10 それは少しだけ昔
それから15年の月日が過ぎた。
研修を生き延びたルードヴィヒは神事省技術庁魔道具部に勤務していた。
五年前、人体の中の青雪虫の卵を発見する魔道具を開発した彼は、叙爵され男爵となった。
その功労から幹部への後押しもあったが、研究と開発をしたい彼は話を辞退する。しかし褒章の方はしっかりと受け取ってそれで王都に家を買い、妻や子供らと穏やかな暮らしを続けていた。
研修で一緒だったオスカは部下になった。リチャードは現場であれこれ身体を損ないながらも技術職が作った魔道具でそれらを補完し、『新技術の見本市』などと呼ばれながらあの支部の副支部長を務めているらしい。当時副支部長だったノーマンは別の地へ移動したと聞く。
「遅くなったね、ごめんごめん」
ルードヴィヒは公園のベンチでサンドイッチをかじる一人の少年の隣に座った。神官学校の制服を着た少年は軽く眉だけ上げる。
「飯は?」
「まだだよ」
「じゃこれ」
そう言ってバッグの中からひと包みのサンドイッチを取り出す。ルードヴィヒの顔が綻んだ。
「嬉しいなあ。君のこれは絶品だから」
早速包装紙を開いて一口食べると、もぐもぐと口を動かす。パンと野菜と燻製肉というシンプルな造りなのに、彼の作る物は何故か他のどこで食べるより味がいい。ルードヴィヒにとっては長年の謎だった。
少年も黙って食事を終え、並べた二つのカップに水筒から温かなコーヒーを注ぐと、一つを渡して来る。
「それな。魔獣肉のソースを少しだけ絡めてあるんだ」
頬を膨らませるルードヴィヒに満足気な目を向けて少年は言った。
「そうなのか? 全く気付かなかったな」
「隠し味程度だからな。普通、魔獣肉は癖が強すぎてこういうもんには使わない。俺の舌にもきつい。でもあんた、外で食べる時いつも頼むだろ。だから行けるかもと思って試したら当たりだったんだよな」
少年、マルクは得意そうに言ってコーヒーを飲む。
ルードヴィヒはそんなに食に拘りがある方ではないのでこれまで食事はなんとなくで選んでいた。だがそこに明確な好みがあったと知って自分でも驚いた。
(そうか、僕は魔獣肉が好きだったのか)
帰ったら妻と料理人に伝えてみようと思う。食卓に上がる機会が増えるかもしれない。
「師匠が言うにはな。この世には不味いメシはない、誰かの口に合わない料理があるだけなんだそうだ。美味いと思ってもらうには、相手の好みに合わせるのが何より大事なんだと」
「師匠。ってパウラさんのこと? そんな風に呼んでるの」
「師匠は師匠だからな」
それはルードヴィヒも何度か見かけて挨拶をしたことがあるマルクたちの隣人である。明るい栗色の髪と目をした小太りな中年女性で、確か子供が独り立ちした後に夫に先立たれ、今はどこぞの裕福な家に通いで料理人として働きに行っていると聞いている。
最初は時折差し入れを貰う程度だったが、やがて自分でも出来た方がいいと気付いて色々教わるようになったらしい。ルードヴィヒとしてはマルクがそちら方面に興味を持ったことが意外でならない。
二人が王都にやって来た頃、ルードヴィヒは彼らの暮らしの準備を手伝ったが、生活については深く関わらなかった。レダはこれまで一人でどうにかしていたし、マルクは寮に入るものだと思っていたからだ。それでもやはり偶の休暇などでは不便も多かったのだろう。
そもそもルードヴィヒ自身が使用人のいない生活を知らないので、その辺りに思い至らなくても仕方なかったのかもしれない。
(しかしここまで凝るようになるとはなあ)
ルードヴィヒが先程までよりさらに味わうようにしてサンドイッチを食べていると。
くいっと仰ぐようにしてコーヒーを飲み終えたマルクが、少し姿勢を正した。
「なあ。そっちの時間もないだろうから、用件に入るな。……俺な、もうすぐ16になるんだ」
「おお。君もとうとう成人だな。どうなることかと思ったけど無事に育ってよかったよ」
透き通るような空色の髪の少年を見て感慨深く目を細めた。
マルクと名付けられた子供がレダの下で育てられるようになってから。ノーマンを筆頭とした支部の人間はまるで彼ら自身が保護者のような気持ちで彼の世話をした。なにせ責任者であるレダ自身が人間の赤ん坊どころか人間というものを大雑把にしか知らなすぎる。仕方なく、子育て経験がある者たちの指示によって職場で交代制でマルクの面倒をみたのだ。
研修が終わったルードヴィヒはその役目からは離れたが、その後もちょくちょく顔は出していた。正確に言うとそれはマルクが気になったからではなく、青雪虫害の対策の為の道具を作る際にレダの知識と助言を必要としたので訪れざるを得なかったのだが。
けれど、不思議とマルクはそんなルードヴィヒに懐いた。
レダ曰く、ルードヴィヒはレダの周りで唯一レダの魔法の影響下になかったのでそれが安心出来たのだろうと。
ルードヴィヒたちと出会った頃、レダはまだ人間界で暮らし始めたばかりだった。そこで初めて知ったのだが、普通の人間というものは魔族を見ただけで本能的に恐怖に支配されてしまう。共に暮らしていくのにそれは面倒だと思ったレダは、出会う人間全てに自分を恐れないよう魔法で精神干渉していたのだそうだ。ルードヴィヒは唯一それを弾き返した人間だが、結局自力で怖がらなくなってくれた。
ちなみにレダも今では周りではなく自分自身に魔法をかけて人間と同じに見られるようにしている。
そのように遠く離れながら交流をしていた彼らだったが。
ある日レダは、マルクが6歳になれば王都の神官学校に入らなければならないという事実を知った。そしてそれなら自分も一緒に王都に行くと言い出したのである。
レダがそう決めた途端、何故か彼らの地域には魔獣の大量出没やら大きな自然災害やらが発生し、レダはほとんど一人でこれらを少しの被害もなく解決してみせた。
功績が認められたレダは本人の希望通りに中央神殿へ移動となったのだ。
ルードヴィヒはとても冷めた目でこれらの報告を聞いていた。
そして王都に知り合いのいない彼らの為にちょこちょこと世話を焼く内に、いつのまにかこんなにも長いつきあいとなっていたのだ。
今となってはルードヴィヒにとってのマルクは駄目な兄姉の下で育つ血の繋がらない甥っ子、くらいの心の距離だった。
神官学校での好成績を聞いては密かに喜んでいることは家族以外には内緒だ。
そもそも赤ん坊のマルクの第一発見者は自分だったのだ。あの時から今日までの日々を思ってルードヴィヒは自然と微笑んだ。
「それじゃあ成人祝いを用意しないとな。何か、これという物はあるのかい?」
一応こちらからもこんな物かなと目星をつけている贈り物はあるのだが、せっかくなので本人の希望を聞いてみようと思う。
しかしその質問を聞いた途端、マルクは似合わない緊張した顔になる。
「それなんだが。……いや、図々しいのはわかってる。でも一つだけ、どうしても頼みたい物があって……」
両手を膝の上で握り締めたマルクは、一度俯く。それから意を決したようにルードヴィヒへ顔を向けた。
「魔核を探し出す魔道具って作れるか」
「まかく。って魔族や魔獣の急所だよね? 対峙した時、一目で検知出来るようにしたい?」
「いや。本体の外に隠された魔核を見つけ出したい」
ルードヴィヒは黙った。遠い記憶が蘇ってくる。彼が黙ったので、マルクも意味が通じたとわかったのだろう。
「俺は、何が何でもレダに勝ちたいんだ。その為にはズルだろうがなんでもしてやる。だから魔核の入手が絶対なんだ」
「……」
ルードヴィヒはサンドイッチの最後の塊を口に入れる。手短に咀嚼して飲み込んで、コーヒーで一息ついてから、問いかけた。
「……理由を聞いても?」
「16までに俺があいつに参ったと言わせられなきゃ婚約破棄だって言われてる。これまで死ぬっほど努力してきたが、まだまだあいつには遠く及ばない。もう時間がないんだよ、だったら人の手を借りてでもどうにかするしかないだろ」
ルードヴィヒはズズ、と音を立ててコーヒーを啜った。
「……僕の記憶が確かなら。君らの婚約は君の保護が目的で、君が成人したら解消するのだったよね?」
「あいつが勝手に決めたんだ! こ、ここまで婚約してきて一度も結婚しないなんて国相手の詐欺みたいなもんだろうが。少なくとも俺は、一度は約束を果たしておくべきだと思う」
(どういう理屈だ)
呆れながらルードヴィヒはマルクを眺めていた。
頬や耳を赤くして、両手には力が入り過ぎてぷるぷる震えている。
(……そうだな。恋愛なんだか親愛なんだかはわからないけど。とにかくこの子はレダを失いたくないんだろう)
レダは魔族だ。いつ気が変わって自分の世界に帰ってしまうかもわからない。それを繋ぎ止める手段が結婚という契約だとマルクは思い込んでいるのかもしれない。
「でもなあ。本気でそんな道具が欲しいならもっと早くに依頼してよ。いくらなんでも開発時間が足らな過ぎじゃない?」
「16までに! 絶対参ったと言わせる筈だったんだ!」
「自信家だねえ」
ルードヴィヒは苦笑いした。
けれど気持ちはわからないでもない。神官学校の教師も含め、今のマルクに敵う大人は神殿の精鋭たちくらいしかいないのではないか。
ただ、レダはそれより圧倒的に上だ。おそらくはここ最近でレダとの差を実感させられるなにがしかの出来事があったのだろう。そこで初めてマルクは焦ったのだ。
(かわいそうだが、この子がレダに勝つ日は絶対来ないだろう)
人は魔族には敵わないのだ。人間界がこれまで魔族に支配されていないのは、それが幼児を従えて得意がる大人と同じように見られるからだ、と聞いている。魔族は誇り高いのだそうだ。
憐みの心を持ちながらひとまず諭してみることにした。
「なあマルク。仮にそういう道具が作れたとしてもだよ。確か魔核って本体と同等の強さ以上の相手にじゃないと壊されないんじゃなかったっけ? 君が手に入れたとしてもそれでレダに勝利宣言出来るかなあ」
「そこだな」
するとマルクはにやりと笑った。
「あのな。元々魔核の取り出しってのは魔族が主従関係を結ぶ時に使ってた技なんだそうだ。従の魔族が主の魔族に魔核を差し出すことで裏切らないという証明になる。そしてそういう契約を結んだ魔核は主の魔族以外には壊せないって保護がかかるんだそうだ」
「へええ! それは初めて聞いたな」
「で、だ。俺はレダから主ポジションの契約を受けてる」
突然の告白にルードヴィヒはぱちぱちと目を瞬かせた。
「え。なんで」
「そうしとくとあれが暴走した時に俺だけは巻き込まれないんだとよ」
「レダって暴走の心配があるのか……」
そんな危険は聞いてなかった。だがその件はひとまず置いておいて、と思う。
「……つまり、君にはレダの魔核が壊せる。魔核さえ手に入れられたらあれに参ったと言わせられる?」
「そういうことだ」
ふふん、とマルクは得意げな顔をした。
ふむ、とルードヴィヒは腕を組む。
(そういうことなら確かにそれが唯一の勝利の方法かもしれないけど……)
「うーん。けど現実問題、君の誕生日までにその魔道具を完成させるのは不可能だろう」
「そこをなんとかさー」
「どこかの上司みたいなことを言わない。人の開発努力をなんだと思っているんだい。そんな無駄な苦労をするくらいなら、君との婚約を解消しないようレダ本人に僕から頼んでみる方がいいような気がするね」
マルクはハッと息を呑んだ。そんなまともな方法を思いつきもしなかったのかとルードヴィヒは再びの苦笑いをする。
「どうだい。やっぱり自分の力で覆すのじゃないと不満かい」
「そ、そんなんじゃないけど」
「じゃあ決まりだ。それを僕からの君への成人祝いにしよう。適当な理由をつけておけば少なくとも婚約は続けられるんじゃないかな」
マルクは、いや、でも、などとぼそぼそ言っているが強く拒否するつもりはないらしい。
ルードヴィヒは家への訪問の約束を取り付けて、その日はそのまま解散することにした。
(うん。やっぱりそれとは別にプレゼントも買っておこう)
十日後。
ルードヴィヒは友人の伝手を辿ってマルクを養子にと望む貴族たちのリストを入手していた。
説得の内容はこうだ。平民であるマルクが魔族の庇護を失えば貴族たちが寄ってたかって彼の身柄を抑えに来る。そしてそのような場合、成人したマルクを引き入れる第一の手段は婚姻だ。マルクの幸福を願うなら、マルク自身が結婚したいと思う相手を連れて来るまで、魔族の庇護とその席を埋めておくという二重の意味で、婚約は継続した方がいいのではないか。そのように伝えればレダも納得するだろう。
(なんなら十年以上婚約を続けたらもう結婚するしかないとかなんとか、人間界の嘘ルールを押し付けてしまってもいいかもしれない。あれはそういうのほんと興味ないからな)
その興味のなさ故に苦労させられることもあったのだから、逆に利用してやるのもありだろうと思ってしまう。
レダ邸は中央神殿と神官学校の丁度真ん中くらいにある、静かな住宅街の中の借家だった。
馬車を降りて家の前まで歩いて行くと、玄関先には既に人影があった。
一人はマルクだ。ラフな服装にエプロンをつけていて、こちらに気付くと、よう、と手を上げる。
もう一人は女性。隣家のパウラだった。
「あら、シュミット様。あらあら貴方様がお見えになるなら余分に持ってくるんだったわ」
慌てる女性にマルクは手を振った。
「あー大丈夫、その人甘いの苦手だから」
「まあ。そうなの? ならいいのかしら。それじゃあ、温かい内にね、シュミット様、失礼致します」
ルードヴィヒにぺこぺこと頭を下げて去って行く。
パウラの姿が消えるのを待って、マルクはもう一度手を上げた。
「悪いな、レダの奴仕事で遅くなるって。どこぞで魔獣が暴れたらしい」
「それは仕方ないな。まあ、今日は遅くなる予定で来たから待たせてもらうよ」
そして二人はマルクの案内で家の中へ入る。
ルードヴィヒはマルクの抱えた籠に目を止め、気付いたマルクが答える。
「いつもの差し入れ。今日はアップルパイだと。丁度いいわ、レダの大好物だから機嫌もよくなるだろう」
「レダって甘いの好きだよねえ。人間界の甘味に惹かれてこっちで暮らしてるって言ってたけどわりと本気なんだろうな」
話しながら二人は居間のソファに落ち着いた。
テーブルの上には既に様々な料理が並んでいる。状態保存の魔法がかかっているらしく、どれもこれもほかほかと湯気を立てていた。ルードヴィヒの為にマルクが張り切ってくれたのだろう。
「腹減ったな。先に始めとくか」
「うーん。せっかくのご馳走だろう。一緒に食べた方がいいんじゃないかな」
「そうか。じゃ師匠の差し入れで繋いどくか。あんたも何か食べる?」
「ああ、だったら僕はこっちを開けて待とう」
手土産に持ってきた葡萄酒を見せる。実家から貰ったなかなかの高級品である。酒は好むが味は気にしない相手には少しもったいないかなと思っていたのだ。
マルクが用意したグラスに二人分を注いで軽く乾杯をした。
「君とレダの末永い未来に」
「説得よろしく頼みますよ」
一口だけ葡萄酒を飲んだ後、マルクはいそいそと籠の中を確認する。
「葡萄模様はレダ用のレーズン入りで、どんぐり模様が俺用のナッツ入りなんだ」
「わざわざ分けて作ってるのかい?」
「そうなんだよ、無茶苦茶凝り性なんだ、師匠は」
パイを取り出し、これに齧り付こうとして……ふと、何かを思い出したように手を止める。
「……なあ。あんたさ。あれがこっちにいる理由って、ほんとに甘味だけだと思うか」
手元を見ている筈の目がどこか遠い。ルードヴィヒはくるくるとグラスを回した。
「君の存在が一番の理由だよ、と言って貰いたい?」
「そういうんじゃなくて。……本当はさ。あいつは最初から何か目的があってこっちに来てて、それを達成したら向こうに帰る気でいるんじゃないかみたいな……」
「さあねえ。どうなんだろう。僕は甘味目的としか聞いてないけど」
もやついた表情のマルクにルードヴィヒは笑いかけた。
「でも、もし仮に何か目的があったとしても。それを達成してもレダは君の死を見届けるまでこちらに残るだろうし、そうでなければ君を連れて魔族の国に帰るのだろうと僕は思っているよ」
「!」
目を見開いたマルクは一瞬頬を赤くして、また視線をうろうろさせる。
「……そうかな」
「そうだよ。だって君、レダと主従の契約結んでるんでしょ?」
「あ!」
自分でも考えに入れていなかった事実を指摘されて、マルクはぱあっと顔を明るくした。
「そうか、そうだよな! なんなら俺が命令したらあいつって従うのかな? 今度試してみるか!」
「あまり余計なことはしないように」
ご機嫌になったマルクはそのままぱくりとアップルパイに齧り付いた。
そんな姿を見て目を細める。
(魔族の考えなど、僕らにわかる筈がない。……もしもレダが君を置いて人間界を去るつもりなら、それは僕らにはどうにもならないだろう)
それがルードヴィヒの本心だった。
だが、マルクが嘆き悲しむのはその時からでいいだろうと彼は思う。束の間かもしれないこの蜜月を何の影も落とさず過ごして欲しいと、身勝手に願ってしまうのだ。
そんなルードヴィヒの思いに気付かず、マルクはもりもりとパイを頬張る。次の手土産はやはり菓子の方がいいだろうかとルードヴィヒがぼんやり考えていると。
ガリ、と鈍い音がして、突如マルクが勢いをつけて口の中の物を吐き出した。
「ああ? なんだこれ」
マルクの掌に落ちた物は。
真っ二つに砕けた深紅の小さな珠状の何か。
「!!」
そこで物音がした。二人が顔を上げると、いつのまにか彼らの目の前にレダが立っていた。
髪は乱れ、戦闘用神官服は魔獣の返り血がついている。身繕いをする間もなく現場からこちらへ移動したのだろうと見て取れた。
「なんだよ、そこまで急いで帰らなくても……」
「マルクのせいじゃないから」
レダは、笑っていた。
「私の管理が不味かったんだ。だから自分を責めたりしないように」
「何……」
「さよなら。お前を愛していたよ。これからうんっと幸せにおなり」
そう言った直後にレダの姿が砂の様に崩れ去り、消えた。
同時にマルクの掌にあった深紅の珠も消えていく。
マルクは呆然と立ち尽くした。
「え……」
「‼ レダの魔核……!」
気付いたルードヴィヒが立ち上がるのと、突如身を折ったマルクが吐き出したのは同じタイミングだった。
マルクは嘔吐しながら床に蹲る。
ルードヴィヒはそんなマルクに駆け寄ると、獣の様な声で呻きながらいつまでも何かを吐き続ける彼の体を必死に支えていた。
神事省軍事庁魔獣部所属レダの突然の死が報じられたのはその翌日だった。
関係者の証言に寄って捜索が入った隣家の内部は、元々誰もいなかったかの様に何一つ痕跡の残らぬ空き家状態だったと言う。
書き溜め分はここまでです




