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ワイン事件(勝手に俺が名づけた)の翌日、三千重が謝った。
「ごめん」
「・・・何でだ?」
「だから、昨日の・・・」
「だから、何でなんだ?」
「え?」
「だから、・・・何でお前が謝る?」
「あ、いや、そのぉ・・・えっと・・・ごめん」
「・・・謝るな」
「あう、ご、ごめん」
「あ・や・ま・る・なッ」
「分かってるけど・・・」
「分かってるなら謝るな」
「・・・昨日のこと、・・・怒ってる?」
「あれはあの女が悪い」
・・・別に昨日は三千重に怒りを抱いたわけではない。
あの女に怒っただけだ。何で三千重が謝る?
「・・・ごめん」
「・・・・・・」
俺は何も言わなかった。
・・・三千重の嫌なところは、すぐに謝るところだ。
「・・・暇だ・・・。・・・いっそ、・・・ノストラダムスの大予言が実は今日でしたぁ・・・とかねぇかなぁ・・・」
・・・ピーンポーン・・・。
「はい、芳養房です。・・・は、はい? ・・・わ、分かりました・・・」
「誰だよ? 休日に押し寄せてくるのは・・・」
「茂、・・・警察よ・・・」
「・・・え? 今なんて?」
「署までご同行願います」
「それは・・・任意同行って奴か?」
「ええ、そういうことです」
「・・・嫌だと言ったら?」
「面倒なことになりますね」
間髪いれずに返答され、・・・仕方なく行くことにした。
『現在、芳養房 茂さんが署に任意同行されています』
「茂さん、今のお気持ちは?」
「ノーコメント」
「・・・誰ですか? この人」
「いえ、・・・ご存知ではない?」
「全く知りませんが、誰ですか?」
「えぇ、少々お待ちください」
途中コーヒーを女性が持ってきてくれた。
飲もうとすると・・・奥からさっきの男性警官の怒声が響いた。
・・・おっと、ようやく戻ってきたようだ。
「大変申し訳ありません、DNA鑑定の調査結果を誤っていたようです、本当にすみません・・・」
「無罪放免って奴か? あぁ、びっくりした。ノストラダムスも天変地異もこりごりだぜ・・・」
「まさか、あの予言、信じてたんですか?」
「えぇ、・・・俺は退屈で死んじまう体質なモンで」
「じゃあ、退屈で死んじゃう貴方に今起きている怪事件について話してあげましょう」
「どんな事件ですか? 魔王降臨の儀式とかそれっぽい感じだったりしちゃったり?」
「ビンゴ。詳細についてですが・・・」
「け、警部!! 言っちゃいけませんよ!!」
「おっと、東警部補殿、これはこれはどういったご用件で?」
東という女性は捜査に関する情報を漏らすなと男性警官に言った。
「第一、この人は誰ですか!? マスコミ関係者だったら・・・あれ? どこかで・・・見たような気が・・・あ゛あ゛あ゛ああぁッ!!」
「およよ、東殿ー、ご乱心ですか?」
「あ、あんた芳養房 茂じゃん!?!」
視線が一気にこっちを向く。
「あ、あはは・・・・・・さいならッ!!」
「『行かせないわよぉおおお!!』」
これぞまさに鉄のカーテン!!
「・・・な、何をしたらここを通してくれるかな・・・はは・・・」
「『握手』」
満場一致で署内が握手会会場に・・・。
「あの、すみませんね・・・、・・・どうしてこんなことになってしまったんでしょう?」
「東殿? 原因は貴方ですよ」
「あの、・・・すみませーんッ!!」
・・・行きやがった・・・。
「うちの奴がすみませんね。しっかり注意しておきます」
「どうせなら、情報を教えてください」
「情報? ・・・ああ、怪事件についてですか」
・・・あれは、2ヶ月前から始まったんです。遺体を発見したと通報があり、現場に行くと・・・・・・ホトケ―――――遺体を中心に血の円陣が書かれていたんですよ。
さらにそれから3週間すぎた頃、再び遺体が見つかりました。・・・これも、ホトケを中心に円陣が・・・。
そして、一昨日・・・この近辺の山林の中で遺体が発見されました。
・・・「やはりこのホトケの回りには・・・」
「円陣・・・ですか」
「何の円陣かは特定できませんが、何らかの儀式殺人であることは推測されます」
「・・・死因は?」
「全員、首に擦過傷があることから絞殺されたと推定されます。血液を採取するために手首の動脈を切断されていますが、おそらく死後に・・・」
「・・・名探偵じゃないんで俺にはなんとも言えませんね」
「あなたはテレビのワイドショーでも見ていてください。すぐに名探偵・目白 探吉が解決して見せましょう」
「あれ、警部じゃないんですか?」
「警部兼、探偵です」
「は、はぁ・・・」
『たった今芳養房 茂さんが署から出てきました。情報によりますとDNA鑑定のミスだったことが判明しました』
「茂さん、今のお気持ちは?」
「ノーコメント・・・疲れましたね」
「えっと、どうだった?」
「特になし。・・・疲れた」
ホッと三千重はため息をついた。
「・・・で、やっぱり暇なんだよな」
「勉強でもしてたら?」
「ヤダぜ、やっぱり大予言とか成就しないモンかねぇ・・・」
・・・ブゥン・・・・・・
「・・・なんか今ライトセイバーのような音が・・・」
「え? どんな音よ?」
「だから、ライトセイバーをだなぁ・・・」
・・・ぅゎぁぁぁぁぁあああああッ?!
「・・・って、ぎゃああぁッ!?!」
ドスンッ!!
・・・空から降臨したのは、恐怖の大王でもなければ、割れた空のカケラでもなかった。
空から降ってきたのは・・・・・・一人の、少年。
To be continued...