取り敢えず学園に行きます
取り敢えず夜ももう更けてきたし、と言う事で今日の所は念話を切った。
それと同時に念話機能のあるブレスレットは外しておく。
『俺にマグリットを殺せとーーーー
・・・・・・・・・少し、時間をくれないか。』
それだけ言ってプツリと念話が切れた。
そこまで落ち込ませる様な事を言ったつもりは無かったが、殊の外ダメージがあるようだ。
そして色んな事をフレデリックに伝えられてマグリットも混乱していた。
「協力者・・・か。」
時間も遅い為、素直にベッドに寝転がる。
それでもきっと今日も眠れないのだろう。
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流石にやり直し初日の様にうなされて夜中に起きる事はなかったが、寝るのも遅く起きたのも早い為寝不足は続く。
隈が見えない様にと、部屋に備え付けのタオルを魔法で温めてから目の上に乗せる。
寝不足がバレるとソフィーに怒られてしまう。
(協力するって事は・・・
学園に通わないといけないって事かしら。)
今更ながらその事に気付く。
そして気付いてまうと、ゲンナリとした表情が出てしまう。
淑女としてはしてはいけない表情だが、今は自室に一人。
誰にも咎められない。
(マクシミリアン皇太子殿下の顔も見たくありませんのに。)
殺されてはいるが、実はマグリットはマクシミリアンを殺したい程憎んでいる訳ではない。
ただただ嫌いで、顔さえも見たいないだけである。
まぁ、嫌いなのは初めに殺される前から。
だからこそ、お互いに婚約者として距離を詰めようとは思わなかた。
未来の国母となるべく王妃教育で皇宮に行く事は当然ある。
むしろ学園入学前まで毎日の様に通っていた場所だ。
にも関わらず、ビックリする程顔は合わせなかった。
確かに皇宮は広い。
それでも何年も何年も毎日通っているにも関わらず、全くと言って良いほどマグリットはマクシミリアンを見かけた事さえなかった。
恐らくマクシミリアンはマグリットを避けてるのだろうと、誰もが知っている。
それでも誰も何も言わない。
皇帝陛下がマグリットを未来の国母にと望んでいる事だけが絶対なのだから。
目にタオルを当ててベッドに寝転がっていると、コンコンとノックの音が聞こえる。
ツラツラと考え事をしてると時間はあっと言う間に過ぎてしまう。
「「おはようございます。お嬢様。」」
相変わらず一糸乱れぬ挨拶である。
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特に変わる事も無く、朝の用意を済ませ学園に着く。
しかし教室には向かわず、門の前で立ち止まってしまう。
今日から早速授業が始まるのだが、マグリットにはつまらない毎日の始まりである。
元々成績優秀だったマグリットは、牢屋に入れられてもやり直しの時もずっと勉強はしていたのだ。
学園での勉強はもう復習さえしなくても大丈夫なレベルにまでなってしまっている。
それでもフレデリックに協力する姿勢を見せた手前、速攻学園に行かないとは出来なかった。
(皇太子殿下の顔見たくないし、授業に出ないと言うのはアリかしら?)
庶民と同じ様に生活していた事もある為、時々貴族令嬢らしい言葉遣いではなくなってしまうのは仕方ないのかもしれない。
しかし公爵令嬢として学園に居るにも関わらず、授業に出ないのは如何なものかと悩む。
決して家族を嫌いな訳では無い為、公爵家に泥を塗る事は極力したくはない。
だからこそやり直しでは無断で家族にも知られない様に出て行っていた。まぁ全く公爵家に迷惑がかからない訳では無いだろうが。
いつ連絡してくるかわからない為、フレデリックに貰った念話ブレスレットは付けてきている。
無意識にブレスレットに触れる。
(あぁぁぁぁ。煩わしい。
今まで通り全てを捨ててどこかへ行きたいわ。)
ここが誰も居ない自室であれば恐らく頭を掻きむしっていたであろう雰囲気である。
それでも表面上は誰もが見惚れる完璧な令嬢として、立ち姿さえも綺麗で完璧である。
それでもずっと門の前に立っている為、チラチラと他からの目線が来る。
此処に居ても仕方ないと、取り敢えずは歩き出す。
流石に初日からサボるのは駄目だと、自分に言い聞かせながらマグリットは教室に向かう。