無限メモリー
玲夢が目を覚ますと、
倫は眠っていた。
玲夢は、倫の頬に掌で触れた。
倫はゆっくり目を開く。
「おはよ、玲夢。」
「おはよう。ちゃんと目覚めたな。」
「心配してたのか?」
「ああ。分析では、お前は目覚めると分かっていたが、心が言う事を聞かないようだ。」
「玲夢、俺の事好きか?」
「好きだ。お前が心臓を貫かれた時、
お前の事が好きだと分かった。」
「そうか、そうか。」
倫は嬉しそうだ。
「次は何をするのだ?」
「次?」
「お前はまた私を助けた。
私を助けたご褒美だ。」
玲夢は、少し恥ずかしそうに言う。
「ご褒美か。玲夢の体にさわる・・・とか?」
「・・・ヘタレ・・・だな。」
玲夢は覚悟していた内容との違いに、
倫はヘタレだと解釈した。
「うるさいよ。
じゃあ、お前を抱く。
・・・でも、全部終わって、
俺達の家に帰ってからだ。」
「分かった。」
玲夢は、倫にキスをした。
「ご褒美だ。」
「玲夢へのご褒美か?」
「違うぞ。」
「はいはい。
感情が蘇ると、正直さは無くなるんだな。」
「恥ずかしいのだ。」
玲夢は、倫に背中を向けた。
倫は、後ろから玲夢を抱きしめた。
「玲夢。好きになってくれてありがとう。」
「私も、倫が好きになってくれて嬉しいぞ。」
「うん。
玲夢、そろそろ行こうか。
白夜達が待ってるかもしれない。」
「そうだな。
倫、約束しろ。絶対に死ぬな。」
「当たり前だろ。俺はお前と幸せになるんだ。」
二人が広間に出ると、白夜と兵士達が待ち構えていた。
「お疲れ様。
良くやってくれた。
何人か倫の蘇生が間に合わなかったが、
我らの大勝利だ!!」
「おー!」
兵士達は、倫を讃えた。
倫は兵士達の前に出た。
「俺一人では、この勝利は無かったと思う。この先、戦いはもっと過酷になるかもしれない。みんなで力を合わせ、
必ず勝利しよう!」
「おー!!!」
倫の呼びかけに、兵士達は応えた。
「では、倫、会議を始めよう。」
白夜は、奥の部屋へと歩き出す。
シャドー、グリーン、ミラーが後に続く。
雷の女は、立ったまま動かない。
倫は、声をかけた。
「おい、行かないのか?」
「私は、力を暴走させ、仲間に手をかけた。
お前が蘇生してくれなければ、仲間達はあのまま・・・。
しかも、私は、あっさりと負けた。
この先に進む資格はない。」
「それ、白夜がいったのか?」
「違う。だが、みながそう思っているだろう。」
「そう。白夜が言ったなら、一発ぶん殴ろうと思ったが、違うんだな。」
倫は、兵士達の方へ振り向いた。
「お前ら!聞こえてたか!?
こいつの事、そんな風におもってる奴はいるか!?」
兵士達に問いかける。
「思わない!」
「必死に戦った結果だ!」
「気にする必死はない!」
兵士達に雷の事を悪く言う奴はいなかった。
「そうだよなー!だから、
俺も仲間なねなりたいと思ったんだ!
こいつに会議に参加するべきだよなー?」
「おー!!!」
兵士達は、倫に応えた。
雷の瞳からは、涙が一粒流れおちる。
涙をぬぐい、叫んだ。
「みな、すまない!
私にもっと力があれば。
次の戦いこそ、みなの約に立てる様に努力する!」
「おー!!!」
兵士達の士気は上がっていく。
倫は、雷を見てニコッっとする。
「なっ。いくぞ。」
「あぁ。ありがとう。」
二人のやりとりを白夜は遠目に見て、
微笑んでいた。
みんなが団結する中、
一人、気に入らなさそうな者がいた。
「おい!倫。私以外に優しくするな。
雷がお前に惚れてしまうと困る。」
「ははっ。玲夢、お前ってめんどくさい奴だったんだな。」
「私はめんどくさいのか?
私の事・・・嫌いになったのか?」
「違うよ。俺はお前以外は好きにならない。心配するな。」
「約束だぞ。」
「あぁ。行くぞ。」
そして、会議が始まり、白夜が話始める。
「手短に、今後の事を一旦伝える。
この場所は、政府軍がいつ襲って来てもおかしくない。
兵士達はいつでも出発できる様にしてもらっている。
問題は、どこへ向かうか、だ。
それをこれから分析してもらう。」
倫は、分析と言うワードでピンときた。
「感情に目覚めた玲夢の出番って訳か。」
「そうだ。
玲夢には、薬の正体、出どころ、あわよくば薬の効力をこの世界から消し去る方法を分析して欲しい。」
倫は、少し心配そうに玲夢を見た。
「玲夢、できるか?」
「やってみよう。」
玲夢は、目を閉じる。
ブツブツといいながら、分析を始めた。
玲夢の意識の中・・・。
深い深い暗闇。
一点の光が現れる。
「無限メモリーを持つ者。
感情を取り戻したようだね。」
「お前は誰だ?」
「僕はアース。君たちの住む地球その物だよ。」
「地球?!お前は薬の正体を知っているのか?」
「知ってるよ。
僕が作ったから。」
「私達は薬を消滅させたい。」
「やってごらん。
富士山の近くまできたら、
またおいで。
薬を作っている場所を教えてあげる。
でも、全ては仕組まれているよ。
僕は、簡単に君たちを許さない。
お前達は、私に害を与える!
薬の消滅には犠牲をともなゔー!
ザァー!やっでみろぉー!」
アースは、玲夢に人類が争い、滅亡していくさまを見せる。
倫達は、長い沈黙の中、玲夢を見守っている。
玲夢が口を開いた。
「やめ・・・やめろ・・・やめろ!」
「・・・あー!!!」
玲夢は突然叫びだし、目を開けた。
「ハァハァハァハァ。」
倫は、玲夢の肩を抱き寄せる。
「大丈夫か?玲夢。
白夜、すまない。少し玲夢を休ませる。」
「あぁ。すまない。
だが、玲夢だけが頼りだ。
少し休んだら」
「大丈夫だ。全てではないが、
今できた分析を伝える。」
白夜を遮る様に、玲夢は話し始めた。
「まず、薬の正体。
それは・・・この地球が自ら作ったといっていた。」
「地球?そんな事あり得るのか?
と言うか、言っていた?分析ではなく、
誰かとはなしたのか?」
倫は不思議そうに玲夢に聞く。
「あぁ。間違いない。
地球が、自らを保つために、薬を作り出している。
地震とか豪雨とか、異常気象と同じ様な物だ。
恐らく、地球は、この薬で人類の大半を消し去りたいと考えているのだろう。
薬は、操られた人間により、
日本各地に運ばれる。
人々は、この薬を間違い無く使う。
地球はそう考えている。
無くす方法はある様だが、
それはもう少し分析が必要だ。
人類が続くも、滅亡するも、地球からすれば小さな事だが、滅亡するだろうと地球は思っている様だ。
現状分かった事は、
薬の出どころは、富士山の辺りだ。
私たちは、そこへ向う必要がある。
富士山へ付いたら、また会いに来いと言っていた。
申し訳ない、少し休まないと、地球、いや、奴はアースと名乗った。
アースに呑み込まれてしまいそうだ。」
「玲夢・・・大丈夫なのか?」
「大丈夫。今ので感覚を覚えた。
体力の回復は必要だか、次はもっと上手くできる。」
「そうか。・・・無理はするな。」
「分かっている。あくまで私は、お前といるために頑張っているのだ。
命を落とす訳がないだろ。」
「分かったよ。
じゃあ行き先は、富士山か。
わりと近いな。
で、白夜、どうする?」
倫は、白夜に問いかける。
「ありがとう玲夢。
引き続き、分析をお願いしたい。
つらいと思うが頑張っておくれ。
倫、富士山へ向かおう。」
「分かった。
よし、みんな出発しよう!」
倫は、玲夢を支えながら立ち上がった。
倫達は、大人数のため、洞窟を出て徒歩で富士山へ向かった。
一般人を巻き込む可能性があったため、悪路ではあったが、山を二つ程越えるルートで富士山へ向う。
富士山へは、2日程で到着予定する予定だった。
1日目はテントで野営となった。
倫と玲夢は同じテントで横になっていた。
「なんだかあの狭いテントで二人で寝たのがものすごく前の様に感じる。」
「そうだな。
感情を持って、あの日に戻りたい。」
玲夢は、少し寂しそうにする。
倫は玲夢を抱き寄せ、頭を撫でた。
「これから思い出がいっぱい増える。
早く終わらせて、帰ろ。」
「そうだな。」
玲夢は、倫に擦り寄り目を閉じ、すぐに眠った。
「アースとの対話は相当疲れるんだな。
今日は、ほとんど眠ってる。
無理するなよ。」
倫は、玲夢の頭をもう一度なで、
目を閉じた。