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十三話

 


 なかなかのショーだった。

 自分の力を過信して毒にやられたエルフ、やられたと気付く間もなく殺されたオッツォ、冷静な判断を下すことが出来ず無駄死にをしたグラム。

 やはり人間の阿鼻叫喚は素晴らしい。俺の後ろのエルフたちがいい悲鳴を上げているのだ。

 しかしながら、《ドラゴンズ・アイ》の唯一の生き残りである女は泣き叫ぶどころかその顔に笑みを浮かべている。

 まだ力の差が分からないのだろうか、いやそれとも・・・


 そして女が迫り来るゴーレムが数メートルの距離に迫ったところで動いた。



「バァァァァサァァァク!!!」



 彼女の周りからすさまじい闘気が立ち上る。


 俺はすぐに今回のショーをより楽しむために使っていなかった鑑定魔法を使い、彼女のステータスを確認する。



ニュー・ミスティリア


人種:虎人族

性別:♀

年齢:24


HP 1580/1580

MP 0/0

STR 200+200

VIT 180+200

DEX 45

AGI 150+200

INT 5


スキル


体術Lv2、拳闘術Lv3,身体強化Lv2


称号


戦神の加護:高い攻撃力を所有者に与える。狂戦士化を可能にする。



 亜人だったか。ステータスの各値だけをみると接近戦が得意そうだ。MPが0であることと所持スキルから魔法が使えないことも分かった。そして称号にある戦神の加護。これは戦神ベルセルクの祝福を得たものに与えられるもので、このニューとかいう女の戦闘能力が膨れ上がったのはこの狂戦士化が原因である。

 狂戦士化は一時的に使用者を大幅にパワーアップさせるがその反動で精神と肉体に大きな負担がかかる。ゆえに長時間の使用は出来ないのだ。



 ニューはまず近づいてきた1体のゴーレムに対し膝蹴りを見舞わせる。彼女の足は多少傷付けられながらもストームアーマーを抜け、ゴーレム本体へと届く。膝をもらったゴーレムは衝撃で粉々に砕け散った。

 彼女はそのまま次から次へと土人形を粉砕していく。



「もっとおおお、もっとだああああ!」



 完全に狂戦士と化したニューはこちらに向かってきていたゴーレムたちを暴れまわって全て破壊し終えると、ハイヴェノムアイヴィとそれを守護する残りのゴーレムの元へと駆けていく。


 困ったな。戦神の加護は彼女に予想以上の力を与えていたようだ。このままではゴーレムどころかハイヴェノムアイヴィまでやられかねない。上手く俺が手を貸すしかないか、

 もちろんハイヴェノムアイヴィに。



 ハイヴェノムアイヴィは先ほどからニューに向かってウィンドボールを連発しているが、彼女はそれを喰らってももろともせず一直線に走り寄っていく。


 俺はまず彼女の動きを止めることにした。

 使用するのは簡単な雷魔法。本当に初歩的な、雷系統の魔法が使える魔術師は誰でも最初に覚えるであろう魔法、スパークである。本来のスパークは相手に少しビリッと来たかな、と思わせる程度の威力でしか無いが、俺はこの魔法にオーバーなまでの魔力を注ぎ込む。それにより攻撃範囲が近距離スパークは遠くにいるニューまで範囲を広げる。更に俺は精密なコントロールにより攻撃対象を彼女の脚に限定する。


 スパーク 放電


 俺の魔法の干渉を受けた彼女は走っていたままのものすごい速度で転げ回った。すぐに立とうとして腕を使って上半身を持ち上げるが、下半身は言うことを聞かない。

 

 それもそのはずだった。なぜなら彼女の脚の全ての神経系はリッチーが無詠唱で放ったスパークの魔法によって完全に破壊されていたのだ。



「うおおおおおおおお」



 彼女が雄たけびを上げる。


 だが格好の的となったニューをハイヴェノムアイヴィが見逃すはずは無かった。

 

 ハイヴェノムアイヴィを中心に竜巻が出来上がる。

 風系上級魔法、レッドタイフーンだ。レッドタイフーンは風を渦巻状に形成するのに時間がかかるため、あまり実戦向きではない。だがこの場合はまさに丁度いいタイミングだった。


 ごうごう、と音を立てる竜巻がハイヴェノムアイヴィの元を離れ、ニューへとまっすぐ飛んでいく。そしてそのままニューの体を風の刃でずたずたに切り裂きながらニューを上空へと持ち上げる。無数の見えない刃が彼女の体を少しずつ切り刻みながらミンチへと変えていく。

 

 全てが終わった後に残ったのはニューの血で赤く染まった竜巻のみ。この魔法がレッドタイフーンと呼ばれる所以である。

 








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