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第九話


 先遣隊として魔人族の拠点のひとつグランバーグ砦へ向かっていたカレラ王国、アーク王国の混合部隊が魔人族の奇襲を受けた。

 現在の先遣隊は、魔人族にこちらの動きを悟られない為のなるべく少ない人数での行軍が仇となり、魔人族の戦力の前に苦戦を強いられ非常に危機的な状況に陥っていると息も絶え絶えに奇襲から逃れてきた兵士が報告をしてくれた。

 

 敵には、こちらの事前情報にはなかった最高位の魔人の1人がおり、アーク王国の勇者や橘達がそいつをなんとか抑えこんでいるが、元々の戦力差が響きこのままでは、徹底することすら難しい状態らしい。

 

 この報告を受けた本隊に動揺が走ったのは、言うまでもない。

 すぐにでも本隊から救援の部隊を向かわせなければならないのだが、策もなしにぶつかれば先遣隊の二の舞いになりかねない。

 敵側の主戦力である、最高位魔人は、それほどに強力な力を持っている。

 なんとか現状を打破する方策がないかと本隊の指揮官達が頭を悩ませているが、時間は刻一刻と過ぎて行く。



「いい加減にしてよ!橘君やリサが危ないんだよ⁈早く助けに行かないとっ!」



 張り詰めた空気が流れる中、いつまでたっても終わらない指揮官同士の話し合いに耐えきれずに結城が声を張り上げた。



「落ち着いて下さい。勇者殿確かに予断を許さない状況ですが、ここで慌ても敵の思うつぼです。」

 

 眉間に皺を寄せ厳しい表情をした指揮官が、橘達を思い冷静さを欠いた結城を宥めようと声をかける。


 「落ち着けるわけないじゃない!友達が死ぬかも知れないんだよ⁈貴方たちの仲間だって!こんなとこで立ち止まってる場合じゃないでしょ!」


 ……まずいな。

 結城が発した言葉に反応して、この場に不穏な空気が流れた。

 彼らだって自分の仲間を助けたい思いはあるに決まっている。

 しかし、彼らの言うとおり策も無しに戦場へ向えば更なる被害が発生しる可能性だってあるのだ。そんな事は、きっと今必死で闘っている人達だって望んでいない筈だ。



「言い過ぎだ。結城の気持ちも分かるけどここは、冷静になるべきだ。助けに行かないわけじゃない。橘達だって無策で助けに来られるよりしっかり策を持って助けに来ることを望んでるはずだ。」



 僕は、身を乗り出すように抗議の声のあげていた結城を諭すように彼女の肩に手を置いた。

 しかし、結城は僕の手を乱暴に振り払うとこちらを睨みつけた。



「八神君は、なんでそんなに冷静なのっ⁈友達が危ないんだよっ⁈それとも八神君は、橘君やリサと元々仲良くなかったからどうでもいいってわけっ⁈」



「そんなことあるわけない!僕だって橘達は、心配だけどちゃんと作戦を立てて助けに行かないとこっちも危険な目に会うことになる。」



「……ふーん。そっか八神君は、怖いんだね。そうだね、八神君は私達と違って魔力もないし。いいよ、分かった。私だけでも助けに行くから。」



 結城は、僕の言葉を聞くと一瞬感情なくした目をして次の瞬間には、目を怒らせた。

 そして、持ち前の強大な魔力で身体を強化すると僕の制止も聞かずに視認すら難しい速度で戦隊から飛び出して行ってしまった。



「なっ、待ってっ!ちょっとっ‼︎」


 突然の出来事に僕や指揮官は、言葉をなくし、更に複雑になってしまった事態に指揮官は、顔を青くして空を仰いだ。

 






 ……早く。……もっと早く。

 私は、焦る気持ちをそのまんまに膨大な魔力にものを言わせた身体強化を使用し、戦場への道を駆け抜けた。

 飛ぶように過ぎて行く周りの景色を尻目に更にスピードを上げて行く。

 走っている最中に目に浮かんだ涙風で吹き飛ばされるのを感じる。



 「……八神君のばか。」



 私は、ぐるぐると頭の中で渦巻くいろいろな思いをひとつの言葉に出して吐き出した。

 ボロボロの姿の先遣隊の兵隊さんを見たときに私は、もの凄くいやな予感がした。

 その予感は的中し、橘君達の部隊が敵に襲われ壊滅の危機にあっているという報告が私達にされた。

 報告を聞いた時、私は自分の心臓の音がやけに大きく聞こえ、顔から血の気が引くのを感じた。

 友達が、死ぬかもしれないと聞いたのだ。いってもたってもいられなかった。

 私は、いつまでたっても終わらない話し合いにイライラして早く助けに行くべきだと強引に意見した。

 しかし指揮官の人達は、そんな私に落ち着くように言ってきた。

 落ち着いていられるわけがない。

 そんな私に八神君が、声をかけた。

 彼の言葉も指揮官の人達が言うように落ち着いて待てだった。

 そしてその後の彼の指揮官の人達のような臆病風に吹かれたような言葉に私は、なにか張り詰めてものが切れたのを感じた。

 私は、八神君に勝手だけど期待していたのだ。八神君なら私に賛成して、一緒に橘君達を助けに行こうと言ってくれると思っていた。

 しかし彼の言葉は、私の想像とは違っていて私は、彼にひどく裏切られた気がした。

 そうして気がつくと私は、橘君達を助けに行く為に走り出していた。



 




「……何これっ……」



 全力で疾走し、ようやく魔人族と先遣隊の戦場が見渡せる丘の上に辿り着いた時に私は、言葉を失った。

 私の目の前には、悲惨な光景が広がっていた。

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