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16.硝子のソトへ



 2人は歩き始める……出口を、外を、自由をめざし。恐ろしく何も無いフロアはN.E493降りかかる好奇心の力を消失し元のフロアに変化している、しかし、フロアは8階からの振り出しでありまた登る必要があった。


「[ごっちゃごちゃになったフロアが元に戻って出やすくはなった、非常階段の位置もある程度は分かる、後は……職員に合わないようにしなきゃ__]」


 その言葉を言い切る直前、2人の職員が現れた。彼らはそれぞれ八幡が以前手にしていた制御剤の入った銃を手にし、八幡達に銃口を向けている。


「いたぞ!!」

「捕獲、いや仕留めろ!」


 彼らが銃を抜く、その手前にツクモが素早く彼らの頭部に突き刺さす。


「このっ、」


 引き金を引く前に彼らは意識を失う、ここの職員全員を気絶させるほど弾はないがある程度は何とかなるだろう。


「その、ぁ……先生、戦えるんですか?」

「[まぁね。というかツクモでいいよ、今の僕はどっからどう見ても人間じゃないし……]」

「ツクモ先生……?」

「[違う、そうじゃない。先生いらないよ!]」

「じゃあツクモで」

「[よろし!元々僕はここの職員に選ばれる位の身体能力が元々あったんだよ、N.Eになったらそりゃぁ人間を一捻りできる力ぐらい持つ……MUTEKIだ!!]」

「は、はぁ……そうですか」


 ツクモを先頭に8フロアにある非常階段を目指す。鍵はほぼ所持している、階段の場所は頭に入っている、N.Eの知識や職員の知識も完璧……あとは運のみ。


「[(8フロアの非常階段はニイナちゃんの部屋、急ごう)]」


 廊下を駆け抜け、急いで目的地、N.E217_ニイナの部屋に入り込む。部屋にはニィナが銃を持ち2人にその銃口を構えていた。


「[ニィナちゃん!?]」


【N.EはただちにN.E999とN.E416を確保せよ】という放送が流れる。


「[シイロくん逃げるよ!こっち!!]」

「分かった」


 その時、銃弾が放たれる__


「逃げろ!お前ら!!」


 頭を低く伏せ、そのままニィナとの距離を一気に詰める。狙いは彼女のこめかみ、その白く柔らかそうな肌目掛けて八幡は抑制剤を打ち込んだ。


「グッドだ、このチャカ持って早く行け」


 手から転げ落ちた抑制剤を手に取る、彼女はピクリとも動かなくなった。


「[きっと職員が反乱分子を捉えるためにN.E達に司令を出した、N.E達の脳に埋め込まれたチップが元気にこの子達の頭に指示を出しまくってムテキの兵隊さん状態を作り上げちゃったね……僕らのとこに大名行列でくるよ]」

「なぎ倒せば終わることでは」

「[できるだけぶっ飛ばそっか、じゃ着いてきて]」


 8階から7フロアへ、7フロアは危険区域とされていたが数人の職員と持ち前の足の速さで難なく非常階段にたどり着き、6階のフロアへと向かうことができた。7フロアはほぼ手隙のフロア、守るものは少ない、それが救いだった。


 だが__


「[7フロアにいるはずの子達の部屋のドアが開いてた、襲ってくると思うから気を抜かな__]」


 突如、ノイズが意識に滑り込む。


「【お前は研究員だろう?研究員としての義務を果たせ】」

「【お前の存在意義はなんだ?研究員としての役目を果たせ】」

「【お前も逃げるつもりか?約束を果たせ】」

「【義務を果たせ、役目を果たせ、約束を果たせ】」


 男の声、女の声、子供の声、脳内がかき乱されていく。


「黙れ!」


 声を上げた、声はもう聞こえない、目の前にいるツクモは驚いた顔で八幡を凝視している。

 咳払いをひとつ。八幡は静かに謝罪をし、ツクモの手をにぎった。


「[今度ははぐれないようにね]」


 7フロアは酷く静かでツクモの尾が床を這いずる音、八幡の靴の音、2人の呼吸の音が響き、酷く不気味な雰囲気を纏っている。


「[レディがいれば上のどこかしらの階層に届けてくれると思うんだけど……]」


 廊下を曲った先、そこにN.E1000レディが肉塊の上に立っていた。


「[レディ!!上の階に繋がる穴を作ってくれないかな?]」

「ママン、貴方が来るの待ってたの。ママンの為にアタシ、この穴守ってたのよ」

「[ありがとう、レディ、もし良かったらみんなを自由にしてあげて。ここの施設をぶっ壊して!!]」


 突然の破壊宣言八幡は目を見開く。


「わかったわ、ママン。アタシはいつでも現れる、ママン。行ってらっしゃい」

「[行ってくるね、シイロくん、逃げるよ!]」


 腕を引かれ身体を引かれ八幡は完全に目の前の小さな彼に振り回されていた。穴の中を進めば進むほどあのノイズが耳元で高鳴ってく。しかし、八幡はそのノイズを振り切るように、かき消すように自分の意思で前を向いて走る。


「[シイロくん、もう後戻りはできないけど。それでも来る?]」

「どこまでも先生について行きますよ」

「[わかった。じゃあ、行こう……外の世界へ]」


 手を固く握りしめ2人は歩き出す、外の世界へ、自由な世界へ、元の世界へ……。

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