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エピローグ
春になった。
農村から、二通目の手紙が来た。
タヌキの字だった。几帳面な字ではなかった。でも読めた。
「ルールを変えた。最初に作ったものから、三箇所変えた。なぜ変えたかを書いた。記録してある」
それだけだった。
キコは手紙を読んで、算盤を一度だけ弾いた。
カチ、と鳴った。
変えた。変えた理由を書いた。それだけでいい。それだけが、続くということだ。
その日の昼、ジグが四辻から戻ってきた。
「腸詰め、常連価格になった」
「何日かかった」
「十二日だ」とジグが言った。少し得意そうな顔だった。「店主が俺の名前を覚えた。それだけだ。それだけで値段が変わる」
「それが既得権の始まりだ」とキコが言った。
「分かってる」とジグが言った。「分かった上で食う。うまかった」
ルルが「いいな」と言った。「わたしも行く」
「お前は初日から常連顔ができる」とジグが言った。「才能だ」
ルルが笑った。
キコは算盤を見た。数値が流れている。帝都の熱量の流れ。腕輪の光の分布。腸詰めの値段の変動。農村から来た手紙。変えた理由が書いてある記録。
全部、続いている。
窓の外で、帝都の腕輪がバラバラに瞬いていた。昨日と同じ光だった。昨日と少しだけ違う光だった。どちらでもあった。
算盤を閉じた。
また開く。




