罠からの脱出
「ミドリさん、ほんとにやるの~?」
現状を打破するために提案された案は私にとってかなりきついものだった。
正直涙目だ。
「それが最善です。長くこの状態が続くよりもこちらの方がいいでしょう」
「でも…」
「ぬしよ、諦めよ。余も嫌じゃがしょうがないじゃろ」
「私が守りますので…」
「…いいよアーサーちゃん、自分でどうにかする。多分、きっと」
「不安じゃ…」
いくらこんな状況でもアーサーに守られるなら私が頑張った方が絶対いい。
「では合図をしましょう。準備を」
ミドリの言葉を聞いて私はアーサーの補助をやめた。
「3…2…1…」
「シールド解除!」
シールドが急になくなり、そこで這っていた虫たちが落ち始める。
「ひっ!サンダーランス!檻!!」
同時に雷の槍を檻状に組み立てていき私たちの周りに形成する。
「簡易電撃殺虫だよ」
バチバチと音が鳴り虫たちが弾き飛ばされていく。
「うまくいった!ミドリさん!今のうちに!」
「はい!1分ほどお待ちを!」
そう言ってミドリは地面に手を当てて魔力を流し始める。
「根から根へ…。植物たちよ、近くの魔力反応を…」
行っているのは広域魔力感知。
植物同士が触れている箇所を通じて不自然な流れの魔力を感知、魔法石を探すやり方だ。
ミドリさんにしかできない芸当だ。
シールドを張ってその中にいると感知が難しくなるので一度解除しなければならなかった。
「よくわからない汁が!足落ちてきたよこれ!」
そう、一応雷の檻でも跳ね返すことはできるが完ぺきではない。
隙間からいろいろなものが落ちてくる。
「まだ!?ミドリさん!」
「まだ10秒ですよ!無茶言わないでください」
マジムリ…はよして!
「ちゃんと体毛がありますね。鱗粉も。強くはないですし本当に大きくなっただけなんですね」
私はアーサーちゃんが怖いよ。
「よく見たらかわいく…はないの。やはり気持ち悪いだけじゃ」
なんだかんだ以外とリリスは平気そうだ。
なんで私一人マイノリティなんだ!
そうして体感1時間(30秒)ほどたった後にミドリが目を見開く。
「…見つけました!北西80メートル先!」
「どこー!?」
と言われてもジャングル地帯。
指を指されても80メートル先なんて一切見えない。
「自分が先頭で誘導します!解除を!」
「わ、わかった!一部解除!」
指をさしている箇所を解除して通れるようにする。
「ウィンドカッター!走って!」
「言われなくてもー!!」
そうして走りだすとバシャっと切られた虫の何かよくわからない汁がかかる。
「ぶっ…!ふぐうぅぅ…」
涙が止まらない。
何だこれは?私が何をしたというのか…。
ブンブンと虫が追いかけてくるのを感じながら全力で走っていく。
そうしてミドリを先頭に走っていくと何かキラッと光るものが見えた。
「あれだ!サンダーランス!」
ミドリが魔法を使い、パキンっ!という音が聞こえる。
「あとは逃げるだけです!」
「ちょっと待って…え…ひゃっ!」
途中、アーサーが少し遅れてきているのを感じて小脇に抱えて走った。
そうしてどれだけ走ったかわからないくらい走り、気が付けば広場にいた。
「はぁ…はぁ…もう追ってこないよね…?」
「ふぅ…おそらくは」
「もう余はあの場所には入りたくはないぞ!」
「魔王様、すみません、抱えてもらって…」
「あ、ごめん、嫌だったかな?」
「いえ全然。それよりもここは…?」
辺りを見渡すとこの場所だけ不自然に森が途切れている。
そして中央にはぽつんと小さな小屋が立っている。
それ以外には何もない。
「…カルル・ヴェイルの小屋でしょうか?」
にしては周辺の魔力が気持ち悪い。
何か嫌な予感がするね…。




