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聞き込み②

「服は服屋という考えがいけないのか」


「たしかにな。それにおばさんが言っていたということで先入観があったかもな」



 先入観は視野を狭める。服ということで服屋を連想し、おばさまという情報でブティックに行きついてしまった。


 もっと柔軟に考える必要がある。


 服屋以外で見かけたということはスーパーや個人商店の可能性がある。


 もっと言えば、ただ軒先にかかっていたTシャツを売っていたものと勘違いしていたり、記憶違いを起こしている可能性もある。


 そうなると絞り込みは難しい。



「問屋を通さないで服を売ることってあるか?」

 竹丘が聞く。


「そうだな。個人で印刷とかか?」


「それかもな。やっぱり服からの絞り込みは難しいんじゃないか?」


「捕まえた人間世界の奴らの行動履歴の分析も終わったころかな? 一度本部に戻るか」


「そうしよう」



 地上に上がり、インプレッサに乗り込む。


 その間お互いに何もしゃべらなかった。収穫のない捜査の帰りは空気が重い。誰かに怒られるわけではない。ただただ自分の無力さを感じる。


 日野橋を渡り、日野市から立川市に入ったところで、竹丘が口を開いた。



「なあ、もしヒューマノイドが紛れ込んでいたとして、排除すべきと思うか?」


「どうしたんだよ、急に」


「ああいや、人間世界の連中を信じているわけではないけど、もしそういう場合って事でだよ」


「もしものことを話してもしょうがないけどな……。まあいいんじゃないか? 今のところ無害のようだし」


「今のところだろ? 今後反乱を起こすかもしれない」


「それは人間も変わらないだろう」


「そういうもんかね」


「そういうもんだろう」



 またしばらく沈黙が続いた。


 竹丘のように「人間世界」の思想が心の中に小さな点として生まれてしまうのが怖い。しっかりとケアをしていく必要がある。


 あの衝撃的な動画を見てしまうと、ある種洗脳状態になりかねない。いち早く事件を解決し、事実ではないと信じ込ませる必要がある。


 あるいは、真実だが警戒は不要と伝える必要がある。


 国家がどちらの選択をするのかは今のところ不明だがどちらにしても早期解決が求められる。


 本部に帰ったら他の捜査員の情報をまとめ、次なる捜査を始めよう。

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