怒ってる?
僕とけんちゃんさんで考えた嘘告作戦はうまくいった。
「ねえ、栄吉!これ!可愛いよ!」
「えー穂乃果さすがにこれは可愛くないでしょ」
「そんなことないでしょ!ね?栄吉?」
作戦は上手くいったはずなんだけど……
現在、僕は穂乃果と正式にお付き合いした記念の初デートに来ていた。そしてそこにはなぜか辻井さんもいた。
どうしてこんなことになったんだろう……
穂乃果と向き合い穂乃果の心を確かめるために嘘告返しだったはず。なのにすでに穂乃果は僕に対して全力で甘えているし辻井さんは対抗するようについてきているし本当にこの作戦意味あるのかな?
「聞いてる栄吉?」
「え?う、うん」
いけない。考え事に夢中になっていたから話を聞いてなかった。
「じゃあ、どうなの?可愛いでしょ?」
ぬいぐるみを抱きしめながらこちらに聞いてくるってことはこれは抱きしめている私可愛い?てやつなのかな?
「可愛い!もうすっごく!」
「う、うん。そ、そこまでこのぬいぐるみ気に入ったんだ」
「え?」
「??」
この感じはまたなにかすれ違ってない?
「えっと、穂乃果は可愛いよ?」
「へ!?急にそんなご褒美くれるって何企んでるの!?」
「いや、ぬいぐるみを抱いてる穂乃果は可愛いって……」
あれ、これってもしかしてぬいぐるみのこと聞かれてたの?
「角田、私は?」
し、しまった!?
辻井さんがとんでもなく笑顔で僕の肩を掴んでるー!?
落ち着くんだ。もしここで判断を誤ったら……
「……か、可愛いよ?」
「そうかー可愛いか―ふふ」
よ、よかった…
ガシ!
僕の肩は辻井さんよりしっかりした手で掴まれていた。見覚えのある手だった
「へ?」
振り返れば辻井さんと同じくすっごくにこにこな穂乃果がベンチを指さして言う。
「栄吉、ちょっとそこのベンチで話し合いましょう?」
「はい……」
僕は素直に従うしかなかったのだった。
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「確かに素直なのは栄吉のいいとこだけど!限度があるのよ!分かってる!?」
「は、はい……すみません」
かれこれ10分以上だろうか僕は穂乃果から説教を続けられていた。そんな怒れる彼女を止めることなどできるはずもなく僕はただ頷いて謝っていることしかできなかった。
「ねえ、穂乃果。喉乾かない?」
「……乾いた」
そこに神の一声がかかる。僕はその隙を逃さず使うことにした。
「じゃあ、僕が何か買ってくるよ!何がいい?」
「……リンゴジュース」
「了解!辻井さんは?」
「私は自分で選びたいから一緒に行くよ。穂乃果は留守番しててね?」
「それなら、私も…」
「ほ、穂乃果は疲れたでしょ?待っててよ。すぐ戻ってくるから」
「……分かった」
そうして戦線を離脱できたのだった。
「ふう、助かったよ辻井さん」
「でしょ?」
「うん。お礼に飲み物奢るよ」
「じゃあ、おごってもらおうかな」
早速彼女は何を買うか決めるため自動販売機を眺めていた。
「あのさ、やっぱり怒ってる?」
自然と口から言葉は出ていた。
それは計画を実行する時から頭にあった。彼女は僕に思いを伝えてくれている。なのに僕は嘘告をして本命の人の本心を確かめるために彼女も巻き込んだ。
怒らないはずなどない。
でも、穂乃果が好きな状態で辻井さんを好きだなんて軽薄なことは言えなかった。ちゃんと確認してそのうえで返事をしたかった。
だけど、彼女からすればそんな話関係ないよね……
「いいんだよ」
「え?」
彼女は背中を向けながらぽつりと告げるのだった。
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