X.【水竜との出会い】
泉を見て回った翌日以降、ここ火竜の里をくまなく見て回った。ダルシャン以外の火竜達の住む洞窟なんかにもお邪魔したりして、数匹の竜とは結構仲良くなって、たくさんおしゃべりした。今は子竜はいないようで、私がこの地で1番の年少者。人間で、特に小柄な私は、まだまだ小さな子どもに見えるみたいで…どの竜もすごく優しく接してくれる。1番若い竜でも100年は生きているみたいだし、それに比べたら私なんてまだまだ…。そして、ダルシャンは相変わらず保護者のようで…たまにダルシャンがこの世界の覇者だということをすっかり忘れてしまいそうになる。ダルシャンの強さを見る機会がないんだもの。仕方ないよね!
そんなのんびりした日々を過ごしていたのだけど、ある日の夕暮れ。ダルシャンや、そばにいた他の竜達が一斉に同じ方向を向いて…。何だろうと思っていると、ダルシャンが何事かを教えてくれた。
【リイは相当な強運の持ち主だな。他竜種がこの里を訪ねて来るとは。しかも、あの気配は風竜ではなく、水竜のようだ】
【え? あのダルシャンも見たことがないっていうくらい滅多にない、風竜以外の竜種の訪問ってこと?】
【あぁ、そうだ。真っ直ぐにこちらに向かっておるから、間違いないだろう】
【おぉっ! すごい!】
まだまだ私には視認できないのに、竜には気配で分かるらしい。視力自体も竜の方が格段に上だから、竜に視認できても私にはまだまだ見えないんだけどね。
そして、私の目にもハッキリと水竜の姿が見えてから、目の前に降り立つまではあっという間で。目の前の水竜は深い藍色…すごく綺麗な姿をしていた。翼は火竜のそれより少し小さく感じる。水の中に住むという水竜は、水の中での生活に適応した姿をしているのかな。水竜は確か…癒しの力に優れているんだったよね。癒しの魔法を使えるってことかな? ダルシャンに前に教えてもらったことを思い浮かべながら、目の前の水竜を見つめる。すると、水竜からの声が聞こえてきて…。
【火竜の里に人間の、しかも子どもがいるなんて、なんとも珍しいわね】
【何を言うかと思えば。そなたら水竜が訪れる方が、よほど珍しいであろうに。今日は何用だ?】
【まぁ、そうね。今日は晶石を探しに来たのよ。昔は地上にもあったのだけど…今ではすっかり少なくなってしまって。昔のままの地質を残すここでなら、見つかるのではないかとね。貰っていっても構わないでしょう?】
【あぁ、我らには特に必要のないものだ。好きに探せば良い】
【そうさせてもらうわ】
ダルシャンとの会話を聞く限りでは、雌竜なのだろう。竜の雌雄は見た目ではあんまり分からないんだよね…。ところで晶石って何だろう? あとでダルシャンに聞いてみよう。そう思っていると、2匹の話題は私のことに変わっていっていて。
【界渡りをした先で出会ったのだ。我と波長が合う娘でな。リイというのだが。これからはリイを連れて、様々な地を巡っていくつもりだ。いつかは水竜の里にも訪れるだろう】
【貴方と波長が合うなんてすごいわね。是非とも我が里にも訪れて欲しいわ。リイ? 私とも『友達』になってくれるかしら?】
【うん! もちろん!】
水竜の名前はミリル。水竜の里で1番大きな癒しの力を持つ竜なんだって。ミリルが探しにきた晶石というのは、癒しの魔法を増幅させる効果があるらしくて。昔は地上にもたくさんあったけど、地上もだいぶ人間の開拓が進んで、採取できるところが減ってきているらしい。あまり人里に近いところで探していても、騒ぎになるかもだし、それは避けているんだって。
その点、ここ火竜の里では昔の地質が残ったままだし、火竜に必要な石でもないので、効果が薄まった晶石の代わりを求めてやって来たそうだ。
晶石を見てみたかった私は、ミリルと一緒に探して回った。ダルシャンもついてきてくれて、晶石を探す途中で出てくる別の石の説明をしてくれる。地球には存在しないだろう石がたくさんあって。その中で綺麗な石の幾つかを、いつか加工して身につけられるようにと採取。ミリルが探していた晶石も、小さくてミリルには必要ないものをゲット。陽の光にかざすと光のあたり具合によって色が変わっていって。すごく綺麗で気に入ったんだよね。
晶石を採取したミリルは、数日ほど滞在した後で、水竜の里に戻っていった。また水竜の里での再会を約束して。
そして、私の第一弾の異世界冒険も終わりを迎えた。今までの夏休みの中で、1番充実した夏休みになったと思う。仲良くなった竜達との別れは寂しいけれど、これからまた何度もこちらの世界には来るのだ。また遊びに来るねと約束して、笑顔でサヨナラ! 次の瞬間には、もう景色は神社のそれに変わっていて。でも、隣にはまた子竜の姿になったダルシャンがいて。夢ではないのだと分かる。さ、しばらくはまた学校と家と神社の行き来が始まる。次の冒険は冬休みかな!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。これにてひとまず完結です。




