紳士なエル
「あっ、そう言えば、今朝はちょっとバタバタしてたから忘れてたね」
部屋着に着替えながら、鈴ちゃんが部屋に備え付けられていたテレビをつける。
鈴ちゃんは特に気にした様子もなく服を平気で脱ぐけど
流石にロリコンじゃないとはいえ、女の子の着替えを見るのはあまりよろしくない気がして
僕は慌てて後ろを向いた。
『でも今日はエルちゃんが居たから暇になることは無かったよー』
「それなら私もエル君を健君から引き取った甲斐があったかな」
会話のやり取り的に、恐らく普段はビーさんの為に外出中はテレビを付けてあげているのだろう。
なんか鈴ちゃんの言い方だとビーさんの暇潰し道具的な扱いで少し悲しい。
いや、冗談だってわかってるけどさ。
……あと、どうでもいいけど着替え終わったら声をかけて欲しい。
いつまで僕は後ろ向いてなきゃいけないんだ。
「ーー車道で乗用車とトラックが衝突し、乗用車に乗っていた一家が死亡、警察は過失致死運転の容疑でトラックドライバーのーー」
テレビから聞こえてくるのはよくあるニュースの話題。
何処其処の何々さん一家が亡くなりました。
なんて前世では対岸の火事のように聞き流していたけれど……
もしかしたら僕も死んだときはニュースになったりしてたのかな。
作業員がプレス機に巻き込まれ死亡、とか。
なんかそう考えると恥ずかしい。ニュースにならなくても少なからず
そう言う作業現場での事故って同業の人達には回るし……。
考えると本当に間抜けすぎる死に方だな、僕。
「エル君、どうしたの? 後ろなんか向いて。テレビ嫌いだった?」
見当違いも良いところの勘違いをしたオオカミ娘さんから声をかけられて、思考はそこで一時停止。
『オオカミ娘ちゃん可愛いし、下着姿見たらエルちゃん鼻血出しちゃうからー』
ビーさんはビーさんで鈴ちゃんの言葉に悪戯っぽく返している。
可愛らしい女の子って所は否定しないけど、別に鼻血出さないから。
ただの気遣いですから。
「私に言わせたらこんな姿、おぞましいだけなんだけれど、元人間の男の人から見たらそんな綺麗な容姿してるのかな? 大丈夫だよ、もう着替え終わったから」
鈴ちゃんは軽い冗談っぽい口調でそんな言葉を放った。
冗談っぽく言ってはいるものの、それはきっと彼女の本心なのかも知れない。
とりあえず一安心して振り替えると、部屋着に着替えた鈴ちゃんの姿があった。
表情は変わらず、僕達に微笑みを浮かべている。
『またそんなこと言ってー。自分の姿がおぞましいなんて言ったら全国の女性から怒られるよー』
これもビーさんと鈴ちゃんの間では慣れたやり取りなのだろうか。
ビーさんもやれやれと言った感じで鈴ちゃんに返している。
おぞましい。か……
『鈴ちゃんは自分の姿、嫌いなの?』
少し躊躇って、その言葉を口にした。
正直昨日みたいな対応を取られてしまったら流石の僕も落ち込む。
でも、このままじゃいけないって誓ったばかりだ。
少しでも距離を縮めて、少しでもヒントを得なければ。
サブタイトルは毎回その場で考えているので深い意味はありませぬ。




