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留守番電話

「ああ、オレってなんてバカだったんだ。冴子の気持ちも考えないで」


 数日前、オレは恋人の冴子とケンカしてしまった。

 きっかけは些細なことだった。

「カレーにあさりを入れるなんて邪道だ」なんて言ってせっかく作ってくれたカレーを食べなかったのだ。


 思えばカレーにあさりを入れるなんて当たり前のことなのに。

 海鮮カレーなんて普通にあるのに。


 それ以来、冴子とは口を聞いてない。


 許してくれるなら、もう一度やり直そう。


 オレはスマホを取り出すと、冴子の番号に電話をかけた。

 いつもの着信音のあと、留守番電話サービスにつながった。


『こちらは留守番電話サービスです』

「ああ、留守番電話になっちゃったか……」


 仕方ない、留守番電話に謝罪の言葉を吹き込んでおこう。


「ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー………という発信音のあとにメッセージをお入れください」

「長いな! ピーが長いな!」


 なんだこれ。

 最近の留守電ってこんなに長いの?


 ああ、もしかしたらしゃべる内容を考える時間を考慮してるのかもしれない。

 いきなりピーの後にしゃべるのも緊張するしな。



『ピッ』

「短っ! 本番、短っ!」

『メッセージをお受けしました』

「ちょっと待てえええっ! 違う違う、今の違うから! なんか、すっげえ誤解されそう!」


 慌ててオレはもう一度かけ直した。


『こちらは留守番電話サービスです。ピーという発信音のあとに用件をお伝えください』

「何で今度は普通なの!?」

『ピー』

「冴子……オレが悪かった……。全部、オレが悪かった。だから、仲直りしよう」

『ムリですね』

「うおぉい! 何言ってんの、こいつ!」

『うおぉい、何言ってんのこいつというメッセージだけお受けしました』

「ちょっと待てええぇぇ! 前半はカットされんの!? っていうか、機械音声のくせに用件の内容に口出しするなよ!」


 なんなんだ、この留守番電話サービスは。

 あり得ないだろ。

 オレは再度かけなおした。


『こちらは留守番電話サービスです。ピーという発信音のあとに2秒以内で用件をお伝えください』

「短いよ! 2秒なんて無理だろ!」

『ピー』

「ごめんすまん謝るオレがわりゅきゃった……」

『メッセージをお受けしました。ぷぷ、噛んでやんの』

「そりゃ噛むよ! 2秒なんて短すぎだよ!」


 っていうか、機械がなんで笑ってんだよ! おかしいだろ!

 オレはまた電話をかけた。


『こちらは留守番電話サービスです。またあなたですか。ピーという発信音のあとに……』

「またってなんだよ!」

『ピー』

「冴子、すまん、オレがすべて悪かった。カレーにあさりはアリだ。だから、仲直りしよう」

『メッセージを受けとりました』

「よかった、ようやく言えた」

『なお、メッセージは盗聴の恐れがあるので暗号通信で送られます』

「なんでだよ!」





 結局、オレは直接謝りに行って仲直りすることができた。


 ちゃんちゃん♪

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