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16話 二つの予想外


やっぱりタイトル回収ならず。

 


 ヴレーミヤの森の奥地で発見した屋敷の全貌に息を飲む。広大な森の中に建てられた屋敷は、五ヶ月前まで五大公爵家に名を連ねていた元ドラメール公爵家の屋敷だった。


 全体に特殊な黒木材を使用した姿から発せられる空気は異様。装飾品は公爵の名に恥じぬ最高級の鉱石が用いられ、けれど決して下品な程権力を振りかざしている訳でもなく。上品で大昔から魔王を支える公爵家の威厳を醸し出していた。


 そして、この屋敷が元ドラメール公爵家の持ち物と判明したのは、大きな扉に刻まれている銀色の家紋。



「……可笑しい」



 私は大きな違和感を覚えた。


 私の呟きにソラも頷いた。



「ああ。ドラメール公爵家は、一族全員が処刑された。勿論お家取り潰しに領地も返還され、ドラメール公爵家があったという事実は全て抹消された。それが何でこの屋敷だけ残ってるんだ」

「魔王城からも遠いし、森のかなり奥だから忘れられてたとか?」

「っんな訳あるか。……けど、実際そうなのか?」



 否定しておきながらソラも悩まないでよ。



「それよりも、どうやって屋敷に乗り込む?悩んでてもしょうがないよお」

「だねえ。セリカ、母様はどこの部屋にいるか視える?」

「いえ。どうも、屋敷全体に透視を阻害する結界が貼られているようでして。ただ、侵入者を拒む結界は貼られてません」

「ってことは、強硬突入だ」



 後悔するといいわ。侵入者避けの結界を貼らなかったことに。大方、こんな所に足を運ぶ物好きがいないと高を括ったのかもしれないけど『魔界』で一番手を出しちゃいけない人に手を出したのだから、相応の報いは受けてもらう。



「正面からは私が行きます。お嬢様達は、敵が私に集中している間に屋敷の中へ侵入し、奥方を探して下さい。隠密の魔術は使えますね?」

「ばっちり」

「もちろんだよお」

「おう」



 真面目に家庭教師の勉強を受けているアイリーンと違い、殆ど外で遊び回る私がちゃんと魔術を扱えるか不安に思われるだろうが心配無用。悪役アフィーリアは最後、残酷な死亡エンドを迎えるがその過程では生まれ持っての能力で攻略対象キャラをルートによって返り討ちにしている。要はバッドエンドだ。魔王の娘ってだけで途轍もない能力を持ってるって狡い。


 私が扉を破壊したら、三人は隠密の魔術で屋敷内へ――。


 セリカの言葉に大きく頷いた。





 ○●○●○●



 屋敷全体が大きく揺れたと同時に轟く轟音。屋敷内にいた者が次々に轟音の発生源である正面玄関へ集まる。砂塵が舞う中、人の影が映った。時間と共に薄れるのが煩わしく、強引に砂塵を振り払った無礼な客人に皆の警戒度が増した。現れたのは、メイド服を着こなす白人の美女。突き出した左の拳を下ろすと白と対を成す黒瞳に鋭さが増した。



「驚きましたね。ノワール家とあろう者が王に謀反を働くとは」



 屋敷内にいるのは全員ノワール家。ノワール家の家紋アンモビウムが施された外套を着ているのが自分はノワール家だと証明している。


 セリカの言い放った言葉の裏には「今から全員殺す覚悟しろ」と含まれている。と、読み取れた相手は何人いるか。否、いる。


 人数は。



「殺せ!!身の程知らずのホワイト家の娘を始末しろ!!!」



 この場にいるノワール家でも位が高いのか、中年の男が命令を飛ばした。男の掛け声と共に軽く数えただけで20はいる人数が一斉にセリカに襲い掛かった。大人数を相手に怯む様子もなく、黒瞳は敵を捉え、左の掌を突き出した。



「《失せなさい》」



 一言。


 たった一言、セリカが言葉を発しただけで掌から出現した魔法陣から、巨大で極太の稲妻砲が生身の相手を直撃した。さっきの轟音と比べ物にならない衝撃が屋敷全体を揺るがした。セリカに襲い掛かった20人はいたであろうノワール家の者の存在がない。


 消滅した。


 超威力を誇る雷の魔術によって。


 指示を飛ばした男も屋敷と一緒に吹き飛ばされており、遥か後方にまで飛んでいた。たった一撃で屋敷の約半分を消し飛ばされた。


 ――隠密の魔術で姿気配を消している私もソラもアシェリーも唖然としていた。



「……え?な、なにあれ。ありなの?」

「……アフィーリアの専属を一人で任せられた理由が何となく分かった気がする」

「……ぼくも」



 私も。


 セリカ一人いれば十分だ。スカート捲ってよく生きてるね私。魔王の娘じゃなかったら絶対同じ目に遭ってた。遠い目をしているとソラとアシェリーにぺちっと頬を叩かれた。「現実逃避するな」と。


 この場に、ううんそれ以前に、セリカに敵う相手はそうそう居ないと分かったので私達はさっさと母様探しを実行した。憶測だが母様は屋敷で一番偉い人がいる部屋にいる筈。なので、向かうは元ドラメール公爵の部屋。エントランスから廊下へ移動し、2階へ続く階段を目指す。


 背後から響く轟音に悲鳴。あのノワール家の人に同情する。圧倒的な実力差を前に手も足も出せず、繰り広げられる破壊と暴力に慈悲を願っても相手に聞き入れる義理はない。続々と援軍が現場へ直行するも聞こえてくるのはノワール家の人の悲鳴のみ。


 2階へ上がった所で一旦足を止めた。



「無駄にでかい屋敷だからね。元公爵の部屋を探すのも一苦労だよ。それらしいのを見つけては虱潰しに中を視るのも時間の無駄」

「アシェリー」

「任せてえ」



 瞳を閉じて意識を集中させるアシェリーから距離を取るとソラに小声で疑問に感じている事を話した。ソラも同じ疑問を抱いていたのか小さく頷いた。



「これだけ大きい騒ぎが起きてるのにアルバーズィオが姿を現さないのが引っ掛かる」

「母様が逃げ出さないように見張ってるとか」

「それだけなら、下っ端に押し付けて自分は侵入者の相手をしたらいい。出て来ないのは、離れられない事情があるからだ」

「事情……」



 どんな事情にせよ、一緒にいるなら母様を助け出すのと同時にアルバーズィオを倒す。……とか格好いいこと言いたいけど、分家と言えどノワール家当主。実力が未知数な相手を前に子供の私達が束になって勝機があるとも限らない。



「――見つけた!」

「「!」」



 アシェリーの声に即座に反応し近付いた。セリカから受け取ったアルバーズィオの魔力を辿っていたアシェリーが居場所を突き止めた。「行こう!」アシェリーを先頭に走り出した。


 もうすぐ、もうすぐだよ母様。絶対に助けるよ。アイリーンも待ってて。


 どんどん出てくる増援達の横を過ぎ去ってアシェリーを追い掛けるが何でかな、嫌な予感がしてならない。焦る気持ちを押さえ、やっと目的の公爵の部屋の前まで来た。不用心にも見張りはいない。荒い呼吸を整えつつ、室内を透視したアシェリーの表情が強張った。



「アシェリー?どうしたの?もしかして、外れ?」

「……いる。いるけど」



 中の様子を話してくれないアシェリーにさっきと同じ予感を抱いた。私とソラも恐る恐る透視の魔術で室内を視た。



「は……」

「……」



 言葉を失う私とソラ。アシェリーでさえ、そうなる筈よ。



『やめ、て、嫌っ、ロゼ、助けて……ロゼ……!』

『無駄だと何度言わせれば気が済むのですか。あの魔王に汚された貴女の価値は、天界の繁栄の為に我々に力を与えることしかない。可哀想に。魔王に堕ちなければ、いや、あの時(・・・)天界に戻っていれば、神の娘のままでいられたのに。あんな魔王に身体も心も奪われたせいで』

『嫌ああぁ!やだっ、やだあぁ……!!』



 泣き叫ぶ母様を数人がかりで無理矢理ベッドに押し付けている奴等、吐き気がする言葉を吐いて母様の衣服を破って、肌を触る奴の背中には白い翼が生えていた。


 天使の白い翼が。


 どうして天使がここに?


 部屋の隅には、誘拐犯が愉快で堪らないとばかりに笑みを貼り付けていた。



「何で天使がアルバーズィオと……悪魔といるっ、それに」

「無駄話してる暇はないねえ。このままじゃ、あの無駄に羽の多い天使に奥方がヤられちゃう。かと言って、セリカを呼びに行ってる時間も勿体ない」

「……当然よ」



 声が、握り締める拳が、全身が震える。


 恐怖からじゃない。


 度を超えた怒りを感じて。



「あの羽毟り取ってあいつら全員焼き肉のタレで美味しく食べてやる!!!」

「え~じゃあぼく塩胡椒」

「俺照り焼きソース」



 場違いな台詞だろと突っ込み役が不在の為、天使達を捕獲後必ず食すと固く誓った。


 隠密の魔術を解除し、怒りのまま、扉を蹴飛ばした。





読んでいただきありがとうございました!

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