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第十九話「迷宮胎動 三」

この人は一体何を言っているんだろう?

俺に同族の血?妖精族(エルフ)の血が流れてるって?

…いやいやいや!そんなことあるわけない!

俺は人族と星還族のハーフ!そんな別の種族の血が見つかって誰の子かわからなくなるなんて飛んでもないN〇R展開あってたまるか!(この間約0.1秒)


シノンの驚く程速い誰かが「俺でなきゃ見逃しちゃうね」なんて言いそうな高速思考をもってしてお未だ冷静にはなれていない。

それは彼の表情から見ても明らか今シノンの顔は一切理解の追い付かない激重情報に溶け切っている。

脳が理解を拒み過ぎて



「ふぇぇ??」



なんて言っているレベルだ。

同行しているジオとジャンヌに関してはシノンの種族なんてそもそも知らないので何故彼がここまで同様しているか理解できずに首を傾げている。



「どうしたのシノン?」

「えぇ?おれぇ?」

「駄目だ完全に壊れちゃった」



頭は回っているはずなのに理解できない程の動揺に当然ジオの声は届くわけがなく気の無い返事が返って来る。

その様子に門番は自分が何かしてしまったのではないかとあやふたしている。

シノンは溶け、何もわからなジャンヌは呆け、ジオはシノンの胸倉を掴みぶんぶんと体を揺らし、その様子を心配する門番、はっきり言ってカオスだ。


あまりに長い時間シノンが戻ってこないのでジオは大きく振りかぶりシノンを叩く…その瞬間意識を取り戻したシノンが自信へ向かう平手に反応しジオの顔面にカウンターを叩き込んだ。



「ぐへぇ!!

「あ、ごめん」



シノンの拳がジオの顔面を弾きその場に伏せさせた。

ジオの頬にはくっきりとシノンのグーパンの跡が残っていた。

シノンが大丈夫かと心配してジオの顔を覗き込むと若干不機嫌そうにジトっとした目でシノンを見返すジオと目が合った。



「…」

「ごめん無意識で」

「タイミング悪すぎだろほんと」



痛む頬を抑えながらジオがゆっくり体を起こす。



「それでさっきのはなんだったのさ」

「いやーあまりの驚きに処理が追い付かなくて」

「俺の発言が其方に無礼を働いたのだろうか…?」

「いえ、そじゃなくて」



自分でもわからない自分の問題を他人に相談してどうにかなるのか?

俺の父さんの祖父母のどっちかがって可能性も有り得るし可能性は無限だなほんとに。



「さっき僕にも同族の血がって言ってましたよね?

 それっどういう意味ですか?」

「そのままです。妖精族は同族との同調が強く近くにいれば感じ取れます。

 あなたにも微弱ではありながらそれを感じたのです」



嘘偽りのない顔で説明する門番にシノンは疑いを向けはしなかった。


嘘じゃない。でも信じたくない。

俺の中の家族がえげつない形で汚染されてしまう!



「僕の両親は星還族と人族です。妖精族の血はないはずですが…」

「其方から感じる同族の気配は少ない。もしかすると遠縁に妖精族がいるのでは?」

「なるほど、今はそう思っておきます」



シノンが納得したところで案内は再開された。

しかし目的地へ向かう途中でもシノンの頭の中は先ほどの話を永遠と反復していた。


妖精族の血が、俺に…遠縁なのか、それとも別のなにかがあるのか。

あー!次から次へと考える事を増やさないでくれ。

ただでさえダンジョンとジャンヌさんの件で頭回転させまくってんのに…


何一つ解決しないまま問題だけが積み重なっていく現状にシノンは頭を抱える。



「さて着きました。ここが我々の居住地です」



長く続いた森の道の先に出た瞬間、そこには大きな街が広がっていた。

木材で作られた建物に大勢の妖精族たち、ミラーナとは別の衝撃がシノンたちを震わせた。


ここが常若の森(コル・ナ・ノーグ)、本当に妖精族ばっかりだ。

少しは観光客らしき人たちがいるけどそれもたった数人程度、それにあの奥にある大きな建物他のと作りが違う。

宮殿のような見た目にミラーナの建物で使われていた白い石材かなにかを使った壁、あんな素材ここにあるのか?


シノンが物珍しそうに奥の建物を見ていると門番が察して説明を始めた。



「あれは我らが王の住む場所、ギルドの依頼があるのでしょう?

 さ、群衆が気づきだしたので向かいましょう」



周りの妖精族がシノンたちに気付き段々と視線が向けられる。

門番は人だかりができるのを避けるために直ぐにでも宮殿に向かうことを提案したのでシノンたちは提案を呑んだ。


物珍しいものを見る顔じゃないな。

俺たちを見てるんじゃなくて武器を見てる。警戒されてるな。



「あそこに王様が…豪華な場所ですね」

「妖精王ってどんな方なんですか?」

「王は滅多に顔を見せない人です。それこそ他種族には尚更、そしてとても聡明なお方であり妖精族を誰よりも愛するお方です」

「いい王ですね」



民を愛し、民にここまで愛される。いい王じゃないか。

やっぱりいい統治をするなら小規模の方がいいんだろうな。

下手に大きくしすぎるとすぐに崩壊するし事実そんな国は幾つもあった。

その点妖精族の他種族とあまり関わらずに自主族だけで完結する在り方は組織としては正解なのかもしれない。

デメリットとして鎖国時のの日本みたいになりそうだけど…


と色々考えている内にシノンたちは宮殿の目の前まで着いた訳だが、シノンは宮殿ではなくそれに至る道に驚いた。



「階段長っ!?」

「ここを登ればすぐですよ」

「近くで見ると高いですね…」



ジャンヌは宮殿を見上げるように上を見ながら少し遅れてシノンたちに着いて行く。


階段から見上げると宮殿が見えなくなるほどに長い。

だがあまり新しい物というか新鮮味はない。そういえば日本の神社とか寺ってこんな感じでものすごく長い階段がセットだよな。


シノンたちは黙って階段を一段一段歩み上る。

それは決して気不味いなんてことではなく、階段の上、宮殿の中から感じる何かの気配を感じ取っているからだった。


階段を上る度に感じる。上にいる存在がどれほどなのか。

この圧にも感じる魔力の感じ、俺たちの存在に気付き試しているにだろう。

まるで山の様な荘厳さに川のような緩やかさ、魔力にこんな感覚があるなんて…まるで凝縮された自然が目の前にあるみたいだ。


自身等に向けられる魔力に怯まず階段を上り切った時、そこには巨大な石柱に絵の彫られた壁面が特徴的な宮殿が建っていた。



「ここが宮殿です。私はここまでになりますのでこのままお進みください」

「ありがとうございました」

「ここを真っすぐ行けば王は追われます。

 迷われたとしても、魔力の強い場所に行けば会えるでしょう」

「わかりました」

「それでは」



門番は別れを告げて階段を下っていく。

それを見送ってからシノンたちは宮殿へ足を踏み入れる。



「近くでは気付かなかったけどこん何壁面に絵が描かれてるんですね」

「どれも自然の絵ですね」



中の壁にも絵は彫られていた。川から水を汲む人の絵、木と戯れる人の絵、大地で眠る人の絵、自然とある人が全ての壁画を通して描かれている。



「これは妖精族を生み出した妖神の絵だね」

「妖神?」

「八神の人柱、妖精族を造った最初の妖精だよ。

 其はただ自然を愛し、犯さず、怪我さず共に在り続けた」

「それをこの壁画で表してると」



八神か…確か前本でみたけど「神話はな~」と思って創世記ら辺は飛ばしたんだっけな。


そこから宮殿のことを歩くこと数分、とてつもなく広い空間に出た。

太陽の光が程よく入り、涼しく心地いい風が吹く空間、壁に根を張った巨木の果てを探そうと目で追うと、その先に木で作られた玉座に座る誰かの影が映された天上から降りる白い布があった。



「よく来たな」



随分若い声、当然か妖精族も長命種だもんな。

それにしてもやけに高い声だ。声変わり来てるのか?



「シノン」

「ああ、あの人が…」

「妖精王様!」

「その通り!僕が妖精王オベロン様だ!」

「ぶふぉ!?」

「どうしたのシノン!?」

「いやなんでも…」



突然の情報に噴き出したシノンは必死に隠して平静を装う。


また知ってる名前かよ!しかもオベロンだって!?

知略と策略に長けた妖精王にして善悪にころころ転ぶ精神性をもった西洋の伝承の登場人、物…

のはずなのになんか見えるシルエットが小さくないですか?態度もやけに威張っててクソガキみたいだし…



「聞こえていたぞギルドからの話だな」

「はい。ダンジョンの攻略についてまずこちらの依頼書を」



そう言ってシノンは手に持っていたギルドから受け取った羊皮紙を前に出す。

どう渡すのか分からずシノンがその場に立ち尽くしていると玉座から一本の木が伸び羊皮紙を巻き取っていった。

玉座から動くことなく回収した羊皮紙の内容を閲覧するオベロンはふんふんと読み流している感満載の相槌を着く。



「まぁ要求は理解した」

「では」

「駄目だ」

「そんな…!」



即答かよ。まそりゃそうだろ。

じゃなきゃ俺たちを派遣するまで話し長引かないしな。



「そちらとしても引けない理由があるんですよね」

「話が早い。子供なのに賢いな」



なんだこいつ鼻に着くな。

まぁいい。ギルドが言ってた内容としては武装している他種族が森に入ることに住民が良い顔をしないからだっけか?

最初に聞いた時から考えていたがそれだけじゃないだろう。

自分たちの危険も関わってるのにしては問題が軽すぎる。それに自分たちで攻略まではいかずとも探索すらしないのはおかしい。



「ここまで足を運んだ褒美に教えてやろう。

 あのダンジョンは、生きている」

「生きてる?」

「その通りだ。あのダンジョンは命を持っている。

 その理由、わかるか?」



そんなこと聞かれてもと言いたいが、命を持っているダンジョンか。

ジオは遺跡がダンジョンへ変化することを異形化といっていたそれは別の何かに変化することを意味している。

しかし何故異形なのか。単純な変化ではないことの裏付けではないのか?

そう考えるとダンジョンになるという事自体が何かに変化する前段階ともとれる。

では何故その現象が起こるか…ここまで来てそこだけはわからないな。


これまでの情報をまとめるシノンだが、最後の最後で壁にぶつかってしまい手詰まりだと諦めた。



「わかりません」

「なんだつまらないな。まお前の様な子供では当然か。

 仕方ないこの僕が丁寧に教えてやろう」



一回殴ってはダメだろうか?

ついでに顔面さらしてやろうかあのクソガキ!

待て落ち着け、イライラするな笑顔をはがすなよ俺、この場を台無しにするわけにはいかないんだ。



「正解は中にある遺物があまりに莫大な魔力を持っているせいでダンジョンと言う箱が魔物に変換して抑え込めずにいるからだ」

「ジオさん、それのなにがいけないんですか?」

「一つの空間にあるべき魔力量は決まっていてそれを超えると毒にもなる。

 それがダンジョンで起こると、()()()()()()()()()()()()()()()()んだ」

「賢いなそこの生跡師(メイガス)

「いえ、僕は知識だけです」



ダンジョンの魔物への変化、想像ができない。遺跡自体がゴーレムのように変形するのか?

それにしてもそれの何が攻略しないことに関わっているんだ?


シノンの疑問に答えるようにオベロンは手を叩き話を切り替える。



「さて本題に移ろうじゃないか。

 僕たちがなぜダンジョンに手を出せないのか。それはずばり最奥にいる魔物が原因だ」

「最奥の魔物ですか?」

「そう!その様子ではダンジョンについて知っていることは少ないな。

 生跡師、説明してやれ」

「いいかい?ダンジョンの最奥にいる魔物とはダンジョンボス、遺物を守る守護者なんだ」



ダンジョンボスか、なるほど確かにダンジョンとセットの存在だ。

説明してくれるのは嬉しいが早く説明して欲しいもんだな。



「そしてダンジョンボスはダンジョンが魔物になるときの姿形の核となる」

「それはわかる。で何故それが理由に?」

「実は僕たちも探索はしたんだ」

「したんですか!?」

「そして最終的に攻略の着前まで行った。しかしダンジョンボスを倒すことなく僕たちは帰還した」

「話が見えませんね」



さっきから一体何の話をしているというんだ。

探索して攻略しかけたのにそのまま帰って来るってどういうことだ?



「ダンジョンボスは二体いる。正確には一体だが、表と裏のボスがいるんだ。

 …回りくどい説明は止めにしよう。

 結論を述べる。ダンジョンの最下層で僕たつが見た物は遺物と卵だ」

「卵ですか?」

「その卵は今は眠っていたが表のダンジョンボスを倒すことで孵化するようになっていた。

 どうにかボスの攻撃を掻い潜りながら卵について解析した結果で孵化させ倒せずダンジョンと融合させるならと決心し僕たちは攻略を諦めた」

「その結果とは…?」



全員が息を呑むほどの緊張感、見えないはずなのにオベロンの眼光は鋭くシノンたちへ告げるように向けられた。



「この国の者なら誰もが知る魔物、タラスクの幼体だ」

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