取り敢えずビックリします
「今日から魔法学を教える事になったフレデリック・テンペスト=スタッフォードだ。
これからよろしく頼む。」
教壇に立ち完璧皇子の顔で人好きのする満面の笑みで挨拶しているのは、昨日マグリットに会いに来て夜遅くまで会話していたフレデリック殿下である。
そのイケメンな顔で教室内の女子達は貴族でありながらも、キャーキャー言っている。
それもその筈。
フレデリック殿下は王位継承権は第ニ位とは言え、皇族である。
その上マクシミリアンとは違い、人格者というのも周知の事実。
ただフレデリックは必要以上に社交界には出ないので、中々御令嬢達はお近付きになれなかったりするのだ。
この人は一体何をしているのかと、思わずマグリットは溜息を飲み込む。
「兄上!!
一体何をしているのですか!?」
(嫌だわ。
皇太子殿下と同じこと思うなんて、信じられない。)
マグリットとマクシミリアンが思う様に、確かに目の前の人物がこんな所にいるのは間違っているのだ。
むしろこんな事をしている程暇では無い筈だ。
マクシミリアンがまだ学生だからと甘やかされてるのか、能力が無いと思われているのかまでは興味がないからマグリットは知らないが、今現状マクシミリアンがしなければいけない皇太子殿下としての仕事は全てフレデリックがこなしている。
皇太子殿下の仕事だって学生と言えども両立するには大変であるにも関わらず、それを教師をしながらなど到底出来る物ではない。
どちらも片手間で出来るものでは無いのだ。
この学園は貴族が通うだけあって実はなかなかに厳しい。
それを教える教師も多忙になるのである。
「何って?
教師として魔法学を教えると言った筈だが?」
ニコニコと何を考えているかわからない笑顔を浮かべている。
「兄上には政務があるではありませんか!?」
目の前にある机をバンッと叩き立ち上がる。
(本当に馬鹿だな。
自分がしないといけないと知っている政務を俺に押し付けてる自覚はあるのに、自分でやろうとは思わないとは。)
ほとほとマクシミリアンに呆れ返るが、そこは皇族としても貴族としても呆れた表情は見せない。
「政務を怠るつもりはないよ。
まぁ、マクシミリアンが政務をしてくれても全然構わないけど?」
パチっと音が鳴りそうなウインクをマクシミリアンに向ける。
マクシミリアンに向けてはいるが、当然教室にいる生徒達全員が見れる訳で、フレデリックが挨拶した時以上にキャーキャーと御令嬢達が大騒ぎする。
「っっっっ!!??」
顔を赤くして怒った様な恥ずかしい様な複雑な表情で、マクシミリアンはフレデリックを睨み付ける。
(お前のやるべき政務をお前でやれば良いという嫌味に怒っているというよりかは・・・
女の子達にキャーキャーと人気そうなのが気に入らないって感じかしら。自分の不遜な態度が生徒達に人気無いってどうして気付かないの?
っていうか、そもそもフレデリック殿下の嫌味が通じてないわね。政務はフレデリック殿下がやれば良いと思ってるんでしょうか。)
マグリットはマクシミリアンをつまらなさそうに見る。
(本当矮小な男。)
思わず小さく鼻で笑ってしまう。
それにフレデリックだけが気付く。
『マクシミリアンにバレない様にバカにしろよ。』
いきなりフレデリックから念話が届き、思わずマグリットはフレデリックを見つめてしまう。
それに対して周りには気付かれない様に細やかな笑みを浮かべる。
マグリットはそれに気付くとフイっと顔を逸らす。
というか、バカにするのは止めはしない様だ。




