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謀反

1つ目の脱出方法の準備ができたその時、一つの暗い闇が動き出そうとしていた。

「それでは説明します。今から、あなたたちのコマンダーに一つ新しいボタンが現れます。

それを3人同時に押してください。『同時に』ですよ。」


Jは念を押した。


「その時、間違っても『緊急脱出ボタン』は押さないでください、これを押すと、その瞬間にその押した人の命は終わります。」


ユキは手が震えた。


「ユキ、大丈夫だ。やることは簡単だ。」


ユキはケンイチを頼るような目でみつめてからうなずいた。


「それではいいですか、行きますよ? 」

「ちょっと待った」


突如横から何者かの声が入ってきた。


「ウルフ? 」


ウルフは不適な笑みを浮かべていた。


「ウルフ、何がおかしいのですか」


ウルフは高らかに笑い始めた。


「同時にだって? ちゃんちゃらおかしいわ。助かるのは俺だけだ。」


一同その意味が解せないでいた。


「何言ってんだこいつは。同時にやらないと3Ted集まらないってJが言ってただろうが。」


ウルフは続けた。


「違うんだよ。俺には神が舞い降りたんだよ、ほら、みてみろ。これ」


そういってウルフはコマンダーを皆に見せつけた。


「俺のコマンダーにだけ、このクラッシュの主様からメッセージが届いたんだよ。

俺だけ助けてやるってな」


ハッハッハと笑い続けるウルフのコマンダーを皆は必死に見つめた。


「ウルフ? お前大丈夫か? 」

「あ? 何がだ?」

「お前のコマンダー、何も映ってないぞ」

あ? そういいながら、ウルフは自分でコマンダーを再確認した。


「そうか、そうだよな。お前達には見えないはずだ、何しろ、助かるのは俺だけだからな」


ハッハッハ……

辺りは異様な雰囲気に包まれた。


「ウルフ、落ち着いてください。あなたには何か見えるようですが、おそらくそれはゴーストです」

「ゴーストって何? 」


すかさずケンイチはユキにささやいた


「プログラムの合間に本来あるはずのないものが見える事があるんだ、ただそれは実際には実在しない嘘の現象だ、あいつにはそれが見えてしまって本物だと思い込んでしまっている」


「うるせー! 」


その怒鳴り声にあたりは一瞬静寂に包まれた。


「俺はここからおさらばするんだよ、この『緊急脱出ボタン』を押せば出られるって

この「主」からメールが来たんだよ! お前らには来なかったみたいだな、ざまあみろってんだ」


ハッハッハ、そう下品な笑い声があたりに響いた。


「ねえ、ケンイチ? 」

「何だ? 」

「もうあんなやつ放っておこうよ、このまま緊急脱出ボタンおせば、あいつ死んじゃうけど、それは自業自得よ。気にする事無いよ」

「それは違いますよ、ユキ」


Jは真剣なまなざしでウルフを見ていた。


「何? あんなやつにも愛情を持てってこと? 私たちの事つけまわして、大事なもの盗もうとしていたあんなやつのこと? あんなやつ死んでしまったっていいのよ!」


Jは大きく首を横に振った。

「そうではありません。もしウルフが『緊急脱出ボタン』を押して死を早まったら、あなたたちも脱出出来なくなる」

「えっ? 」


ケンイチが一つため息をつくと、

「あいつが死ぬのは勝手だ。だが、するとここの空間のTedが2になってしまう。そうなると脱出に必要な2.8Tedには足りなくなって、俺らも出られなくなるってこと、だろ? 」


Jは大きくうなずいた。


「何とか止めてください。ウルフを冷静にさせなければ、取り返しのつかないことになります。」


ケンイチは拳を握りしめた。あと少しだっていうのに、一体どうすれば?

ケンイチは目の前の暴走し始めたこのウルフに対し、必死で知恵を絞り出そうとしていた。

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