↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化進行中】社畜に異世界は生ぬるい〜奉公から始まる楽勝平民ライフ  作者: 明和里苳
第14章 王都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
109/133

第109話 社交術

「はぁ。君の独特な社交術には、少々肝が冷えたよ」


「ありがとうございます……?」


 帰りの馬車の中。向かい側のパトリシオ様は、なんだか疲れたご様子だった。飲みすぎだろうか。そう思って、断りを入れて肝臓愛レバリーベを披露したところ、余計疲労された。


「ダメだ、今後は余計に君を連れて行けない。しかし、これを皆の前で使わなかったことは褒めるべきなのかな」


「ありがとうございます……?」


「しかし、今回で少しはわかっただろう。商談ってこういうこと、そして僕の仕事はこれだよ」


 はっ? 今日は釣りして飲んで、それ以外になにかあったか?


「いいかい。家具というものは、そうそう何度も買い換えるものじゃない。購買のチャンスに、購買力のある顧客というものは限られている。だからこそ、見込みのある客層と顔を繋ぐ。王都支店うちの売り上げのほとんどは、紹介だ。わかるね?」


 なるほど。ビジネスが動くのは、トップ同士の接待。それはどこの世界でも同じってことだ。下っ端がどんだけあくせく営業して回ろうと、シャッチョさん達がゴルフしながら交わす口約束には敵わない。もちろんそれが全てではないが、そういう世界ってあるよな。


「ということは、フライフィッシングは接待ゴルフってことですね?」


「ゴル……えっ?」


 なるほどなるほど。なら、適当に用具を揃え、適当に相手して、適当に負け、適当に酒を飲ませて機嫌よく帰ってもらう――


「俺、得意かもしれません」


「やめたまえ」


 被せ気味に否定された。なぜ。


「ともかく。僕の仕事のスタイルは、父上のそれとは違う。そしてそれは、どうにも君には荷が重いようだ」


「はぁ」


 うーん、川でコケたのがまずかったのか。あの時はそんなに気にした風には見えなかったが、確かに取引先がいる前で使用人にブチギレるのは外聞が悪い。内心では相当おこだっt


「違うからね?」


「えっ」


「まったく。君が早期リタイアとやらを目指していると聞いて、もし僕のような仕事の進め方が合っているなら、後継として後押ししようと思っていたんだ。案外、君のイメージするところと似通っているんじゃないかとね」


「はぁ」


「ふふっ。どうしてバネサがペピト君に執着して、金の卵の君に見向きもしないのか、今日でよくわかった気がするよ。ペネロペもバネサも、鋭い嗅覚の持ち主だ。理屈じゃない。自分の配偶者に誰が相応しいのか、驚くほど正確に嗅ぎ分ける能力がある」


 なるほど。確かにペピトなら、パトリシオ様のように学友を手駒にして販路を広げるなんて朝飯前だろう。そしてもう一人、バネサ嬢のお気に入りのピオ氏。彼もコミュ力の化け物だ。今日の飲み会に乱入した暁には、王宮に家具をフルセット納入するくらいの無双を見せたかもしれない。うーん、サークルに社畜に、飲み会の盛り上げにはそれなりに自信があったのだが、俺もまだまだだってことだ。


「違うからね?」


「えっ」




 翌日、木曜日。俺は久々にペラモス王都支店に出勤した。


「だから! お前のその適当な仕事はどうにかならんのか!」


「いやぁ、記憶力だけは自信がなくってぇ」


「記憶力だけの問題じゃないだろう! なにもかもがデタラメじゃないか!」


 ビダル氏とピオ氏がやいやいと騒いでいた。朝から賑やかなことだ。どうも先日、ピオ氏の神懸かった営業で追加購入された家具が、今日搬入されるらしい。異世界日本と違い、家具は安くない買い物だ。特に王都支店の扱う高級家具なんか、一生モノどころか修理を繰り返して孫子の代まで使うようなヤツ。というわけで、顧客によっては実際に納入される前に一度店頭で実物を確認に来られることがある。先日も、そのために来店されたのだった。


 ただ残念なことに、ピオ氏は客あしらいは神級だが、記憶力や実務能力は虫ケラレベルだ。そこで、アシスタントとして俺が呼ばれたわけ。本店でもたびたびヘルプに入れられてたからな。ニコイチ扱いされても仕方ない。


 だがしかし。


「ええい、もう一度顧客カードを見ておさらいだ! 家族構成は旦那様に奥様、それからお嬢様がお一人! 今回追加購入されるのは孫娘様の分で、お年は……ああもう、聞け!」


「だからぁ、俺そういうの苦手なんだって。ビダルがいるからいいだろぉ?」


「俺がいるからじゃない! そもそもお前、髪が跳ねているしタイが曲がっているだろう! 接客舐めてんのか!」


「ええ〜。店開くまで半刻あるし、別に良くね?」


 おっと。暖簾に腕押しのピオ氏に対して、ビダル氏がブチギレながらせっせと世話を焼いている。てっきりアウェイでガミガミ怒られて、ピオ氏がしおしおと泣きついてくるかと思ったのに。


「ああビダル、その辺にしておきなさい。どうせ言っても改善しないのだから、気を揉むだけ無駄だ。フォローだけは完璧に行うように」


「だってバレリオさん! コイツがあまりにも」


「それからロドリゴ、今日は事務室に入りなさい。ピオの分を担当するように」


「お、よっすロドリゴ。お前、本邸の方で揉まれて、ちょっとはお行儀良くなったんじゃね? ギャハハ」


「うっせぇ奥歯ガタガタ言わすぞ」


 どうやったのかはわからないが、一週間もしない間に本店に君臨してやがる。コミュ力陽キャ、恐るべし。

前話、パトリシオさんのご学友を一人削りました。

キャラ管理が面倒そうだったので……(←

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。