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17話 悪魔と天使の衝突


ちょびっと、ちょびっとだけタイトル回収ができた…筈。

 


 力一杯蹴飛ばした扉は部屋を突き抜け、壁を破壊し、外へ飛んで行った。


 室内にいた奴等全員の視線が出入り口に集中する。



「誰だ!!」



 隅にいた誘拐犯ーアルバーズィオが叫んだ。出入り口に舞う砂塵が鬱陶しく、手で振り払った。


 露になった姿を見てアルバーズィオや天使達が瞠目した。無論、押さえ付けられ悲鳴を上げていた母様も。



「あ……ふぃ……りあ……?」

「はい。助けに来ました母様」



 呆然と私の名前を紡いだ母様が安心するように精一杯の笑みを浮かべる。


 で、視線をギロリとアルバーズィオへ向けた。



「よくも母様をこんな目に!悪魔が天使と手を組むって言語道断よ!!」

「悪魔と手を組む天使もだけどねえ。ねえ、アルバーズィオ。答えてよ。天使と手を組んで奥方を売った理由をさ」



 固まっていたアルバーズィオは本家当主の息子の姿に漸く現実を理解したらしく、薄汚い笑みを浮かべた。



「簡単な取引ですよ坊っちゃん。元々、この女は天界の姫君。魔王の妻として、そもそも相応しくない」

「相応しかろうが相応しくなかろうが父様が母様を選んだ!母様が好きだから選んだのにあんたにそんなこと言われる筋合いはない!!」

「いいえ、アフィーリアお嬢様。魔王の妻として相応しいのはコーデリアだった!なのに、魔王はあっさりとコーデリアを切り捨てた。ずっと、魔王に相応しい妻になるべく王妃教育を受け、公爵令嬢と未来の王妃としての重荷に耐え、一途に自分を愛したコーデリアを――あの男は簡単に捨てた!!それ所か、あの悪趣味極まりないレオンハルトの玩具にした!!」

「はっは~見えた。お前、あの鬼ババに惚れてたんだな。だから、鬼ババが消えた原因である奥方を拐って天使に売ったのか」



 道理でコーデリア様を必死に弁護する筈だわ。図星だったのか、アルバーズィオは大事な人を鬼ババ呼ばわりされて顔を沸騰させ形相が鬼の面を被ったかのように変わった。



「彼女を侮辱するなあ!!コーデリアがどれだけの重圧に耐えていたか、子供のお前達に何が!!」

「関係ないです」



 激情のまま喚くアルバーズィオの台詞を遮る。



「あんたがコーデリア様をどう想おうが知ったこっちゃないです。その怒りを父様に向けるのなら未だしも、母様に向けるなど論外!大体、こんな事をしでかす程コーデリア様が好きだったのなら、あんたがコーデリア様を口説き落としたら良かったのよ!たった一人の女落とせないあんたが偉そうな「はいそこでまでです」むぐう!?」



 まだまだ言いたい言葉は山程あったのに、下で派手に暴れていたセリカがいつの間にかいて私の口を塞いだ。まだ言い足りないと抵抗してもセリカの手は緩まない。傷一つない様子に安堵したのは内緒。


 セリカの黒瞳がアルバーズィオを、母様や母様を押さえ付ける天使達を、無駄に羽の多い天使を順に見回し、軈てやれやれと溜め息をついた。



「見覚えのある天使だと思えば、百年前陛下に部下を皆殺しにされた挙げ句半殺しにされたストーカーではありませんか」

「え?あの天使知ってるの?」

「はい。元々、奥方……シェリー様は天界の姫君。暇潰しで天界を襲撃した陛下が見初められ、魔界に連れて来られたのです」

「へえ~奥方は天使なんだ」

「むぐぐ、むぐぐぐぐ」

「何です?そんな機密話して良いの?ええ。問題ありません。シェリー様が天界の姫君だと知らないのは、お嬢様や坊っちゃん達位です。魔界の住民の殆どは知っています」



 口を塞がれたままなんで伝わらないかなと思ったけど案外伝わるもんなんだね。秘密にする程でもないとセリカはあっけらかんと告げる。ストーカー呼ばわりされた羽の多い天使が母様から離れ、ベビーブルーの瞳を鋭くさせ殺意を込めてセリカを睨み付けた。


 母様と同じ金髪に長い睫毛に縁取られたベビーブルーの瞳。陶器のように白い肌。女性寄りの美人顔が汚物でも見る目でセリカを凝視する。



「貴様……熾天使(セラフィム)の私を侮辱するかっ」


「なんじゃいそれ」とソラ。セリカの手を口から離し顔を見上げて説明の催促をしたら、あの無駄に羽根の多い天使は、何と天界で一番階級が高い最高位の天使なのだとか。


「へえ。羽が多いから?」

「羽の多さで階級が決まるのか天界は」

「変な制度」

「ですね」


「き、貴様等……!」



 見る見る内に怒りで顔を赤くする天使の魔力が上がるのが感じられた。後ろに下がらされた私達を守るようにセリカが前に出た。



「一介の侍女如きが熾天使の相手をするだと?自惚れるのも大概にしろ!」

「お黙りなさいアルバーズィオ。貴方がコーデリア様をお慕いしているとは昔から気付いてはいましたが……この様な愚行に走る程とは」

「たかが伯爵家の、それも三女風情が誰に口を利いている!!?」

「貴方こそ、誰を拐い、誰を敵に回したか理解しておられないので?」

「でかい口を叩けるのも今の内だ。魔王やレオンハルトといった国の重要人物は今天使の襲撃に備え魔界全土を覆う結界の展開に掛かりきり。『騎士団』団長のお前の父親も平民街や貴族街の警護、更には各地方の指揮を執っている」

「お前達を助ける者は誰もいない?そう仰りたいのですね?はあ……私がアフィーリアお嬢様の専属侍女を一人で任せられている本当の理由をお見せしましょう」



 そう言って、スカートのポケットから白い手袋を取り出し、両手に嵌めると力強く拳を握った。徐々に拳に集まり、凝縮されていく魔力の濃度に寒気を感じたのも束の間。

「簡単に攻撃させると思うか?」熾天使が右腕を払った。ぎんっと音が鳴った。セリカの前には見えない壁が貼られていたのか、放たれた光の矢が空中を刺していた。結界を貼る仕草は一つもないのに何時貼ったのか。アシェリー?と心の中で問うても彼も目の前で起こる事態に目が釘付けで聞いてない。


 然して驚かない熾天使のベビーブルーの瞳は鋭さを保ったまま、セリカだけを視界に映している。ふと、母様の方へ私の視線が映った。母様を押さえ付けている天使の羽は一枚。で、彼等の意識も母様の意識もセリカと熾天使に注がれている。



「《吹き飛べ》!!」

「《灰になれ》!!」



 凝縮した魔力を雷に変え、凄まじい威力の魔術を近距離から熾天使に放ったセリカと同時に頭の中に浮かんだ言葉をそのまま放った私に応えるように灼熱の炎が母様を押さえ付けていた天使達に襲い掛かった。






 ○●○●○●



 一言で現すと阿鼻叫喚。


 本来、遠距離から城壁や軍を攻撃する魔術を近距離から放たれた稲妻砲と周囲を地獄の業火へと変える灼熱の魔術が同時に放たれた。これにより、広いと言えど所詮一室。二つの超威力を誇る魔法によって、室内は愚か元公爵の屋敷は跡形もなく吹き飛んだ。


 雷と炎の柱が天高く走る。雲をも焦がし、周囲の森林を全て焼き尽くす勢いで燃え広がる。燃える炎の中、咄嗟に結界を展開したアシェリーとソラは地面に叩き付けられた際に体を痛めてしまうが痛みを気にする事もなく、炎だけが存在する周囲を見渡した。「あっ!」声を上げるなり、駆け出したアシェリーの後を追うソラの目には、セリカに守られる様にして地面に座り込むシェリーとシェリーの体にセリカから借りた上着を着せるアフィーリアがいた。



「アフィーリア!!」

「あ、アシェリー!ソラ!」

「あ、じゃねえよ!お前あんな魔術反則だろ!いつ覚えたんだよ!」

「知らないよ!使える気がしたから使っただけ!」



 嘘をつくなとソラに詰め寄られるも本当なのだ。急に頭に浮かんで勢いのまま魔術を行使した。お陰で、セリカの魔術と良い感じに融合してしまい、周囲一帯を吹き飛ばす程の威力になってしまったのだ。上着をシェリーに貸したセリカの上半身はキャミソール一枚。炎が渦巻くこの状況では火傷を負ってしまうと返そうとしたシェリーだが、衣服を破られ上半身ほぼ裸なシェリーの方が問題だと拒否。更に、訓練を受けているからこの程度の熱は平気だと告げた。



「母様ご無事で良かった……!」

「アフィーリア……っ、心配をかけてごめんね。こんな危ない所に来るなんて、本当は叱らなきゃいけないのに……っ……アシェリーもソラもありがとう。セリカ、セリカにも迷惑をかけたわね」



 やっと母に触れられる。堪えていた恐怖と安堵から涙を流すアフィーリアがシェリーに抱き付いた。勢いよく抱き付いた娘をしっかりと抱き締めるシェリーも、二度と愛娘とこうして抱き合う事はないと思っていたから涙が溢れて止まらない。母と娘の再会を見守りつつ、周囲に気を配るセリカの眉がピクリと動いた。



「皆様、気を引き締めてください」



 緊迫としたセリカの忠告に全員の緊張が高まった。屋敷があった筈の場所で燃え上がる炎から人影が。翼を生やした姿にアフィーリア達がそれが誰か分かってしまった。炎から現れた熾天使。衣服は焦げ、美しい翼は微かに燃えており、光輝く金髪も所々黒く焦げていた。汚れの付着した鬼の形相がアフィーリア達に向けられた。



「さすがあの魔王の娘。侍女の魔術もあるが、これ程の威力の炎の魔術を使えるとは……。子供だからと見くびった結果がこれか。――だが!!」



 熾天使の足元に展開された見たことのない文字が刻まれた魔法陣。顔を強張らせたセリカが魔界で最も強度が強い結界を二重に展開した。格段に膨れ上がる魔力に比例して、熾天使から発せられる光が強くなる。天使の聖なる光は悪魔の最大の弱点。そして、同族には聖なる光は通用しない。シェリーだけが攻撃を受けず生き残れる。邪魔なアフィーリア達だけを消し去り天界へと連れ帰る心算の熾天使の狙いに気付くも光は目前に迫っていた。



「ふ、防げるのこれ!?」

「っお嬢様!アシェリー様!ソラ様!皆様の魔力を全てお貸しください!」

「うん!お願いねセリカ!!」

「頼むぞセリカぁ!!」

「うん!あとちょっとの辛抱(・・・・・・・)だしねえ!!」



 一人意味深な台詞を紡いだとは誰も気付かず。生まれながらに膨大な魔力を所持するアフィーリア、アフィーリアより幾らか劣ると言えど強大な魔力を有するアシェリーとソラ。


 三人の全魔力がセリカに注がれ、最高の防御力を誇る結界が更に上をいき強くなっていく。未来の魔王に相応しい三人の魔力と『破壊魔神』と嘗て恐れられたホワイト伯爵家最強の魔導士の魔力が造り上げた最高の結界と――



「消えろ……消えろ……消え失せろおおおおおおおおぉ!!!」



天界最高位の熾天使の聖なる光が衝突した。






読んでいただきありがとうございました!

次回で決着です。

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