043.違い
クロエさんも廊下に上がり、朽ちて束ねられない古新聞を袋詰めしている。
真穂と並ぶと、違和感に気付いた。
外国人と言う事を差し引いても、もっと何か、決定的に違う。
俺は手元を見ずに袋詰めしながら、二人を見比べた。どうせ、ヘドロで手元は見えない。
クロエさんも魔女だから、雰囲気が違うのか?
双羽さんをチラ見する。いや、やっぱり違う。
双羽さんはどっちかっつーと、ツネ兄ちゃんに近い。ツネ兄ちゃんは、霊感があるだけで多分、普通の人だ。
ツネ兄ちゃん、真穂、クロエさんを見る。
クロエさんだけが明らかに違う。
何が違うのかわからない。見た目は凄い美人なのに、人っぽくないって言うか、何なんだろう。
古雑誌を掴んだ。
色褪せた表紙は、ベテランの落語家だ。この間、この人のデータを基にアンドロイドを作ったって、ニュースでやってた。
TVで、この表紙より大分老けた落語家と、アンドロイドが並んでいた。
アンドロイドは外見も仕種も語りも、落語家にそっくりだった。でも、人には見えなかった。
クロエさんの雰囲気は、それに近い。
あ、でも、命令の仕方とか、ホントにそうなのかも……
なら、人間離れした怪力もわかる。
見た目グロいだけで、雑妖は直接、何かしてくる訳じゃない。
居ないモノとして、ヘドロに手を突っ込み、紙袋を引き上げた。底が抜ける。
「うぉっ! ゴメン!」
お裾分けと一緒に紙袋も腐っていた。腐ってから干からびて、カビの苗床になった物体と、ハエの蛹らしき赤茶色の粒が玄関に散らばる。
ツネ兄ちゃんがちょっと退き、双羽さんは小さく溜め息を吐いた。
真穂は俺の声に振り向いたが、クロエさんは無反応。
段ボールを即席の箒とチリトリにして、散らばった物をかき集めた。
「野茨の血族」を先に読んだ方は、クロエが何者かご存知だと思いますが、知らんぷりして読んでください。