Quiet talk 副騎士団長の憂鬱
※番外編です
副騎士団長は複雑な思いを抱えていた。
数十年前――彼が副騎士団長に任命されたばかりの頃、国王の側近が“禁忌の儀式”の文献を発見したという噂を耳にしたのだ。この世界では古くから有名な話である。かつて、数千年以上前、禁忌の儀式は各国で横行していた。
制限がなかった当時、各国は自国の戦力を増やすため、戦争に勝つため、敵対国を葬り、領土を奪い、自国の支配を広げるために儀式を行った。しかし、その結果、世界は滅びかけた。草木は枯れ、生物たちは絶滅寸前にまで追い込まれ、世界は荒廃した。神々は怒り、この“異世界召喚”に制限を設けたのだ。
熟練の魔法使いたちが数百名で儀式を行わねばならないこと
儀式に参加した魔法使いたちは呪いを刻まれ、数日後には死ぬこと
各国は、せっかく手塩にかけて育てた戦力を失うことを恐れ、異世界召喚を次々とやめていった。異世界召喚が成功しても、召喚された者たちを育てるには時間がかかり、その間に他国に付け込まれ、国が滅ぶこともあるのだ。
(どうしたものか…)
副騎士団長は執務室で書類を整理しながら悩んでいた。だが、真夜中にも関わらず、ノックの音がした。
「入れ」
冷たい声でそう告げると、メイドがワゴンに乗せたティーポットとコップを持って入ってきた。
「失礼致します」
「なんの用だ?頼んだ覚えはない」
副騎士団長は冷たく返すが、メイドは一切気にせず、飲み物を注ぎ渡してきた。しばらく沈黙が流れた後、メイドは言った。
「副魔術長からの伝言です」
副騎士団長は書類を書く手を止め、ピクッと反応した。
「“決行は六日後の丑の刻……我々の最期を国王様に見せつける時だ……”とのことです。それでは失礼致します」
そう言ってメイドはお辞儀し、静かに去った。副騎士団長は深いため息をつく。
「やれやれ…やるしかないか…」
副騎士団長は王宮に潜入しているスパイの存在を知っていた。当たり前のことだ。不審者を始末するのも騎士団の役目。しかし、あまりにも多く、通常業務では処理が追いつかない。闇ギルドの関与も疑わしい状況だった。
「もう…この国は終わりか。ならば、革命を起こす者たちもいるかもしれんな……」
騎士団の人員も国王に不信感を抱き始めていた。それは当然のことだった。副魔術長の立場からすれば、その気持ちも理解できる。長年支えてきた国王に裏切られたのだから。それに――あのメイドの件もある。
副騎士団長は静かに覚悟を決めた。
もう後戻りはできない。自分たちの使命、王国の未来、そして国家に潜む闇の影――すべてを背負い、彼は次の一手を考え始めるのだった。
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