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18話 決着


これにて決着

 


 アフィーリア、アシェリー、ソラ、セリカの全魔力を注いだ最高の硬度を誇る結界と熾天使(セラフィム)の強大な聖なる光が激突した。天界最高位に君臨する天使の力は絶大でセリカを主にした結界が押されている。足に重力を纏って意地でも吹き飛ばされないと踏ん張り、後方で魔力補填を行う子供達もセリカに倣って重力で足元を固定。


 乙女ゲームの世界だよ!?こんなバトル漫画みたいな展開知らないけど!!?ー絶賛心の中で絶叫しているアフィーリアの声など届くわけもなく、人の心を読むアシェリーにそんな余裕もなく。


 相手はたった一人だというのに、押されているのはアフィーリア達。四人の全魔力を注いだ結界にぱきっと罅が入った。



「ヤバイ!!このままじゃ……!!」

「頑張って!もう少し、もう少しだよ!!」

「何がもう少しなんだよ!!あれか!?俺達が吹っ飛ばされるまでもう少しなのか!?」

「ちがーう!!もう!!!普段はいらない時にいて、いざ必要な時何で来ないの!!――父さんのアホおー!!!」



 ぱき


 ぱき


 ぱき


 結界に入る罅が増えていき。


 遂に――結界が破られた。


 光に飲み込まれるアフィーリア達。「アフィーリア!!」母の叫び声を聞いたのがアフィーリアが覚えてる最後の声。



「誰がアホだって?」

 ……にはならず。


 視界を光で埋め尽くされる寸前、絶望的状況を打破してくれる絶対的強者の声が。


 はっと、アフィーリアは目を見開いた。


 世界を飲み干す勢いの光が徐々に消えていくではないか。前方を確認すれば、四人がかりで必死の思いで食い止めていた光をレオンハルトがたった一人、しかも、片手で制していた。


 呆然とレオンハルトに目を奪われていると光は消えた。熾天使も聖なる光を防がれたことに呆然としていた。



「え……?れ……レオンハルト……団長……?」

「うむ。そうだよおアフィーリア嬢。今回はよくやった。……って我輩は褒めてもいいんだけど、過保護な魔王陛下は何と言うか」

「へ……?ま、まさか……」



 レオンハルトがいる時点でまさかなのだが、一婁の望みを抱いてレオンハルトと同じ方を向いたら。



「ロゼ!!」

「ああっ、無事で良かったシェリー……!遅くなってすまない」

「わたしはっ、私は大丈夫よっ、アフィーリア達が助けてくれたから。だからお願い!」

「分かってる。アフィ」



魔界で誰よりも強くてアフィーリアの大好きな――偉大で、但し超多忙なのに愛娘達と遊ぶ時間を必ず作ってくれる、でも娘を溺愛する余り危ない方へ突っ走る傾向がある――父ロゼが来てくれた。絶望が希望に大きく変わった瞬間だった。魔力が空っぽで倒れたアフィーリアを慌てて抱き留めたロゼは、同じく魔力切れに倒れたアシェリーとソラも抱き上げるとシェリーの側に置いた。



「子供達を見ててくれ」

「ええっ!……ありがとう、三人とも。小さな体を張って私を守ってくれて……」



 守られているだけの存在――。


 昔、コーデリアに吐き捨てられた言葉がシェリーの胸の奥をずっと燻っていた。天界でも魔界でも、守られているだけ。俯いて唇を強く噛み締めた。情けなくて、不甲斐なくて。小さく体を震わせるシェリーの手にぼろぼろの手が触れた。


 アフィーリアの手だった。


 涙を浮かべるシェリーにふにゃりと笑んで見せたアフィーリア。



「母様。城に戻ったら、母様の作る美味しいデザートをお腹一杯に食べたいです」

「リクエストが通るなら、ぼくザッハトルテがいい」

「俺も便乗してフォンダンショコラがいい」


「……ええ!勿論、お腹一杯に作るわ……!今までで一番美味しいのを」



 魔力切れで倒れても意識はしっかりと保っているみたいで好きなデザートを次々リクエストしていく子供達にシェリーの気持ちも穏やかなものへ代わり、笑顔が戻っていた。


 力が弱く、守られてるだけでもいい。その笑顔が見られるだけで幸せなのだ。娘も夫も。


 それだけで十分なのだ。



「陛下っ、レオンハルト様っ、申し訳ありません」



 レオンハルトからローブを羽織られたセリカが跪いた。娘を部屋から出すなという魔王の命令を無視した挙げ句、重鎮の子息二人と魔王の娘を危険極まりない場所まで連れて来てしまった事への罪悪感。如何なる処罰をも受ける所存だと頭を下げたセリカにロゼは顔を上げさせた。



「話は全てユーリとネフィから聞いた」



 あの場にネフィはいなかった。首を傾げたセリカにレオンハルトが、事の経緯を説明した。『月の間』へ泣いて乱入したアイリーンを捕獲しにユーリとネフィも乱入し、様子の可笑しい三人の心の中を読み取ったレオンハルトが白状させたのだ。場の記憶をネフィから受け取った後の行動は早かった。


 使い魔を飛ばしてアリスを『月の間』へ来させると緊急事態だと訳を説明。後20時間かかったであろう結界の展開をたったの一時間で済ませると細かい部分はリエルとアリス、『魔術師団』の団員に押し付けてロゼとレオンハルトだけ現場に急行した。


 どんな時でも貧乏くじを引かされる父リエルに同情しつつ、同じく貧乏くじを引かされたアリスにも同じ感情を抱いた。魔力が切れて鉛のように重くなった体を頑張って起こしたソラに手を伸ばしたアフィーリアとアシェリー。起こして、とお願いする二人を叩きたくなる衝動に駆られるも気力も残ってない。残った力で二人を起こすと疲れがぐんっと押し寄せた。



「しんど……」

「同感だよお……あれ、熾天使がいないよ」



 さっきまで、聖なる光を防がれた事に呆然と立ち尽くしていたのに。「簡単だ」とロゼ。


 お前達が知らん間に捕らえた。無論、アルバーズィオも。と告げると思いきりアルバーズィオを忘れていたのをアフィーリア達は思い出した。



「生きてたんだ」

「全身黒焦げだったが息はあった。治癒魔術をかけさせ捕縛した。今頃、城の磔部屋に送られている頃だろう」



 あの魔術を諸に食らって生きていたとは、余程悪運の強い男だなと感心してしまう。所で、とロゼが話を話題を変えた。



「あの炎の魔術はセリカか?」

「ホワイト伯爵家至上最強と名高い『破壊魔神』の魔術を久々に見れて感激したよ。今はてんで見てないからねえ」

「……いえ。雷の魔術は私ですが、あの炎の魔術はアフィーリアお嬢様の使用した魔術です」

「……知ってるよ。態と聞いたんだ」



 魔力の質を探れば誰の魔術か知れるのは容易なことだ。問題は、何時あんな炎の魔術を覚えたか、だ。家庭教師をつけても真面目に勉強しないアフィーリアに最近家庭教師はおらず、独学で習得したとも考え辛い上に一歩間違えれば大惨事を招く威力を持つ魔術をセリカが伝授する訳もなく。怪訝な視線を浴びて魔力切れでリアクションも取るのが億劫なアフィーリアは正直に答えた。



「頭に浮かんだのをやってみただけ」

「またそれかよ」

「本当だもん」

「やれやれ。末恐ろしいお嬢様……いや、お姫様だ。ロゼ、あの熾天使はどうする?流石の天界側も熾天使を捕らえられたとなると黙っていないぞ」

「構わん。来るなら来たらいい。いい運動になる。軍を率いたとしても既に結界は完成した。……皆殺しにされるのは奴等だ」

「了解した」



 仰々しく礼を取ったレオンハルトは「城に戻るよお」といつもの間延びした声で瞬間移動(テレポート)を使用。


 一瞬で城に戻った面々が着いたのは、薔薇が咲き誇る庭園。高貴で芳醇な香りを放つ薔薇の香りが無事に戻ったという実感を強くした。



「母様」



 ロゼに抱かれるシェリーの元へハイハイして行ったアフィーリアは疲れ知らず……でもないが、飛び切りの笑顔を咲かせた。



「お腹減りました!」



 城に戻っての第一声がそれかよ、と誰かの呆れる声。


「ああー!!!ユーリ!!アフィーリア達が戻ってるよ!!!」ハイネのけたたましい叫び声をBGMに、芝生の上にごろんと寝転んだアフィーリアは空を仰ぎ見た。



 青い空は黄昏に染まっていた。


 あの炎に染められたかのように、赤い。


 ――子供の頃にこんな大事件があったなんてイベントなかったけど、皆無事に戻って来れたから万々歳でいいよねえ


 大きく酸素を吸い込むと薔薇の香りも一緒にアフィーリアの体内に入り、二酸化炭素と共に放出されたのだった。





読んでいただきありがとうございました!

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