SIDE3 エドとジンガ
師匠との思い出の家から背負えるだけの荷物を持って西を目指しひたすら走り続ける。
(馬が必要だな、次の街で買うしか無いな)
馬の乗り方は師匠から教わっていたので今では苦も無く乗りこなす事が出来るようになっていた。
「んっ何だあの連中は……けっまた盗賊のお出ましかよ」
草むらの中に紛れて六人の盗賊が街道に向けて殺気を放っていた。
(俺もかなり気配を感じられるようになったよな、師匠ありがと~)
盗賊を見つけてしまったらやる事は一つしか無いので荷物を近くに隠し、自らの気配はなるべく抑えるようにしながら盗賊達のいる場所に向かって行く。
(馬鹿だねぇ、俺が近くにいる事に気が付いてないな)
「何だかいい獲物がいねぇな」
「我慢しろよ、その内に見つかるさ」
「どれもこれも護衛付きじゃなぁか、本当に見つかるのかよ」
今の街道には人の気配が無いので盗賊達は普通に声を出して会話を始めている。
「お前ら本当に馬鹿な連中だな」
「「「!!!!!!!!!」」」
俺の声に反応して振り向いた盗賊から順番に首を刎ねていく、これ以上盗賊の声など聞きたくはない。
(お前らじゃねぇけど盗賊は全員殺すって決めてあるんだ)
◇◇◇
馬を購入してから更に西に進み、国境に近いアブガルという街にようやく到着した。
この街は一度だけ師匠と来た事があるので全く見知らぬ街では無いし、獣人族も暮らしている最果ての街なので隠れて暮らすにはいい街だと思う。
(さて、登録名を変えようかな)
最果てとはいってもそれなりの規模を持った街であり、近くには広大な森や大きな山があるので討伐がメインの冒険者が集まるのでそれなりに栄えている。
ギルドの雰囲気はゴルゴダとは違って此方の方が俺にとっては居心地がいいように思えた。
その思いは直ぐに裏切られたのだが……。
「ったくよ、お前はまともに話せねぇのかよ、もう面倒くせぇからどっか行けよ」
「お前、態度、悪いな」
受付で誰も並んでいない若い男を選んでしまったのが間違いだった様で、俺のほぼ単語の羅列を聞いた途端にあからさまに嫌そうな態度を取って来た。
ただ、その態度で我慢が出来る程人間が出来てはいないので俺の中の殺気を解き放った。
「えっあっ、ちょっと……あああっ」
いきなり震えだしたその若い男は涙を流しながら意識を失い、そのまま後ろに倒れていった。
「あらあらそんなこと位で倒れるなんて情けない新人ね、ここからは私が対応するからそれを止めて貰えます?」
隣のブースから移って来た妙齢の女性は俺の殺気にひるむことなく新人を引きずって後ろに下げ、涼しい顔で椅子に座った。
元冒険者には見えない華奢な身体をしていて温厚さを売りにしているような顔の女性なのだが、何処かその小さな体の中に何かを感じる。
「これでいいか、こいつが馬鹿にしたんだ」
「その事はごめんなさいね、それより……野次馬は何処か行ってくれないかしら、何だか気分が悪くなってきたんだけど」
ただ普通にその女性が野次馬に声を掛けると、此方を面白がって見ていた冒険者達は何も文句も言わずにこの場所からいなくなってしまう。
「あんた、何者」
「只のギルド職員ですよ。まさかもう私に惚れたのかしら、名前も知らないのに」
「そうじゃない」
「まぁいいでしょ、私は副ギルド長のシロンです。それで今日はどのようなご用件ですか」
今使っている名前をそのまま使用する訳にはいかないので、【サムライ】と似た系統の【エド】という名前に登録を変えた。
繋がりは元の世界の人なら直ぐに分かるが、この世界の人間には全く意味が分からないだろう。
「名前は変更したけど他に要件はあるかしら」
「どうしたらいい」
「さぁ? 好きにしたら」
◇◇◇
「アニキ~待ってくださいよ」
「来るな。討伐対象は魔人」
俺の事をアニキと呼んできたこの少年は森の中で助けたパーティの中の一人で、今は俺と行動を共にすることになった犬の様な獣人族の少年で名前はジンガと言う。
一人の方が気が楽だったが、この辺りに詳しいし交渉なども上手くやってくれているので今では俺の方が感謝している。
「魔人か~それならおいらには無理だね……そうじゃなくて今日は注文した商品が完成するんですよ、行かなくていいんですか」
「そうか、忘れてた」
偶然にも質のいい鉱石を手に入れる事が出来たので俺のイメージにあう武器をドワーフ族の店に依頼をしていた。
(あれを持てば会社の人達だけじゃなく元の世界の人がいたとしたら目印になるからな)




