03 男の、夢とロマンと非常事態
どうも皆さん、更新ペースが早くて一月で三話まで投稿できました、自分でも褒めたいです。
それと、活動報告を更新したので良ければ目を通してやってください(そしてコメントも……)
目を開けると、先程の部屋とはまるで違う、豪華という言葉が似合う部屋に移動しており、俺は何故かダブルベットの上にいた。
「……なんだここ」
第一声は率直な感想だった。
それもそうだろう。
この唐突すぎる場面の変更は、まるで恋愛ゲームのようで、つい。
「この世界がエロゲだったら面白いんだけどなぁ……」
いやいやエロゲて。
自分で自分にツッコミを入れたあと、多少の痛みは残るものの、体が劇的に回復しているのを確認し、少し体を動かしに行こうと薄い素材でできた布団を除け、床に足をつけ、ドアを開ける。
その動作を終えた時に見えた。
視界の先に。
彼女がいた。
前見た時と変わらない服装。
その容姿に惹かれるように足を進める。
「……や、やあ」
「服とズボン、エルナが着させてあげたらしいわ」
ついちゃんと服を着ているかを確認してしまう。
視界を下に落とし、確認。
黒のTシャツと紺の短パン。
服がちゃんと用意して、着させてくれるこの世界、感謝してます。
「そっか、ありがとな」
だが、まだ彼女に怖気ついている。
いつ受けるかわからない打撃に怯え、こちらを見る2つの鋭い双眸にまたも怯え。
会話が続かず、ぎこちない状況の中、彼女はこちらに向かって————
頭を下げた。
「先日は失礼しました。……あれは私でも悪かったと思うわ」
すんなりと謝られて、驚きを隠せなかった。
てっきりこういう奴は、卑猥なことをあまり知らない世間知らずのお嬢様か、実力至上主義のツンデレかってところなのだが。
「いや、あれは俺も悪かったよ。 まな板とほぼ同じサイズの胸に欲情するなんて、俺もまだまだ……」
「ん?」
「冗談ですが?」
「ですよね。 まさか貴方が」
その後は、動くことをすんなりと諦め、眠りにつくことにした。
目を開けると、前に居た世界に戻っていた。
いつもと変わらない景色が続く。
————ここは学校か。
ということは、俺は寝ていたのか。
いや、そうに違いない。
嬉しい反面、退屈だなとも思った。別に楽しいと思えなかった。
何故かって?
そんなの、決まっている。
同じものばかりの現実には、飽きた。
この世界にいることは、退屈でしかない。
あの日、俺は変わったんだ。
彼女がいたから。
でも、終わってしまった。
もう、楽しいなんて思える日は来ない。
今日も、ここで生きるしかない。
みんなが知っている、橘和也として。
「起っきろーーーー!!!!」
室内に響き渡る激しい叫び声により、さっきまでの全てが夢だったことに気がついた。
頬が少し濡れているのは…… 気のせいだろう。
それにしても耳障りな叫びだ。これ近所迷惑だろ、多分。
そう思いながらも眠い目を擦り、おはようとだけ言った後、すかさずベットに突っ伏す。
「お願い、あと五分間だけ寝かせて」
「駄目ですよ、カズヤさん。 二度寝したら泣きますよ?」
「泣き顔を見ても何の得もしないし寝るわ」
「え? じゃあカズヤさん、大事な話聞きたくないんですね。聞いてくれたら何でもするんですけ……」
「とりあえずその棒読みやめてくれ」
「お、ちゃんと返事はできるんですね。 ……いや絶対起きてますよね、それ」
「そりゃあ何でもするなんて聞いたら男の血が騒ぐし、ちゃんと起きてま……」
ようやく開いた目で、声の主を見る。
そこで俺は、声の主がセシルではないことを知った。
誰だこのお姉さんは。
女性の顔を、体を、こんなにも間近で見たのは初めてだった。
紫色のミディアムヘアーに汚れなきメイド服。そこから見えるたわわに育った二つの果実は、セシルとはまた違う楽しみがある。
「てかどこ見てるんですか。その眼差し、まさかこの部屋の掃除でもしてくれるんですか?」
「あ、いやー、その、うん。 絶景だなーって」
「本当に? 先日はセシルが酷い目にあったとのご報告もありましたし、やはりカズヤさん変……」
「ああああ!!!! もういい! もういいから!」
もうカズヤのライフは0よ、というどこかで聞いたようなことなあるものはさておき。
「……"何でもする"という内容について、話をしたいんだけど」
モゾモゾしながらも口を開いた、まさにその時だった。
聞いたことのない音が鳴り響いた。
腹の底まで振動するような、そんな音。
この部屋から発せられてないことは音の大きさで分かったが、外から聞こえる悲鳴と雄叫びとが入り混じっていて、時折聞こえる奇妙な笑い声に背筋が凍り、耳を塞ぐので精一杯だった。
簡単に言えば、小学生のころ、突然防犯ブザーが教室内に鳴り響く、咄嗟に起こるあの状態に似ている。
あの不意打ち怖い。体全身が怖気づいてゾクゾクする。今もそんな感じだ。怖い。
何がどうなっているか分からず、少ししゃがんだ状態で辺りを見回すと、その光景に俺は絶句した。
彼女がいない。
ただそれだけ、たったそれだけが、俺の頭の中で回っていた。
次回は、できれば二週間以内に投稿する予定です。