた


入学式が終わりクラスの面々と顔合わせをし帰ろうとしていた時


桜吹雪に包まれた君がいた


猫の混身だった君を見た瞬間、僕の世界が変わった


桜に彩られている君はとても綺麗で、幻想的で


そして


今すぐに消えてしまいそうな儚さを持っていた


多分俺はそこに惚れたんだろう


名前も性格も知らない、顔と猫の渾身ということしか知らない


君を


僕は好きになってしまったんだ


けど、なんてひどいんだろう


俺は猫アレルギーで君に近づくことすらできない


どうしたらこの気持ち伝えられるかな…


_____


誰かに呼びかけられている気がする


遠いところから必死に俺のことを気遣ってくれる可愛い声


なんとか目を開ける


「うう…、頭と首と背中が痛い…」


起き上がって今まで何が起こったか必死に思い出そうとする


すると、横から声がかけられる


「大丈夫?体は痛くない?」


ああ、この人か。俺のことを必死に呼んでいてくれたのは


「うん、大丈夫だよ」

「ありがとう、もういっても大丈…」


豹士が横を振り向き声の主の方に顔を向ける


そこにいたのは地面に座り心配そうな顔をした奈央だった


「ぶるぅぅうぅわわわぁぁぁぁ!ににに二戸山さんんん!?」


相手の顔をみて驚き慌てふためく


驚いた反動で後ずさった


「待って!近づかないで!いややっぱ近づいてください!お願いします?!」


訳も分からず変なことを口走ってしまう


(あぁぁ、ダメだ!一旦落ち着かないと!)


そして彼はアレルギーを抑えるための道具を持ってきていたことを思い出す


(そうだ!ガスマスク!)


キョロキョロと周りを見渡しガスマスクを探す


(どこいった?)


「ねえ…」


「ひゃぃ!?」


「もしかして、探しているのってこれ?」


奈央が黒くごついガスマスクを持っていた


「そうそれ!」


渡してくれんと言わんばかり両手を差し出す豹士


しかし、奈央はガスマスクを大切そうに持っており、渡す気配が一向にない


奇妙な沈黙が続いた


「あの…、二戸山さん、返して欲しいんだけど…?」


だんまりで一向に動く気配がない


どうしようかと焦ってきた豹士


「俺…それがないと二戸山さんとまともに話せないんだけど…?」


なんとか説得して返してもらおうとする


「でも…、今話せてる…」


「!ああ、それは薬を飲んでるから…」


「じゃあ、これなしで話そう」


突然の展開についていけず混乱する豹士


「吉良豹士くん」


「は、はい!」


(俺の名前覚えててくれた…)


自分の名前を覚えててもらったことに感動しながら次の言葉を待つ


「…あの時の」


「あの時の返事を今、しても…」


「いい…ですか?」


頬を赤らめそれを隠すようにガスマスクを口元に当て上目遣いで豹士を見つめる


「もももも…もちろん!!」

(ヤッベェェェェェ!!!かわえええええええ!!)


「えっと…」


「あの…」


「……」


「あの時の告白嬉しかったです!」


「でも…、私純身の人が怖いんです」


「過去に少しいろいろあって…それがトラウマになって…」


この辺りで豹士は諦めていた


過去にトラウマがあるのなら仕方がない、怖がらしても付き合いたいとかはないからなと心の中で自分を慰めていた


「だから!あの…その…」


言いにくそうに次の言葉を濁す


しかし決心したように言葉を紡ぐ


それは奈央の心からの叫びだった


「私と付き合ってくれませんか!?」


「え…」


何が起こったか理解しきれずぽかんとなる


やっと言葉を絞り出した


「純身が怖いんじゃないの…?」


「そう…、ですけど…」


嫌な記憶を思い出す


暗くてドロドロした記憶だ


「だけど…、あなたは違うと…思い…ます」


「なんとなくだけど、あの人たちと違う」


「そんな気がします」


「あなたからは暖かい、楽しそうな気持ちが伝わってきます」


「それだけで、私は付き合いたいと思いました」


「だめですか?」


相手の反応を待ってみる


全く応答がない


やはりこんなトラウマを持っているからめんどくさそうと思われたのだろうか


もう一度確かめるために呼びかける


「あの…、やっぱり嫌ですか?」


「面倒くさいと思いましたか?」


ちらりと豹士の方を見るとうなだれていた


突然、立ち上がって奈央の方に近づく


そして奈央の方を掴む


「嫌なもんがあるもんか!!」


「人間誰しも生きていればトラウマの一つや二つ抱えている!」


「それを俺に話してくれてすっげえ嬉しい!」


「俺も猫アレルギーだけど君を好きになった!たとえ体がおかしくなっても君といたいと思った!」


「そんな辛い過去よりも楽しい今を俺と一緒に作ろう!」


少年は思いをぶつける


台無しになってしまった告白を仕切り直すように


「俺と付き合ってくれませんか!?」


少女は微笑む


とても嬉しそうに、幸せそうに


「はい!」


お互いの顔には笑顔があふれていた


しばらく経って距離が近いことに奈央が気づき豹士の顔にガスマスクを押し付ける


豹士は何をされたか理解できず、奈央はひたすら照れている


そんな二人を見守る影が三つ


彼らは嬉しそうに二人を見ていた


一人は子供を見守る親のように温かい目で


一人はこれから起こるであろう面倒ごとを予想してやれやれといった目で


一人は好きな人が幸せになったのを見て少し悲しそうな目で


見ていた


二人は笑い合っていた


心の底から嬉しそうに


この先、この二人には多くな困難と偏見がつきまとうだろう


しかし今、この瞬間は確かに幸せだった

最終回になってしまいました


彼らの物語はまだまだ続きます


しかし私たちが知れるのはここまで


二人が幸せならそれでいいじゃない


それではまた


読んでくれた何処かの誰かさんに


感謝を

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