英知協会
「確かに奇妙な集団だな。彼らは『英知協会』に所属している」
ランドルフさんは苦笑しながら話を続けます。英知協会…。初めて聞く言葉ですね。
「奴らはこう主張している。『我々は既存の枠組みを超えて真実を探求する者なり』とな。司書ではないのに禁書やら古書やら暗号やらを解読しようとしてる」
「司書以外が解読しようとして問題ないんですか?」
「問題しかない。先月も1人が失明した。司書以外の人間が無理に解読しようとすると目に見えない力が働くと言われている。古代魔法ではないかとも推測されてるな」
無理に解読しようとするのは思ったより危険な行為でした。それなのになぜ英知協会に所属する方々は解読することを諦めようとしないのでしょうか?…何か解読したいものがあるとか?
「…まぁ、英知協会のことは覚えておいて損はないぞ。知識・真実があるところに奴らはいるからな。捕まると面倒だから、英知協会と名乗る奴らからは逃げるといい」
「あはは…覚えておきます」
「なぜか図書館には近寄ろうとはしないんだがな」
なんかもう、私たちとは違う生態を持つ生き物のように感じてきました。話を聞く限りでは面白そうなのですが、ランドルフさんが渋い顔をしてるので遭遇したときは逃げるに徹しましょう。
そんなことを話していると、屋敷のドアがノックされました。ランドルフさんが来訪者を確認するために向かいます。…はっ!そういえば私、ドナお爺さんを探しに来てたんでした。すっかりお話が楽しくて、目的を見失っておりました…。
「おい、爺さんが戻ってきたぞ」
「なんだー。お前、俺に何の用だー」
ドナお爺さんは髭が立派な、少し小柄な方でした。手には古ぼけた鏡を持っています。ところどころ服が汚れていますね。語尾を伸ばすのが話すときの癖なのでしょうか。
「初めまして、ステラといいます。アンの街でペルルさんからあなたを見つけてほしいと頼まれて探しておりました。一週間も行方が分からなくて、大層心配されていましたよ」
「ペルルがかー。それは申し訳ないことしたなー」
「そんなことより鏡が見つかったんだな。これがあれば爺さんが持ってきた古書、解読できるぞ」
ランドルフさんそんなこととは何ですか、そんなこととは。私の物言いたげな視線を無視して、彼の目はドナお爺さんが持っている鏡に釘付けでした。鏡を受け取ると、早速古書の解読をするみたいです。
「これは少し特殊でな。文章をこの透明の鏡越しに読むことで、魔法の干渉を和らげて正しい内容をしることができる。この鏡がないとでたらめな文字しか浮かび上がってこないからな」
「…よく分からないー」
特定の物を媒介にして読むことが可能となる本もあるのですね。それにしても透明の鏡ですか…。ドナお爺さんはどこでこの鏡を見つけてきたのでしょうか?私も1つ欲しいです。
「ーー解読できた。まぁなんてことはない、アルベールという家系について書かれている」
「あー、俺が探していた本ではないなー」
「どんな本を探しているのか聞いてもいいですか?」
「魔剣について書かれた本だー。俺鍛冶職人なんだけど、魔剣を作るのが昔からの夢でなー」
「だが魔剣作りはもうとっくの昔に失われた技術だ。…もしかしたら、古い書物に作り方が書かれている可能性はあるけどな」
「それを信じて、古書を買いあさってるんだー。ま、今のところ全敗だけどなー」
魔剣…。ファンタジーでは定番と言っても過言ではない武器ですね。いつかその作り方を復活させるためのクエストも見つかりそうですね。
ドナお爺さんは肩を落として屋敷を去っていきました。あ、ちゃんとペルルさんの宿屋に戻ると約束をしてもらいましたよ。
「お邪魔しました」
「あぁ…。また来い」
「!はい。お言葉に甘えて」
ルノーも片翼を上げて挨拶していました。さて、この後は何をしましょうか?アンの街に戻ってもいいですが、せっかく第二の街に来たので探索したい気持ちもあります。うーん、どうしましょうか…。
「一度冒険者ギルドに行きましょうか」
「ホー」
「シュー」
迷ったときは冒険者ギルドです。クエストを受けてもいいですね。あとは受付のお姉さんにお礼と報告をしましょうか。ーー少し迷ってしまいましたが、無事にギルドにたどり着きました。
「こんにちは。あ、無事会えましたか?」
「はい、おかげさまで会うことができました。本当にありがとうございました」
「いえいえ」
受付のお姉さんは私を覚えてくれていたみたいです。顔を見るとすぐに会えたか尋ねてくださいました。本当に頭が上がりません。
「ランドルフさん、優しい方だったでしょう?」
「はい。私が知らなかったことを色々教えてくださいました。新しい司書の上位職についても知れましたし」
「あら、あなたも司書なんですか?」
「はい。まだまだ新米の放浪の司書です」
「まぁ、放浪の司書の方に久しぶりにお会いしました。…この街に図書館はないんですよ」
「そうなんですか?!」
「残念ながら…」
すべての街に図書館はあると勝手に思い込んでいました…。ちょっとショックが大きいです。
次の更新は4月1日になります。
私生活が思ったより忙しくて、小説を書く暇がないです…。更新を楽しみにしてくださっている方には本当に申し訳ないです。




