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Geister Kontinent   精霊大陸での日常  作者: うぃんてる
第一部 賢者の学院編
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84.連戦

 私の叫びに呼応するかのように迫り来る濃霧の中から何かが飛び出してくる。


「ジャイアントマンティスだっ!ラミエル、リリー、避けろぉっ!!」

「「きゃぁぁああっ!!」」


 突然現れたジャイアントマンティスがその大きな鎌を二人に目がけて勢い良く振り下ろす。ラミエルちゃんとリリーちゃんは虚を突かれたのか足が竦んで満足に動け無いようで迫り来る巨大な鎌に目を見開き悲鳴をあげる。それでもラミエルちゃんがなんとかリリーちゃんを突き飛ばし覆いかぶさるようにして地面に転がるのとほぼ同じくして2人の上半身があった場所を鎌が通過していった。


『エレン、ドゥエルフ!カバーしなさい!ラミエル、リリーはそのまま転がって後方に下がり立て直しなさい!』


 私の声にラミエルちゃんとリリーちゃんが必死の形相で取り落とした武器や盾を引っ掴み泥まみれになりながらもカバーに入ったエレンたちの後方へと転がり逃れてくる。エレンとドゥエルフ君が対峙しているジャイアントマンティスの後ろに更に新手らしき影が確認できるも、そっちは私たちが昏倒させた男たちの方に向かったのか、耳を塞ぎたくなるような音が聞こえてくる。


《バキッゴキッ、ミチミチッ!》

「ひぃぃっ?!ば、ばけものおおお!!」

「ぎゃあああああ!俺の足がぁぁあああ!」

「逃げろぉおお!喰われぎゃぁぁぁぁっっっ!!」


 昏倒中に襲われた男たちがジャイアントマンティスたちに捕食されその血肉を貪られ骨を砕かれるような音と絶望の悲鳴が霧の向こうから響いて来てドゥエルフ君ですら青ざめ顔を引きつらせている。


『みんなしっかりしなさい!気を強く持って!!生き残りたいなら目の前の敵に集中するのよ!!!』

「セレスっ!先輩たちに魔法の援護を、ジーナっ!霧の中からの不意討ちに警戒してっ。その他のみんなはラミエル先輩たちの支援をしなさい!」

「エレンっっ、あの2人が立て直すまで防御優先で頼む!復帰したら新手が来るまでにこいつを潰すぞ!」

「了解っ!」


 凄惨な現場が立ち込めた濃霧の向こう側だったおかげで思いの外みんなの立ち直りが早くなり助かったと思う。さらにはミランダちゃんがセレスちゃんたちに率先して的確な指示をだしていることに、やっぱりこの子はやれば出来る子で鍛えれば伸びる子だと再認識した。

 目の前の敵以外に感じられる魔物らしき霧の向こう側の生命の精霊反応は二つ。その他にもう一つ少し離れた場所に魔力反応が……?まさか。


『クレア、貴女はセレスと一緒にエレンたちの援護をしてちょうだい!ミューとカレンは私とミランダの直衛でお願い。ジャイアントマンティスは全部でおそらく三体よ!そしてその他に…………っ!』

《ヒュンッ!!》

『荒らぶる護りの風よ愛し子たちを守れ《エアリアルシールド》ッ!』


 微かに聞こえた風切り音に私は令嬢たちと自分が装備している“護符”を発動させる。淡い緑色の渦巻く風が私たちを守るように全身を包み込む。そして私とミランダちゃんを同じ射線上に結ぶ方角から飛来した、やじりに明らかに致命的な効果があるような毒々しい色の液体が塗られた矢が私に当たる直前に風の護りに弾かれ明後日の方向に飛び近くの幹に刺さる。


「なにぃっ?!必殺の一矢を外しただとっ?!」

『ミランダっ!』

「はいっお姉さま!《フォーススプレッド》ッ!」

「くっ、この程度!」

『ミュー、カレン!ミランダを優先的に守りなさい!』

「「はいっ了解です」」


 外されるとは思ってもみなかったのだろう、思わず漏らしたと考えられる暗殺者サンドラの声がした方へミランダちゃんを促して神霊力の力を弾丸のようにぶつけさせるも、どうやら抵抗されたらしい。


「エレンっ!まだ大丈夫かっ?」

「まだ死にたくないからね、大丈夫よっ!あんたこそ大丈夫よねっ?」

「ったりめぇだ!とにかく増援が来る前にこいつを潰すぞ!」

「ええ!セレス、クレアっどんどん攻撃しちゃって、私たちが守るから!」

「「はいっ」」


 今のところエレンたちはまだ大丈夫みたいだけど濃霧の向こう側からあと何体魔物が来るのかわからないし、いつまでも戦えるわけでもないから私は迷わずアイシャちゃんから託されたガープスネックレスを地面に叩きつけて救援を発信させる。彼女らが来れば最悪でも五分には持っていけるから。

 ラミエルちゃんたちがようやく簡単に泥を払って武器や盾を構え直して戦線復帰したようだ。襲い掛かってくるジャイアントマンティスの後ろ側では相変わらず断末魔と捕食しているらしい吐き気を催すような鈍い音が響いている。さすがにああいう最期だけはごめんだ。何とかしなければ。


「まさか遠距離攻撃を無効にされるとはな。だがこれならどうだ?《バルキリーズジャベリン》」

『生憎ね、《氷鏡》!』

「うぉっ?!反射とか卑怯だぞ!!」

『暗殺者が卑怯とかいわないでっ!!』

「それもそうか」

『あっさり納得するなら最初から言わないで』

「お姉さま、落ち着いて下さい!術中に嵌められますよ、《フォーススプレッド》!!」

「むぉっ?!っぶねぇ、大神殿直系なの忘れてたぜ!」


 エレンたちは物理攻防戦、私たちは魔法攻防戦の様相になってきて若干膠着が見えてきた頃、再び状況に変化が訪れる。


「くそっ、マンティス野郎の食事が終わったらしい!増援だっ!!」

「リリー、貴女はセレスたちをカバーしてあげて!」

「数が多いぞ、何か増えやがった!まずい、先輩の方にも一匹いきやがった!ラミエル!」

「任せなさい、クレア、カレン!三人でやるわよ?!」

「「お願いしますっっ」」


 戦いながら私はふとした疑問が頭に浮かぶ。なぜ相手はジャイアントマンティスに襲われないのかと。


『どうして貴方は平然とジャイアントマンティスの隣で戦えるの?』

「あん?当たり前だろ、こいつらは組織で改良したからに……って、しまったぁぁあああ!」


 サンドラが余計な事を口走ってしまったと動揺した気配を見せているが、私はそれ以上に驚愕してしまっていた。この男が言う内容が定かであればそれは、プレダナン時代の遺失技術や遺失魔術を使いこなしていると想像できるからだ。


『……ミランダ、カバーお願い。かなり本気だすから』

「無茶だけはしないでください、お姉さま」

『分かってる。《氷槍連撃改》!』

《グギャァァァァァ?!》


 手始めに、と私は腰に付けている一つ目のポーチに残されていた魔晶石全てを一気に使い潰して威力の高い氷の槍を複数作り出すとリリーちゃんとラミエルちゃんが対峙しているジャイアントマンティスに叩きつけ瀕死の重傷を負わせて支援して、エレンたちの後顧の憂いを断たせる。多分あと少しでアイシャちゃんたちが来てくれるはずだし。


「よそ見しているとは良い度胸だな!……何っ?」

「させませんっ、来ると分かっているなら私にだってこれくらい!」


 私のウィザード魔法の発動に生じる隙を突いてサンドラがミスリル銀製のショートソードで私に切り付けてくるも、ミランダちゃんが私の前に盾を構えて進み出でてその一撃を受け止め弾き返す。ミランダちゃんの動きに気付いたカレンちゃんとミューちゃんがジャイアントマンティスへのトドメをラミエルちゃんに任せてミランダちゃんへのカバーに当たりようやくこちら側も接近戦へと移行していった。



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