捜査①
「ちょっと気になることがあったから、出てくるわ」
竹丘が本部に戻るなり、目的も言わずに出て行った。
まあいい。そういった性格の男だ。今に始まったことではない。
俺は俺で情報をまとめればいい。二人でやる必要もない。
同僚たちも俺たちがTシャツから手がかりを見つけようとしたように、それぞれの考えで独自で捜査をしていた。
凶器に使われていた包丁や鉈などの刃物は一般家庭にあるような量販店で買えるもので、そこから得るものはなかった。
捕まえた「人間世界」の連中は支離滅裂なことを言っていて、話しにならないとのこと。
そいつらと、死んだ「人間世界」の連中の個人情報から今は奴らのつながりや、「人間世界」の手がかりを探している最中だ。
調査の状況はこの程度のものしかない。真実というものは奥深くにあるらしい。多くの人間が動いてもなかなか思うようには進まない。
自分のデスクに座り、パソコンを開く。ネットで今朝の府中駅の暴動の反応を見るためだ。
やはりトレンドに入っていた。テレビのニュースもこの件が多くの時間を割いていた。
大手掲示板サイトでは、あの芸能人はヒューマノイドだとか、人間か否かを見抜く方法だとか、府中駅のニュースに影響されたスレが乱立していた。
面白半分で書いている人もいれば、恐らく本気にしているだろうと思われる人もいた。
この混乱が拡大しなければいいが……。
竹丘は戻ってこない。今日できることはやった。多分このまま帰宅するのだろう。
俺も一度戻って休みを取ろう。
□◇■◆
目覚めが悪かった。
府中駅のあの一件を見たのが原因だろう。悪い夢を見た。
重い気持ちのまま出勤する。
隣のデスクに竹丘はまだ来ていなかった。
鞄を置き椅子に座ると、パソコンを立ち上げる。
なかなか立ち上がりが遅い。
ディスプレイに映るぐるぐると回転する輪っかを眺めていると、竹丘が出勤してきた。
「おい、今日何するか決めてるか?」
「いや、お前と相談しようと思っていた」
「ちょうどいい。行きたいところがある」
「どこだ?」
「H&Hの本部だ」




