『手紙』
『――拝啓、親愛なる健志くんへ。
今日で中学校も卒業ですね。おめでとう。
大人の階段を上り始めたあなたに、伝えなければならないことがあります』
なんだろう? 字を見るに、親父っぽいが……。
手紙なんて初めてだな。
『なんとウチには、一億円の借金がありました(ワオ!)』
…え? 借金? それも一億円も?
っていうかなんだよ(ワオ!)って!
せっかく平和を手に入れて、仲睦まじく平穏な日々を過ごしてきた我が家に一体何が起こった!?
こんな手紙を残していった親父たちは、今大丈夫なのだろうか…?
『実はお父さん、大人のお姉さんとムフフなことができるお店にハマり過ぎて、五千万円、お母さんには内緒でお金借りちゃってました(照)』
おいクソ親父。 黙って一発ぶん殴らせてくれ。
めっちゃアホな事につぎ込んでるじゃねえか!
ちょっと心配して損したわ!
こんな事知ったら、真面目な母さんの事だ。怒るだけで済めばいいが、離婚話なんて事になってもおかしくない。
家庭崩壊の危機じゃないか……
あれ? 一億円ってことは、残りの五千万円はどうしたんだ…?
『お母さんの方も、男の人がウェイ↑ウェイ↑してくれるお店にハマっちゃって、私には内緒で、五千万円借りちゃってたみたいです(笑)』
母さん!
ご近所さんの間でも美人と評判で、数少ない俺の自慢だった母さん!
色々と厳しかったけど、特にお金に関することには人一倍厳しかった母さん!
俺には参考書代の五百円すら出し渋っていたというのに…
『でも、安心してください。
私たちの借金は、親切なお嬢様が突然現れて、全部肩代わりしてくれました。
さらになんと、世界一周豪華客船の旅までプレゼントしてくださったので、今日から三年間、夫婦水入らず楽しんで来ようと思います』
怪し過ぎるわ!
でもありがとう!!
っていうか三年もかかるのか!? アンタ達どこまで自由なんだ!
『その間、親切なお嬢様が健志くんを預かってくれるそうです。
親切なお嬢様のお家までの道のりを書いた地図を残しておきました。
くれぐれも粗相などないようにね。
それでは、お元気で』
と、ここで手紙は終わっていた。
…どうやら俺は今日から三年間、親切なお嬢様にお世話になるらしい。
手紙の裏に重ねられていた紙には、それらしきものが記されていた。
とりあえず、行ってみるかな。
地図を見る限り、そんなに離れた場所でもない。
今日は挨拶だけ済ませて、家に戻って休もう。
俺はそう思い、外へ出た。
…これが、愛しき我が家との今生の別れにもなると知らずに。
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名前;柳 健志
異能系統:憑依系
異能ステージ:Ⅱ
能力:武器に異能属性を付与する。
所見:オーソドックスな憑依系の力の使い方ですね。
ただ、彼の粒子による適性系統判定は確かに憑依系でしたが、少し違和感を覚えました。
もしかすると、将来適性に変化が見られるかもしれません。
要観察です。