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 オレには誰にも言えない夢がある。

 ものすごく壮大な夢だ。

 しかしあまりに現実離れしているため、親にも秘密にしている。

 だがこの想いを誰かに打ち明けたい。

 そこでオレは親友に相談することにした。


「なあ、ちょっと相談があるんだけど、聞いてくれるか?」


 親友はオレの神妙な顔つきに気づき、「なんだ?」と真面目な顔で聞いてくれた。


「実は笑わないで聞いて欲しいんだが……」

「ぷす」

「………」

「………」

「………」

「………」


 なに?

 今の「ぷす」


「笑った?」

「いや、笑ってない」

「ほんとに?」

「ほんとほんと」


 親友は真面目な顔をしている。

 どうやらさっきの「ぷす」は聞き間違いだったようだ。

 オレは気を取り直して親友に打ち明けた。


「実はさ、オレ、夢があるんだ」

「ぷす」

「………」

「………」

「………」

「………」


 ぷす?


「ねえ、やっぱり笑ってるよね?」

「笑ってない、笑ってない」

「ほんとに?」

「ほんとにほんとに。誓ってもいい。で? 夢がなんだって?」


 なんだか腑に落ちなかったが、とりあえずオレは自分の夢を親友に打ち明けてみた。


「オレ、将来ロックンローラーになりたいんだ」

「ぷぷぷぷす」

「笑ってるだろ!? それ、絶対笑ってるだろ!?」

「笑ってない、笑ってない。笑ってるように見えるだけ」

「ほんとか?」

「ほんとほんと」


 親友の顔はいたって真面目だ。

 普段おちゃらけてはいるが、こういう時は真面目に話を聞くヤツだ。

 だとしたらやっぱり笑ってるように見えるのはオレの勘違いかもしれない。


「………」

「………」

「………」

「……ぷす」

「笑ったよな!? いま、絶対笑ったよな!?」

「笑ってない。ちょっと口から面白い空気が込み上げて来て……」

「それを笑ってるって言うんだよ!」


 なんだこいつ!

 オレの真面目な相談を笑いやがって!

 ああー、やっぱ相談しなきゃよかったー!


「まあまあ、いいじゃないか。ロックンローラー。オレは全力で応援するぜ」

「ロックンローラーの意味わかってる?」

「もちろんさ」

「ほんとか?」

「ああ、ほんとだ。……ぷす」

「その『ぷす』が余計なんだよ!」


 絶対笑ってるよ!

 超最悪だよ、こいつ!


「もういい! お前に相談しようとしたオレが間違ってた!」

「まあ落ち着けって。大丈夫、お前はなれるよ。ロックンローラーに」

「そ、そうかな」

「だっていつもお前、オレに聴かせてくれるじゃないか。面白い曲を」

「面白いって何!?」

「あ、間違えた。笑える曲」

「笑える曲でもねーよ!」


 どっちも一緒だわ!


「お前の歌を聞いてるとな、心の底から湧き上がって来るんだよ。何かが」

「笑いだろ!? それ、笑いだろ!?」

「違う違う! 空気だよ、空気! 腹の底から空気!」

「それを笑いっていうんだよ! あー、やっぱお前になんて相談するんじゃなかったー」

「だから大丈夫だって。お前ならなれるさ、ロックンローラーに」

「本当にそう思うか?」

「ああ、思う。オレが保証する」


 親友は相も変わらず真面目な顔だ。

 こいつがこういう顔をする時は本気でそう思ってる時だ。

 オレは「ふう」とため息をついた。


「そっか。なら、ちょっと前向きに頑張ってみようかな」

「おお、応援するぜ!」

「おお! 応援しててくれ!」

「目指せM-1グランプリ!」

「それ、漫才!」



 結局、オレは芸人を目指すことにした。


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