第13話 薬草摘み
「それじゃお前らは、ここで薬草の採取な。俺らはちょっとその辺の小物を狩ってくっから」
「わかりました」
「兄ちゃん、今日は俺も行く!」
「よし、じゃあ遅れずについて来るんだぞ」
孤児院出身五人組は、そう言って森の中へ消えていった。残された俺とペピトは、森の入り口で細々と薬草採りだ。
「助かったよ、ロドリゴ。いつもはポンシオのお守りだからね」
「なるほど、私を勧誘したのはそういうことですか」
俺たちは二人して薬草を集めた。薬草については、事前に勉強部屋で調べたことがある。この場所は群生地というほどではないが、よく見ると草むらにポツポツと生えているのがわかる。薬草はポーションの材料で、基本的に神殿が全て買い取ることになっている。森の浅いところに生えているものは薬効もそれなりで、買取価格も微々たるものだが、子供の小遣い稼ぎとしてはまぁまぁというところ。
風属性は、基本的に好奇心が強く、根気の要る作業には向かないと言われている。特に年少のポンシオは、堪え性のない性格だ。薬草を集めろと言っても、おとなしく摘んで回るタチじゃない。そして年長のプリニオもやんちゃだ。とても面倒見のいい性格とは言えない。奉公に入って日が浅い俺だが、だんだんわかってきた。真ん中のペピト、割と苦労している。
しかし、当のペピトは飄々としたものだ。
「まあ僕は、学園行きが決まっているからね。それまでの付き合いだよ」
「ぐうドライ」
二人だけでゆっくりしゃべったのは初めてかもしれない。みんなの身の上話をじっくり聞くのも。ペピトは結構いいところのお坊ちゃんだった。実家の方針で、学園に入るまでは他の商店に奉公に出て勉強しろってことらしい。ただ彼自身は四男であり、長男は風属性、実家の商店を継ぐことはできない。卒業後は実家で働くか外で就職するかの二択なのだが、彼は行商希望らしい。
「駆け出しだと、護衛を雇うお金はないからね。自分の身くらいは守れるように、そこそこ鍛えるつもりだよ」
「ヤバい、人生設計完璧すぎる」
「ははっ、ロドリゴは独特の言葉遣いをするよね。こっちが素なのかな?」
「あっいえ、俺は」
「ふぅん、本当は一人称も俺なんだね。よかった、一日中敬語をしゃべって不労所得の話なんかして、とんでもなく変わった子供が来たのかと思ったけど、案外普通なんだ」
「えっと、ペピトさんも」
「ペピトでいいよ。今は同僚だからね。そして僕だって、プリニオとポンシオといる間はわざと乱雑な言葉遣いに合わせているから、お互い様だよ」
うわ、ヤバい。コイツ割と話せるヤツかもしれない。
「というわけでロドリゴ。僕と組まないか?」
「と言いますと」
「僕は来年から学園だ。おいそれと動けなくなるし、外の事情に疎くなるだろう。だけど人脈を作ることはできる。お互いに協力すれば、いいパートナーになれると思わないか?」
「具体的には」
「そうだな。例えば君のビジネスアイデアに対して、その方面に強い商店の子息とコネを繋ぐことができるだろう。逆に僕の方が君に要望を出して、実働隊として動いてもらうかもしれない」
「実働隊」
「例えば今日、こうして摘む薬草だね。こういうのは、学園の中で入手するのは難しいだろう。もちろんそれなりの価格を出せば、神殿を経由して手に入れることは可能だけどね」
「しかし輸送コストを考えると、大したアドバンテージにならないのでは?」
「ふふっ。神殿は薬草の出入りを厳しく管理しているからね。誰がどれだけ薬草を買ったとか、ちゃんと把握しているのさ。彼らの監視の外で薬草を得られるルートなんて、案外限られているんだよ?」
「ほへー。そうなの?」
薬草は、基本的に冒険者ギルドを通して神殿が全て買い取ることになっている。こうして森の入り口で多少摘む分にはお目溢しされているが、普通どこの商店でも買い取りしてもらえないし、冒険者に採集を頼んでもまず受けてもらえない。ヒーラーや薬師を牛耳る神殿を敵に回せば、医療行為が受けられなくなるからだ。
「まあ薬草はほんの一例さ。君は事務室にも出入りしているし、割と世情の最先端にいるんだ。君ほどの有益な手駒、そうそういないと思うね」
「ちょっと、今手駒って言いましたか」
「ふふっ、僕自身も君にとって有能な手駒だと自負しているよ。手始めに、君の言う不労所得を立ててみせようか」
割と圧の強いプリニオ、賑やかなポンシオの陰で、一番目立たなかったモブ顔のペピト。まさか彼がこんな顔でニチャつくなど、考えたこともなかった。




