オオカミ娘の災難
「ただいま。大人しくしてた?エル君、ビーちゃん」
決意を固めてから数時間、どう切り出すべきか色々と悩んでいる間に、鈴ちゃんが帰ってきた。
時刻は午後の四時を回ったところ。
ふぅ、とため息をついて、ランドセルを置き、鈴ちゃんは僕達の水槽へと顔を近づける。
『うん。特に何事も無かったよ』
お母様に鈴ちゃんの話聞いちゃったけど。
流石にそこまでは言わずに、鈴ちゃんに返す。
まぁ、ビーさんが僕の水槽を荒らしたりしたけれど、そこまで大騒ぎするような事でもない。
『オオカミ娘ちゃんこそ、ちゃんと仲良くしてきたのー?』
ビーさんが悪戯な笑みを浮かべて、鈴ちゃんに問いかけると
鈴ちゃんはわかってるくせにとぼやいて、また深く溜め息をついた。
「今度は教科書隠されて勉強にならなかったよ。どうして人間って同族同士で争いたがるんだろうね、私には理解できないよ」
呆れたように鈴ちゃんが呟く。
それは、つまり彼女は学校ではいじめられていると言う事。
先程のお母さんの言葉で、もしかしたらとは思っていたが……
友達らしい友達がいない上に、小学生とは思えない言動。
更に言えばこの見た目。同級生の男子達には結構モテると想像できる。
いじめられる要素、なんて言い方はしたくないけど
いじめの的として狙いやすいのは確かかも知れない。
男の子はほら……好きな子にはちょっかい出したくなるし。
『まーたいじめかー。やり返せばいいのにー。オオカミ娘ちゃん、本気出したら結構強いんじゃないのー?』
ビーさんは少し不機嫌そうだ。
一人ぼっちと言うワードからして、ビーさんも前世であまり人間関係が上手く行かなかったタイプなのだろう。
いじめ。とまでは行かなかったが、僕自身も前世では人間関係は得意では無かったタイプだ。
ビーさんみたいに感情を表に出して鈴ちゃんには言わないが
正直、少しだけ鈴ちゃんがいじめられていると言う事実には僕もカチンと来てしまう。
鈴ちゃんの前世や現世の事を考えていたから、余計そう感じるのかも知れないけれど。
「ムリムリ。やり返したら今度は陰湿なやり方に変えてくるから。
ホント、人間ってビーちゃんじゃないけど面倒だよ」
やり返した事あるんだ……。
見た目が可愛らしい少女なだけにあまり想像がつかないけれど、流石は元オオカミさんと言った所だろう。
プライドの高さや気の強さは現世にも引き継がれているらしい。
いや、オオカミ全般がそうとは限らないけれど、
少なくとも僕の想像するオオカミ像と鈴ちゃんの言動は当てはまっている。
ーーやはり、前世の性格は引き継がれていると見て良さそうだ。




