第102話 反応
「むう、先手を打たれたか」
そして月曜日の夕飯は、王都のとあるレストラン。大旦那様とプロスペロさんに呼び出され、昼間のような尋問の後、イマココ。
「よりによって魔女か。また大物を引き当ておって」
「ロドリゴはまだ成人までに時間がある。その間に心変わりすることもあるだろう。ゆっくり考えなさい」
「あ、まあ、はい」
二人の反応は、旦那様たちとそう変わらなかった。
「しかしバネサに関しては、孫娘という欲目を差し引いても難しいというのは承知している」
「だが逆に言えば、あのクセの強さを逆手に取って上手く采配する婿がいれば将来は安泰だ。ロドリゴにはその器があると思ったのだが」
いや、無理無理。俺には無理ですから。
「てか、ペピトみたいな腹黒……如才ない人物の方が良いのでは」
「いやいかん。あのような狡猾な男には、バネサもペラモスも任せられん」
おっと。大旦那様、ペピトのことよく知ってんな。元奉公人だからということもあるが、バネサお嬢様がご執心みたいだから、改めて調べたのかもしれない。
「いや、それこそペピトはパトリシオ坊ちゃんにそっくりだろう」
「プロスペロ、なにか言ったか」
「いえなんでも」
最後にボソリとつぶやいたプロスペロさん。てかあの柔和な現当主、ペピトと同属性なのか? こっわ。
翌日から、俺は支店ではなく邸宅の方に出勤することになった。
「うっは。奥様の下で働くとか超悲惨」
「うるさいですよピオさん。バネサお嬢様に推薦しときますよ」
「ウヘァ無理。てか、俺だってフツーに仕事めんどっちィけどよぉ」
しかし言葉とは裏腹に、彼の表情は明るい。
「オース、ピオ! 出勤早ェな!」
「オッスおやっさん! 昨夜はどーも!」
一昨日キーンのスキルを取りに行って、そのまま大量のオジ友を作ってきたピオ氏。今朝も通りで出会った商人から次々と声を掛けられ、昼も夜も食事に誘われているらしい。まさにコミュ力オバケの陽キャだ。
「んじゃ、昼の鐘に集合な。アイツらにも声掛けといたし、遅れんなよ!」
「わかってますって! ……じゃあな、ロドリゴ。せいぜい頑張れよ!」
くそっ。せいぜい頑張れはこっちのセリフだ。バレリオ氏もビダル氏も昨日の昼からちょっと大人しいみたいだが、営業ミスっても知らねぇからな。
支店の前でピオ氏と別れ、重い足取りで邸宅へ。最初に来た時は二度と来るかと思ったのに、ここがメインの職場になるなんて。
しかし。
「おはようございますロドリゴさん、中で奥様がお待ちです」
「あ、おはようございます……?」
昨日の朝、俺を一歩も屋敷に入れなかった偉そう従僕が、恭しく頭を下げる。誘導されるままついていくと、そこは華やかなサロンだった。
「ご機嫌よう、ロドリゴ。昨日ぶりね?」
「あ、おはようございます……?」
今朝はフツーの奉公人仕事、つまり掃除や洗濯、野菜の下拵えをするつもりでフツーの古着を着てきたワイ、席を薦められて動揺を隠せない。なんこれ、ドッキリか?
「平服でいらっしゃいと伝えましたのに、そそっかしいですこと。まあいいわ、後で着替えていらっしゃい。許します」
「はぁ、ありがとうございます……?」
「それでは今日から、マナーの講習ですわ。あなたには、バネサに相応しい品格を身につけてもらわなければなりません」
「はっ?」
「昨日の今日ですから、講師の手配は間に合いませんでしたわ。ですので、今日は私みずからレッスンをして差し上げますわね?」
「へっ?」
「は、ではありません。姿勢を正しなさい!」
「ヒッ」
奥様の後ろに侍っていた厳しそうなオバサンが、ピシャリと声を上げる。超こえぇ。俺、これから一体どうなっちまうんだってばよ。
2026.08.04
皆様、いつもご愛読ありがとうございます!
おかげさまで、いつも温かいコメント、リアクション、誤字報告などに支えていただき、日々執筆活動の活力とさせていただいております!
特に誤字報告につきましては、いちいち指摘するのも面倒でしょうに、わざわざお手間をかけて教えてくださって、本当に本当に助かっております。
お恥ずかしいことに、現在膨大な数のご指摘をいただいておりまして、少しずつ修正してまいりますね。
温かいお心遣い、心から感謝申し上げます!
いよいよ暑さが本格的になってまいりました。
どうか皆様、健康第一で素敵な夏をお過ごしくださいね!




