045.汚れ
ここから真穂視点開始。
高圧洗浄みたいな魔法で、廊下の天井と床がピカピカになる。
ヤニと煤と油煙と埃で真っ黒だったのが、一気に明るくなった。
キレイな廊下に土足で上がるのは気が引ける。でも、奥は汚いままだから、やっぱり土足。
床を埋めていた物がなくなって、棚の足元がどうなっていたのか、わかった。
棚の前にも、カラーボックスが横倒しに置いてあった。って言うか、埋まっていた。中身はギュウギュウ詰め。玄関に一番近いカラーボックスは、ラップとアルミホイルとビニール袋とタッパ。パッケージはどれも変色していた。
腐汁が垂れて、色々な生き物の糞がこびり付いて、小さな歯型もある。食べ物じゃないのに、何で齧っちゃうかなー?
どう見ても無理です。使えません。ゴメンナサイ。
齧られてできた穴に指を入れて、ラップを引っ張り出す。一本抜けるとどんどん抜ける。一段でゴミ袋が満タンになった。軽いから、後で纏めて持って行こう。
口を括って玄関に置いて、二段目、三段目もゴミ袋に入れる。
お兄ちゃんとツネちゃんは、カラーボックスの後ろの棚を開けた。
「何でこんなとこに食器があるんだ?」
「知りませんよ。捨てましょう。全部」
ツネ兄ちゃんに聞かれて、お兄ちゃんがキレ気味に答える。
ゴメンナサイ。台所に入りきらないからです。
私は心の中で謝りながら、カラーボックスの中身をゴミ袋に移した。いちいち段ボールから出してあって、面倒臭い。
下の箱が潰れて空いた隙間に、ビニール袋とかを詰めて埋めてあった。
意味わかんない。
他の物みたいに段ボールのままだったら、まだ使えたかもしれないのに。
ゴミ袋四つ持って、外に出る。
外は寒いけど、空気がキレイでホッとした。
さっきの大きい靴箱とかも、もう焼いてあった。灰入りの透明ゴミ袋が塀の傍に積んである。
はちきれそうなゴミ袋を何もないゴミ焼きの円に置いて、ノリ兄ちゃんに声を掛けた。
「ゴミ焼き、ありがとうございます。そこ、寒くないですか?」
「ん? 風除け作ったから、大丈夫だよ」
杖で足元の円を指してくれたけど、タダの円にしか見えない。
でも、きっと何か凄い魔法なんだ。
いいなぁ。魔法。
私も魔法使いだったら、こんなゴミ屋敷、パーっと片付けられるのに。