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1話

汚れた壁、転がる死体、汚臭が満ちる道。

そんな、いつも通りの散歩道を男は歩いていた。

男といっても小柄な身長や可愛らしい童顔、短い黒髪は少女のそれである。

歩く場所や、放っている雰囲気さえ違えばさぞや幻想的な雰囲気を放つことができただろうが、かなしいかな。ここはスラム街。見捨てられた、拾われなかった者達の街である。

いくら見た目に不似合いな場所であろうと男にとっては既に日常となった場所である。今晩の散歩もいつも通りの日常となるはずであった。しかしながら、非日常とは日常に紛れ込むからこそ非日常なのである。

男は出会った。いや、この時点ではまだ見つけたと表現すべきだろうか。

女の死体だった。

道を通ろうと踏みつけた死体の下から妙な感触がしたのでどかすと見つけた。

中々お目にかかれない美人である。

眩い金髪はスラムの汚れに侵されても尚美しく、肌は不自然なほどに白く、しかし生気が無かった。

死体だからではない。たとえ生きている頃に出会ったとしても死体だと思わせるような、生きていたことがなかったのではないかと思わせる、そんな女だった。

あまりに美しかったからだろうか?

何故か惹きつけられて、男は女の死体に触れた。


「はじめまして。マスター。ワタシは人型汎用人工知能3号機、メリアとお呼びください。」

「どっ、かっこわ、ぎゃああああああ!」


死体だと思っていた女が急に喋りだし、驚いた男は奇声を上げながら数歩後ずさった。


「生きてたのかよ!」

「生きる、という表現はワタシには当てはまりません。しかしマスターがワタシを、死んでいる。生きていないと勘違いしたのなら、それはスリープモードに入っていたからだと考えられます。」

「スリープ……?良くわからんが、お前誰だよ。」

「人型汎用人工知能3号機、メリアです。以後、よろしくお願いいたします。マスター。」

「あ、ん?え…と、おう、よろしく。………………ん?人口知能?」

「はい。ワタシは人型汎用人工知──」

「ああハイハイ、何回も言わなくて良い。飽きた。にしても、人工知能?とっくの昔に規制された大犯罪じゃなかったか?冗談にしても趣味が悪い。」

「冗談?いえ、冗談などてはありません。ワタシは人型汎用人──」

「だから飽きたからいいって。」


男は少し考えたあと、すぐに結論が出たのか女──メリアの方を向いた。

「はっはーん。わかったぜ。たまにいるんだよな機械で自分の理想の恋人を作ろうとする実行力のある変態が。あれだな、文字通りに捨てられたんだな。」

「なにを言っているのか分からないです。」

「しっかし、わざわざ人工知能なんつう設定つけるなんざ、酔狂なやつもいるんだな。」

「設定ではありません。ワタシは本当に人工知能です。もし人口知能で、なければマスターとここまで会話することすらできていません。」

「そうなのか?」

「そうです。」

「俺には良くわからん。そういうのはまともな教育受けてるやつに言ってくれ。」


未だ理解をしない男に詳しく説明をしようとしたメリアだったが──


「見つけたぞ!ミルリック!」


──突如、響いたまた別の男の声に遮られた。

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