とある夜のこと
「ねえウアリウス」
「うん?」
時刻は夜。今夜は夜更かしせず、早く寝る事にしたウアリウスの隣に寝転がり、ウトウトとしながらもウアリウスを呼んだら反応してくれた。
「天界って、実際のところどんな場所なの?」
「そうだねえ……君が女子高生をしていた世界では、どんな場所だと思われていた?」
「そりゃあ、天使や神様がいる世界で人間が死んだら行く場所って言われてる」
生前犯罪を犯した人は地獄行とも言われる。
「はは、地獄か。地獄と呼ぶ場所は、この世界で言うと案外魔界を指していたりしてね」
なら、怖い閻魔大王は魔王である父様になるのかな?……うん、怒ったらとっても怖いから間違いではない。
「僕から聞いていい?アフィーリア」
「なに」
「君は誰が魔王になれば良いと思う?」
「ユーリじゃないの?小さい頃から、次の魔王はユーリだって思ってた」
魔界の王子や姫の遊び相手として一緒にいた三人もきっと同じ気持ちだ。
「そうだろうね。なら、魔力量を無視したら?」
そう言われると……誰になるんだろう。ネフィやアシェリーは次期公爵だから多分無理。ソラは吸血鬼一族の力の増大を快く思わない人が多数と母ティファリナ様がソラよりも強いユーリがいるのだからと反対。となるとベルベット?
一か所に長く留まるのを苦手とするシルヴァ家の血だと魔王という、常に魔界に留まらないとならない立場は苦痛になる。
ベルベットも除外。
となると——
「うーん……ユーリ以外思い付かない。シルヴァ公爵が言ってた通り、ウアリウスがもう一度魔王になるのは?」
「ならないってば。折角、気ままな隠居生活を堪能しているのに」
始祖の魔王が魔界を統治していたのは随分前の話。今の肉体で三千年なら、始祖の魔王として君臨していたのは一体どれくらい前だと言うのか。
「隠居生活って……長すぎない?」
「はは。……じゃあ、君が僕の妻になるなら考えてみようか?」
「へ?」
眠気は一気に吹き飛び、言われた言葉の意味を理解しようと頭をフル回転させている間にもウアリウスに覆い被された。え?え?
妻?
妻ってつまり伴侶って意味だよね?
「……え?父様やリエル叔父様の父親なんだよね?ウアリウスは」
「魔族は近親婚を好むんだ。強く、近い血筋同士で子を成すと強い魔力を持つ子が産まれやすいからね」
知ってはいた。現実に突き付けられると焦ってしまった。
「アフィーリアみたいに僕を退屈させない子が側にいるなら、もう一度魔王になってあげてもいい」
「……本気?」
「冗談になるか、本気になるかは君次第だ」
「んっ」
私次第って……。
顔を近付けられたかと思いきや首に口付けられ、擽ったいのと何とも言えない感覚に声が漏れた。
「嫌なら僕を殴って逃げなきゃ」
「出来る訳っ」
ウアリウスを殴るなんて発想思いつきもしなかった。この状況だってすぐに飽きると思ってしまっている自分に吃驚した。
「ないって?いけないな、それで」
首から離れ、私の顔の左右に肘を立ててウアリウスが見下ろしてくる。
「もしも相手がそうだな……君を嫌っているユーリやハイネだったりしよう。僕のように逃げない?」
「逃げる」
「でしょう?なら、今の内に行動出来るようにしないと」
「でも……ウアリウスは私が本気で嫌がったら無理矢理しないでしょう?」
「アフィーリアに信頼してもらえて嬉しいけれど、どうだろうね?僕がいつも優しいとは限らないかもしれない」
女子高生だった時もよく聞いた話だ。普段優しい人なのに、ニュースに映るような事件を起こして周囲が驚きを隠せないでいたのを何度も見た。
私の上にいるのがウアリウスじゃなく、私を嫌っているユーリやハイネだったら……碌な目に遭ってなさそう。
「覚えてる?君が繰り返してきた死の内、殆どがあの双子に惨い方法で殺されてるって」
「あー……確かゲームであの二人以外のルートのバッドエンディングでは、大体ユーリに殺されてるイメージがある」
「はは。そっか」
アシェリー然り、ネフィ然り。この二人の場合はアフィーリアが好きなのにユーリの手によってアフィーリアを殺され狂ってしまう。
ソラの場合はどうだっけ……純愛ルートでも愛憎ルートでも、どちらもアフィーリアを嫌っていない設定だった。ヒロインのアイリーンと結ばれたら殺されるけどバッドエンドの場合は殺されない。
隠しキャラのベルベットだけ全部バッドエンドなのもあれだけどソラのバッドエンドもかなり癖があった気がする。
「アフィーリア?」
急に黙り込んだ私を訝しく思ったウアリウスに顔を覗き込まれた。美の女神すら超越する美顔が間近にあり、ついまじまじと見てしまう。丸くなった銀瞳が更に丸くなった。
「どうしたの?」
「エグイ方法で殺されてるなって」
「ユーリとハイネに?」
「うん」
本当は違うことを考えていたけど咄嗟に嘘を言ってしまった。
「無理に思い出す必要は無い。今の君とは無関係だから」
「そうだけど知ってるからさ」
「だとしてもだ」
この話は終わりと額にキスをされ、隣に寝転がったウアリウスに今度は上に乗せられた。顔が間近なのは変わらず。
「重くない?」
「最初に君を連れて来た時を思うと大きくなったとは思う」
「成長してるから」
「違いない」
最初の雰囲気はどこへやらで最後はいつもの雰囲気になり、明日ウアリウスの用事に付き合うのを約束して眠った。
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