♰170 思わぬ再会。
『トカゲ』に睨まれ、王家の吸血鬼にも睨まれ、大きな敵が出来た。
狙いは、徹くんと私と月斗だ。
徹くんは公安の敵として、狙われているだろう。
そんな徹くんの部下という位置付けになる私もまた、狙いを定められた。付け加えると、王家の吸血鬼から身を隠していた月斗と一緒にいたから、私も狙われたのだろう。
『トカゲ』と吸血鬼が繋がっていたため、私と月斗を襲撃し暗殺しようとした。
王家と『トカゲ』の繋がりは証明出来なかったが、王家の吸血鬼の一部は月斗を葬りたがっている。
月斗がこの日本の公安にいることは、知られてしまっただろう。
これから『トカゲ』も、私か徹くんを狙って襲ってくるだろうし、月斗を葬りたい吸血鬼が襲撃してくるかもしれない。
その警戒をしつつも、襲撃に備えておくことにした。
その間、下校したら家にこもっていたのだが、問題は未成年の二人。
燃太くんと常盤くん。
仲間ではあるが、未成年である。私達は、敵に狙いを定められているのだ。避難させる方が賢明だろうが、どこまで『トカゲ』に把握されているかもわからない。
燃太くんの兄である聖也さんも狙われたことがあるし、その繋がりで手を出される可能性もあり得る。
二人とも中学生だ。年齢的には、飛び級した小学生高学年でもある。
保護者が危険から避けたいと言えば、避難させるしかない。
だが、本人達が選んだのは、私達と戦うということ。自分達で保護者に頼み込み、下校後も私の家に通った。
うるさかったのは、宮藤さん。
というか、私の実の父親だ。月斗をどっかやれと言っていたみたいだが、私が引き受けたのでとやかく言うなと一蹴しておいた。
後継者教育を始めたそうだが、私を心配して殺気立ってしまっているというのが、宮藤さん情報だ。知らん。
例の捕らえた吸血鬼の処刑前後から、多忙の徹くんの予定が空いた日に、訓練場に連れて行ってもらった。
家にこもっている間、武器開発を進めて完成させたのだ。
術式封じの対策として、予め術式を書き込んだ物を装備することにした。
それは常盤くんの刀に術式を付与するもの。リボンに術式を書き込み、それを柄に結び付けた。
常盤くん自身で発動出来るように調整。発動すれば、氷属性が付与、または雷属性が付与の術式。どちらもデバフ効果あり。接触部分が凍り付いたり、痺れを与えたりする。
それを試すために、訓練場を利用させてもらった。
人型を模した的相手に切り込み、確認。とはいえ、雷属性のデバフはわかりにくいから、丈夫な吸血鬼に受けてもらうことになった。月斗と七助さんに、戦闘中に受けてもらう。
吸血鬼相手だと、強引に動くことは出来るけれど、痺れはキツイとのこと。なかなかのデバフなのは、いいことだ。
「お嬢、その術式道具、自分もいただけませんか?」
私自身も常盤くんも満足いったけれど、藤堂もお気に召した。
藤堂は主に銃を使うけれど、懐に短刀も忍ばせている。それに結びつけるつもりだろう。近距離の武器に付与する用の術式だから、活用しやすい。了承して、藤堂の分も用意してあげることにした。
そんな藤堂は、言い換えると謹慎中に鬱陶しい視線をこちらに向けつつも、私は家にいるので藤堂は父にケジメをつけに行ったという。しっかりと『夜光雲組』を抜けた。
これで、正式に私の部下である。……ちょっとめんどい。
まぁ、しょうがない。藤堂の一人くらい、面倒見てやろうか。
それはさておき。こんな状況で、私はどうしても気になることがある。
……月斗を含めた大人達は、雲雀家を出てからというもの休んでいないのだ。
そう。休日がない。休んでいないのである。
休暇と取ってほしい。そう思うが、絶賛警戒中に休めるはずもなく、私も休暇を取れとは言えそうにない。
考えた末。遊びに行くことにした。みんなで遊ぼう。
そう言うなら、旅行に行ったことも休みに入るのだろうか。
「遊びに行きたい」
絶賛警戒中だけれど、私がねだれば遊びに出掛けてくれるだろう。
優先生は、少し考える素振りを見せた。一番過保護な保護者である優先生が許可を出さないと、遊びに行けない。
しかし、ここ最近家に籠りっきりだったこともあり、息抜きが必要だと判断したのか。
「そうですね。たまには出掛けましょう」
そう優先生は、首を横に振ってくれた。
念には念を。行き先で襲撃されないように、直前で決めた。術式の武装も、それぞれ準備万端。
……これ、息抜きの休日になるのだろうか。
無理だろうなぁ、と思ってしまう。しかし、休んでほしいという気持ちが収まらない。
心から安心して休むには、問題を片付けた方がいいが、何分問題は大きすぎてすぐには片付けられない。
手軽に色んな買い物が出来るであろう大型ショッピングモールに向かった。
「お嬢様、夏服買いましょうか」
「あれなんてお似合いじゃないですか?」
「あれも可愛くてお嬢に似合いそうですよ」
買い物と来れば、考えることは私の服を選ぶこと。
「自分の買いなよ」
そう言って、メンズの店に導いても「自分は大丈夫です」とか「それよりお嬢の服が」と断ってくる。
この人達、私に貢ぎすぎだ。
仕方ない。ここは私が年相応を武器に、駄々をこねよう。
「みんなの服を選びたい!」
二つの拳を振り回して、むっすりと言い切った。
なんでそこで困り顔をする? そこまでなの?
色んなメンズ店にも回っていき、月斗と優先生、燃太くんと常盤くん、それに七助さんと橘と、ついでに藤堂に服を選んでいく。人数も多いだけあって、一人数着購入するだけでもなかなかの荷物になっていった。
「一旦この荷物、車にしまっておきますね」
藤堂が橘と一緒に買い物袋を抱えて引き返していく。
その際、宮藤さんと目配せをしていた。出掛けると言うことで、宮藤さんもついてきたのだ。護衛なのでしょうがないだろう。ちなみに宮藤さんの休息は、気にしていない。出掛けない土日は来ないし、彼は休めているだろう。
レストランでランチを取ろうと歩き出す。
右手は月斗が握ってくれて、左手は七助さんが握ってくれている。
その後ろから、燃太くんと常盤くんと優先生が続く。
キーちゃんとサーくんも、他人に視えていないだけで言わずもがないる。
私にまとわりつくようにして浮いていたキーちゃんが、顔を上げた。
何かを一心に見ていることに気付き、私はその視線を辿ってみる。そこにいたのは、月斗によく似た女性。
軽いセミロングは金髪で、瞳も月斗と同じ黄色の美女。ノースリーブの襟付きシャツと七分丈のズボンと涼し気な服装。
スマホを見ていて、こちらに気付いていない彼女は、月斗のお姉さんと言われても通じる若さだ。
でも、月斗に姉はいない。だから必然的に……。
彼女を見て、右にいる月斗を見上げて、やっぱり似ていると思い、また今にもすれ違いそうな彼女を見る。二度見だ。
手を引く二人の吸血鬼の間で足を止めて、私はすれ違ったその美女に声をかけることにした。
「あの。すみません。月斗のお母様ですか?」
そう言ってから気付く。月斗という名前は、私が去年つけた名前だ。
彼女にとっては、知らない名前だろう。
けれど、月斗本人は”お母様”と聞いて「え?」と反応をして、私が見ている美女に目を向けた。
いや、気付け、月斗。すぐに気付こうよ。実の母親でしょ。
自分に話しかけられたことに気付いた美女は、訝し気に顔を向けて来たけれど、月斗と目を合わせてこちらもようやく気付いたようだ。
「「あっ」」
母子はやっと、互いを認識して声を溢した。
「こんなところにいたの、月」
「母さん、なんでこんなところに?」
一年以上ぶりの再会の二人は、特に喜んだ様子もなく、不思議そうにこの場にいることに疑問を抱いて尋ねる。
あっさりした反応は、流石執着するもの以外には無頓着な吸血鬼らしい反応だと思った。
お待たせいたしました!
新キャラ、月斗のマンマ!! どう登場させようかと悩みに悩んでしまい、なかなか筆が進みませんでした_(:3 」∠)_
最初は月斗を休めと追い払っているタイミングで舞蝶ちゃんと遭遇!なんてシーンを考えていたのですが、月斗は休めと言っても離れないだろうし、舞蝶ちゃんも理解しているだろうなぁ。そもそも休んで別行動していい場合じゃない!!
ってことで、考えまくりました。
やっと10分の3書けたかな、この章。
逆ハー状態に、一輪の華が合流いたしました!
あと二話ストックしております。
更新お楽しみに!
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2026/04/23





