罠?
〜魔女学校の関所〜
ーもう帰って構いませんよ
ーえ、えっと…あぁはい、それでは失礼致します
ー今回機械区からの手紙、というか抗議の書類が届いていましたが
ーえぇ!そんな内容だったのですか。申し訳ありません。
ー次回からは全て関所の時点で跳ねてください、私共から郵便会社には伝えておきますので、直接渡しに来るようなものがいれば…ようにして下さい。
ーかしこまりました…
ー開戦が近いのです、もう少し緊張感を持ってください
そんな話し声が聞こえる。
僕の知らない魔女と、関所のおじさんの声で。
大荷物に邪魔をされ思ったように建物に入る方法が思いつかなかったため、思わず人に聞こうかと関所に近づいた時に、それは聞こえた。
かろうじて身を隠したものの、あんな音を立ててよくばれなかったものだな、と肝を冷やした。
夕刻、魔女学校の全ての門と、関所が閉まる。
その頃を見計い、わざとらしいほどに空いた塀の穴から学校に入る。
どうしてだろう、なんで僕はここに穴が空いていること知っていたのか、
そしてどうして、結界が張られている筈の魔女学校に、その塀に穴が空いているのか
全てがわからないまま、僕はここにいるの。
なんだか混乱したまま、どう侵入しようか右往左往しているうちに
なにも正面から入れてもらえばいいんじゃないかと思い関所に近づいたはいいものの、ここで見つかっていては魔女の反応を見ることにはならないのか。
ダレンから言われたけど、やっぱりこんな荷物を持ったままの侵入には無理がある。
ーそれでは私も見回りがございますので、裏口には近づかないように
ーえ、えぇ…もちろんでございます、裏口には決して近づきません
なにかあるのかな、裏口に。
もう正門がしまっているんだから、見回りをしている魔女さんが出入りできる場所が他にあるはず。
それが、裏口?
今思えば、簡単に気づくことだけれど。
なんだかわざとらしいし、怪しいよね。
裏口から先ほどの魔女が入っていくのを確認してから、しばらく様子を見ていたけど施錠した音は聞こえなかった。
扉に鍵をかける魔法の存在の有無はわからないけど、明らかにその様子もなかった。
その扉の先がどんな部屋なのかもわからずに入るのはやっぱり気がひける。
ドアノブに手をかけながら随分長々と考え事をした。
やっぱり別の場所からにしよう。
あの誘導するような会話を思い出して、罠かもしれないという考えに至った。
ーにゃおん
その鳴き声に背筋が凍る。
まずい、近くの茂みに猫がいる。
もうばれている可能性はあるけど、捕まる訳にはいかない。
この場から離れようと焦り、足が縺れる。
転びそうになりながら一度敷地の外に出ようと塀の穴を目指す。
ーにゃあ
音を立てない程度の駆け足ではあるが、猫の鳴き声が一向に遠ざからない。
でももう少しで出られる、今日は一度諦めてダレンの家に戻ろ…
ーにゃあん
僕が入ってきたはずの、僕の侵入を許したその穴は、見る影もなく消えていた。
その代わりに、その穴を塞いだであろう猫がそこにいた。
ーにゃ
「副校長先生…?」