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第四十九話 また会う日まで

 王子は街を出る前に馬車の中から身を乗り出すように顔を出して手を振りながらそのまま行ってしまった。


 街の出口付近にはそれなりに人が集まっていて、六宝星が討伐したワイバーンはこの街の復興資金に充てると御付きの者が宣言すると一斉に歓声と拍手が沸いた。


 人込みから離れた所でジールとドロフェイ共に六宝星が出て行くのを見送りながら、それほど時間が過ぎない内に市民のこの歓声が落胆に変わるのを予想していた。


「馬鹿な王子だったね、ワイバーンがどんな状態なのか見れば分かるはずなのに」


 何せ二匹ともバラバラになってしまっているので解体しようにも得られる物はがほとんどないし、現れた魔石も原型など留めていなかったからだ。


 それでも多少なりとも売れる事は出来たのだが、大見えを切って王家が寄付するにしてはあまりにも少なすぎた。


「どうせ人任せだから知らないんだろ、王子が自分で討伐なんてする訳ないしな」


 住んでいる世界が違うのだから分からなくても仕方のない事だと思うがそれで次期国王だと思うとこの国の未来はたかが知れていると思う。


「それじゃ俺は行こうかな、この腕輪の事は任せろ」


 ドロフェイは袋の中から腕輪を取り出すと軽く上に投げて見せる。するとその腕輪がドロフェイの手の中に墜ちる前にジールはそれを取った。


「これって奴隷の腕輪じゃない。家にある奴より随分といい物だよ、どうしたのよ」


「俺が盗賊から奪ったんだよ」


 ドロフェイが自分が持っていたことにしてくれたのでこの場は丸く収まりそうだが、ジールは少し納得が良いっていないようだ。


「本当なの、こんな高価な腕輪どう立って手に入れたんだろ」


「盗賊だから何処かで奪ったんだろ」


「そんな簡単な事じゃ……」


 無言のままじっくりと腕輪を見るとその中にはかなりの精密な魔法陣が書かれているらしく、この腕輪を持っていた者は貴族でも相当な地位を持っていると推測した。


(確かに正解だよ、貴族どころか王家だからね)


「お嬢ちゃんよ、この腕輪の機能は分かるか」


「無理だよ、ただ魔法陣を見る限りだとかなりの効果があるだろうね、家にあるのはこの魔法陣よりかなり簡略化されてるけど、それでも命令に従わなかったり無理に外すとかなりの痛みが全身に広がるんだってさ、罪人を奴隷にするんだから仕方がないけどね」


 ジールがまさか腕輪の事を知っているとは思わなかったので、腕輪の解除方法を聞いたが、それは契約者が設定をする事なので物によって違うそうだ。


(だったらこの事を直ぐに伝えにいた方が良いな……いや、平井もみんなも何かがおかしい、後回しにするか)


「何だよ、それが答えなら慌てて里に帰る必要は無くなったって事だな」


「だったらドロフェイも一緒にゴルゴダに行かないか」


 そもそも【サムライ】を見つけるまで付き合ってくれる事になっていたので二つ返事で答えてくれると思っていたがドロフェイは腕を組んだまま中々答えを言わないで、少し黙った後でようやく重い口を開いた。


「もうお前は大丈夫だよ、折角自分の力で歩きだしたんだからやってみろよ、それにな人間の世界の事はそこのお嬢ちゃんの方が俺より頼りになるからな、まぁそうだな、解除方法の抜け道が他にないかおばば様に聞いてみるよ」


「そうか、そうだよな、此処迄付き合ってくれてありがとう」


「そんなのよせって、ついこの間別れたばかりだろ」


「そういやそうか」


 その結果を知る為にはいつかは里に戻らなくてはならないので、【サムライ】と合流したら里に戻ってから王都に向かうと決めた。


「ねぇねぇ私も里に行ってもいいかな」


「何でだよ、里の前にナンスルの街に着くんだぜ、そしたらパーティは終了じゃねぇか」


「嫌だよ、ファウンダーエルフの里に行けるチャンス何てこの先はある訳ないじゃない。ねぇあんたからもお願いしてよ」


 俺は黙って首を横に振ると、ドロフェイもそれには答えずそのまま街を離れて行ってしまった。俺と同じ異世界人である【サムライ】を里に連れて行くかどうかもまだ決めていないのにこの世界の人間のジールを連れて行くかなんて今はまだ決められない。



 ◇◇◇



 討伐したワイバーンの分配が済むまでそれなりに時間が掛かり、その間は土木作業の手伝いをしながら時間を潰していた。


 街には避難先から戻ってくる人たちも出始めた頃にようやく分け前が支給されたのでその日の内にゴルゴダに向かって出発する。


 何も無ければ五日後にはゴルゴダに到着するはずだ。


 何も無ければ……。





今週は今日が最後になるのでもう1話か2話投稿します。

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