定期検診。
定期検診の日、エコーでお腹の子の様子を見ていた先生。
始めは談笑していたが、ある部分に差し掛かるとふと手を止めた。
「ん?」
小さな声で言い、再びエコーを動かす。
そして一箇所で手を止めたまま、その部分を印刷した。
内診が終わり、先生の話を聞いた。
「今回、 エコー検査をした所、 少し気になる点が見えました。 詳しくは言えませんが、 赤ちゃんの首の後ろ側に何かあるかも知れません。 恐らく問題ないと思いますが、 検査をしてみましょう」
突然の事に驚いたのが姉であった。
「どういう事ですか⁉︎ 先生…。 異常があると言う事ですか?」
食いつく様に先生に詰め寄る。
「落ち着いて下さい。 まだハッキリ分からないですので、 検査をしましょう」
姉をなだめる様に言った。
「気になるとは、 どんな事ですか?」
「赤ちゃんの首の後ろ側に少し……」
落ち着いて先生の話を聞く私。
顔が青ざめる姉。
「検査は羊水を抜いてやります。 羊水検査です。 お腹に針を刺して、 赤ちゃんのいる羊水を抜きます。 では日取りを……」
どんどん話は進む。
何かあってはいけないのだ。早くハッキリさせたい。
先生の焦りが見えた。
名家の跡継ぎ。問題があっては困る。
「一体何故? 何で検査が必要なのよ」
帰りの車の中、姉が言った。
「私も分からないよ。 こないだまでは何ともなかったのに……」
車の窓を少し開け、私は答えた。
「あなたきちんとしてる? 何か問題ある事してないわよね?」
「お姉ちゃんとずっといるのよ? 何をするのよ?」
赤ん坊に何かあれば一大事なのは分かる。
けれど、余り無神経な発言をしないで欲しいな。
帰りの車は重たい空気が漂って、一刻も早く帰りたかった。
検査の日まで私は絶対安静。
もちろん子供にも会えない……。
妊婦の気持ちなど分からない姉は、ただひたすら妊婦の本と病気の本を読んでいた。
「こう頸部浮腫かしら……?」
赤ちゃんの首の後ろの異常の一つ。
エコー検査で発見し、精密検査を行う。
「だとしたら、 普通に生まれてくる確立が低くなるわ……」
何やら考え込む姉。
「面倒な事は嫌よ……」
リビングで本を読んでいた姉は、そう呟くと自室へと行った。
何よ、それ……。
私はお腹に手をやり、優しく撫でる。
「無事に生まれてよね……」
そう囁いた。