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母の定義  作者: 七草せり
8/11

定期検診。

定期検診の日、エコーでお腹の子の様子を見ていた先生。

始めは談笑していたが、ある部分に差し掛かるとふと手を止めた。


「ん?」


小さな声で言い、再びエコーを動かす。

そして一箇所で手を止めたまま、その部分を印刷した。



内診が終わり、先生の話を聞いた。


「今回、 エコー検査をした所、 少し気になる点が見えました。 詳しくは言えませんが、 赤ちゃんの首の後ろ側に何かあるかも知れません。 恐らく問題ないと思いますが、 検査をしてみましょう」


突然の事に驚いたのが姉であった。


「どういう事ですか⁉︎ 先生…。 異常があると言う事ですか?」


食いつく様に先生に詰め寄る。


「落ち着いて下さい。 まだハッキリ分からないですので、 検査をしましょう」


姉をなだめる様に言った。


「気になるとは、 どんな事ですか?」


「赤ちゃんの首の後ろ側に少し……」


落ち着いて先生の話を聞く私。

顔が青ざめる姉。



「検査は羊水を抜いてやります。 羊水検査です。 お腹に針を刺して、 赤ちゃんのいる羊水を抜きます。 では日取りを……」



どんどん話は進む。

何かあってはいけないのだ。早くハッキリさせたい。


先生の焦りが見えた。


名家の跡継ぎ。問題があっては困る。




「一体何故? 何で検査が必要なのよ」


帰りの車の中、姉が言った。


「私も分からないよ。 こないだまでは何ともなかったのに……」


車の窓を少し開け、私は答えた。


「あなたきちんとしてる? 何か問題ある事してないわよね?」


「お姉ちゃんとずっといるのよ? 何をするのよ?」



赤ん坊に何かあれば一大事なのは分かる。

けれど、余り無神経な発言をしないで欲しいな。


帰りの車は重たい空気が漂って、一刻も早く帰りたかった。



検査の日まで私は絶対安静。

もちろん子供にも会えない……。


妊婦の気持ちなど分からない姉は、ただひたすら妊婦の本と病気の本を読んでいた。


「こう頸部浮腫かしら……?」


赤ちゃんの首の後ろの異常の一つ。

エコー検査で発見し、精密検査を行う。


「だとしたら、 普通に生まれてくる確立が低くなるわ……」



何やら考え込む姉。


「面倒な事は嫌よ……」


リビングで本を読んでいた姉は、そう呟くと自室へと行った。


何よ、それ……。


私はお腹に手をやり、優しく撫でる。


「無事に生まれてよね……」


そう囁いた。

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