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18 空間移転魔法陣

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

 正月明けから空間移転魔法陣の実験を始めた。

 移転魔法陣は石っぽい材質で出来ている。1.2メートルの四角で、厚みは20センチメートルだ。

 表面に、大きく複雑な模様で魔法陣が彫り込んで有る。ダンジョン魔法陣は着色無しで金貨10枚、魔法陣に青い色を付けてある物が空間移転魔法陣で金貨20枚だった。ダンジョン魔法陣は2、3枚残っているが、どちらも10個ずつ購入した。

 移転魔法陣が日本でも使えるか確認する。

 第1段階は、魔力が有るダンジョン内で行う。俺の部屋に空間移転魔法陣を置き、師匠の部屋に置いて動作を確認した所、移転魔法陣は正常に動作した。


「ダンジョン魔法陣が使えるから大丈夫だと思った。

 片方を港区のダンジョンに設置してみよう」


「次は第2段階ですね。魔力と魔力がある場所で、その間に魔力の無い空間が存在するパターンですね」


「これは是非、成功してほしいな。

 このパターンがダメだと、こちらでは使い物にならない」


 港区のダンジョン、第1号迷宮探索基地に来た。

 基地内に岩崎迷宮探索㈱の出張所が有るので、その中に魔法陣を設置する。緊張しながら魔法陣に乗り、深呼吸して魔法を唱えると自宅の魔法陣が認識出来た。

 それを選ふと、ふっと体が浮く感じがるす。周りを見ると俺の部屋だ。無事に移転魔法が使えたらしい。

 消費魔力は10だったので、王国で行う移転と変らない。とりあえず菜々美さんが待っているので急いで戻った。


「菜々美さん、無事に俺の部屋に移転出来たよ」


「それは素晴らしいです。日本でも、魔力が有れば使えますね。

 次は、第3段階の魔力の有る場所と魔力の無い場所の場合ですね。

私の部屋と、圭吾さんの部屋がつながれば嬉しいです」


 一度俺の部屋に戻り、菜々美さんの家に向かう。家には誰も居なかったので、菜々美さんの部屋にお邪魔した。菜々美さんの家には2、3度来たが、部屋に入るのは初めてだ。

 菜々美さんの部屋は、女の子の部屋にしては殺風景だ。と言うか、ランニングマシンとスポーツジムに有りそうなフィットネスマシンの存在感が半端なかった。8畳の洋間が狭く感じる。ぬいぐるみやファンシーグッズは見当たらなかった。


「部屋に関する感想は受け付けていません。さあ、魔法陣を設置しましょう」


 感想を受け付けないのは、この部屋が問題有りだと認めているらしい。菜々美さんを見ると意味深なウインクをして来た。


 菜々美さんの部屋を見られたのは嬉しかったが、実験は失敗だ。魔力が無い場所では使えないらしい。

 第4段階の、魔力が無い場所での実験はやる必要も無いだろう。迷宮間の移動に使えるので、各迷宮に空間移転魔法陣を設置すれば良さそうだ。何とかお願いしなければならない。



 迷宮対策特別委員会(ダンジョン法の時出来たらしい)は、俺達が持ち帰った情報が原因で大変な騒ぎになったらしく「報道されていませんが、とても面白い話が有ります」と言って、山下副指令がこっそり教えてくれた。

 異世界で領主持ちの貴族になれるチャンスに、何人もの人が立候補し、俗に言う大物政治家達がその座を巡って醜い争いを繰り広げた。

 特に黒幕と呼ばれる、首相や大臣を退いた後も裏で権力を握っている人達は、貴族と言うステータスに大いに反応したらしい。


 誰に決まったか興味が出て来たが、結果はとてもつまらなかった。

 領主を選ぶ条件で揉めていたが、異世界に行くのだから生命の腕輪を付けなければならない。それを聞いた候補者たちは、自衛隊員が生命の腕輪を付けた時の事件を思い出したのだ。

 自衛隊員300人以上が付けた時、10人近い人の腕輪が曇った。

 その中の2人は黒に近かったと言う。生命の腕輪は、人の善悪を暴き出してしまうのだ。曇った人は志願を取り下げて、自衛隊からも除隊してしまった。

 結局、生命の腕輪を付ける勇気の有る人はいなかったので、領主希望者は誰もいなくなった。


 その後は正常な議論が行われた。

 日本国として、異世界とは言っても他国に領土を持つのは不味いと言う意見でまとまり、現在調査を担っている岩崎迷宮探索株式会社に依頼する方針になった。

 費用は出すが、人は出せないという日本らしい結果だ。


「まだ閣議決定はされていませんが、変更は無いと思います。

 高橋君達には苦労をかけてしまい申し訳ないのですが、ノルマンディ領の購入をお願いします。

 私が出来れば良いのですが、特別と言っても公務員の端くれですからそうもいきません。

 本当に申し訳ありません」


「わかりました。岩崎教授と相談して進めたいと思います」


 菜々美さんが横で「圭吾君が領主になれば良いのに」と言っている。そんなにニコニコしながら仕事を押し付けないでほしい。小さな声で「領主夫人は任せてね」と言っていたので、思わず赤くなってしまった。



 山下副指令の話を伝える為に、岩崎教授の所に行く。空間移転魔法陣の設置についても相談しなければならない。


「大体の話は聞いています。高橋君が王国の領主になるなんて良いですね。とても素晴らしいですよ。

 高橋君なら、何か有った時逃げて来られるでしょう。菜々美も賛成だって言っています。

 領地のスタッフは現地の人で固めて、こちらの人間は参加させず、出来るだけ交流を抑えてトラブルの発生を避ければ良いと思います。

 迷宮の近くに、日本の出張所を作れば大丈夫ですね」


 え、いきなり俺が領主なんだ。岩崎教授の案は無いんですか。

 もう少し真剣に考えた方がいいと思う。


「領地の運営なんか出来ませんよ」


「高橋君が言っていた、マリエッタさん任せるのはどうでしょう。最初から心配していては何も進まないですよ。

 実際には職員、王国では行政官が行うのですから、領主なんて誰でも良いです。お金さえあればなんとかなりますからね。

本当に上手く行かなかったら引き上げるのも選択肢です」


 教授の話を聞いていると簡単なのかもと思った。失敗したら逃げて来るのも有りかもしれない。少し、やっても良いかなと言う気になって来た。

 菜々美さんを見ると嬉しそうにしている。とりあえず「少し考えさせてください」と即答は避けた。

 そう言えば、移転魔法が使えるので、その話をしなければならない。


「空間移転魔法陣ですが、迷宮に設置する件はどうなりましたか」


「今、山下副指令と交渉していて、各迷宮探索基地に会社の出張所を申請中ですよ。少し時間が掛かりますが、大丈夫でしょう」


「ありがとうございます」


「許可が下りたら連絡しますよ。

 あと、全く別の話ですが、会社の株式を増資しようと思っています。高橋君と菜々美で900万円出してくれませんか」


「歩合給が余ってるから、それ位良いです。でも、何の為ですか」


「会社の持ち主は株主になるのは知っていますか」


 岩崎教授の質問に、頷いた。


「この会社は、将来もっと大きくなります。そうした時の為に、名実ともに君達の物にした方が良いでしょう。

 始める時は、学生の君達からお金を取るのは申し訳無いと思って私が出しましたが、まさか半年もしない内にこれ程売り上げるとは思っても見ませんでした」


「気を使って頂いてすみません」


「それから、高橋君の自宅周辺の土地を購入する予定です。

 君のお父さんには話して有りますが、魔力が広がっている20メートル以内は確保したいですね。

 利用用途が有りますし、万が一モンスターが出て来たら大変です」


「購入は会社ですか、それとも政府ですか」


「今調整中で、何とも言えない状況です。出来れば会社で買いたいのですが、安全を考えると迷宮探索基地に準ずる設備が必要ですからね。

 政府が、強制的に買い上げる可能性が高いでしょう」


 俺の住んでいる所は住宅地のど真ん中だ。

 アパートやマンションだっていっぱい有る。周辺の人達が引っ越すとなればなかなか大変だ。俺に責任は無いと思うが、申し訳ない気持ちだ。


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