#:18
『よくも家をめちゃくちゃにしてくれやがったな。・・・さ、跪いて謝れば許してやる』
あいつは嘲笑すると、言った。
『そのままそっくり返してやる。泣いて謝っても許さないぜ』
・・・あいつも、口だけは達者なようだ。だが、
『・・・俺に勝つには5年ほど早かったな』
『うるさいうるさいッ、見てろよッ! 絶対にあんたに勝ってやるからなッ!!』
そう言うと、奴は俺の懐へと跳びかかってくる。跳ぶというよりは、飛ぶというほうが正確だが。
俺はそれをよけ、思いっきり殴りつける。
『グゥッ・・・!! ・・・き、かねぇよッ・・・!』
そして、俺に思いっきり突撃した。その勢いで、俺は飛ばされる。が、なんとか持ちこたえた。
『どうしたどうした? 今さっきまでの勢いはなんだったんだ?』
『・・・で? 本気かよ?』
俺はそう尋ねる。奴の眼光が鋭くなる。
『・・・まさかあんた・・・手加減、してるのか?』
『いいや、・・・手加減はしてないぜ。手を抜いているだけだ』
これには奴も怒る。
『なめてんじゃねぇよぉおおッ!!』
その勢いは、今さっきと比べ物にならない威力だ。回避すると、・・・あっちゃぁ、壁に穴があいた。
『お前が負けたら、弁償だぜッ!!』
『ふざけるなッ! 本気を出せッ!! どこまで俺をなめれば気が済むんだよォッ?!!』
どんどん、威力も強まる。・・・電気がだんだん消えていく。・・・そろそろ、本気を出すとするか。
そして、完全に電気が消えた。
『くそぉ・・・どこだ、・・・どこに行きやがった・・・?』
そこにいる。・・・分かる。目なんてものは見るためのものでしかない。感じろ、体と心で。そして、俺は爪をたて、思いっきり引き裂く。
『ぎゃッ?! そこにいやがったかッ!!』
奴も応戦するが、俺はそのときにはすでに避けている。だから、暗いところでは有利なのはこっちだ。
・・・おかしい。・・・奴の動きが止まった・・・。俺を探すのを諦めたか・・・?
『・・・なぁ。・・・いるのなら聞け。・・・チャージの、もう一つの効果をよ』
・・・もう一つの、・・・効果?
『電気を熱エネルギーに変換して燃焼するのが一つだ』
それは知っているが、もう一つは・・・。
『電気を、・・・そのまま放出するんだよッ!!』
そう言うと奴は、口を開き、電流を吐き出す。それは俺の体擦れ擦れを通り、壁に焦げ目をつけた。
『そこにいたか。これで、形勢逆転だぜ?』
奴は、もう一度口を開く。・・・どこに来る?右。いや、左か? 駄目だ、落ち着け。落ち着くんだ。ほら、・・・冷静に―――。
だが、奴はそれを許さなかった。俺の体を電撃が貫く。
『かッは・・・』
体が痺れる。
『どうだ? この一撃は痛いだろう・・・?』
『・・・いや・・・違う・・・』
『なッ・・・?』
こんな電撃は痛くない。・・・むしろ、三千重の平手の方が痛かった。だから堪えない。
『なら、もう一度ッ!』
『ぐ、ぐぅッ・・・!』
再び体を重い電撃に貫かれる。
『・・・どうしたよ、もう終わりか?』
『くそッ、くそッ!! これはッ! これならどうだッ! ほらッ! 早くッ! 俺にッ! 負けを認めろッ!!』
何度も貫かれる。その度に、俺は気を失いかけ、痛みに現実に引き戻される。・・・苦しい。だがな、こんなガキにはよ、嫌と言うほど力の差を見せつけねぇと気がすまねぇんだよッ!!
『はぁ、はぁ・・・もう、電撃は、残ってねぇよ・・・。どうだ? 早く俺に屈服しやがれよ・・・』
『・・・今ので終わりか・・・。つまんねぇの・・・』
俺は目の前に手を伸ばす。・・・そして、その手に光が集まっていく。
『な、なんだよ・・・?』
『俺は変わってるんだ』
『な、何がだ・・・?』
『・・・俺たち血族は、前の世代から夢想武具というものを受け継いでいるんだ』
『・・・夢想・・・武具・・・』
『それは、一定の形を持たない、他の世代にはない、武具だ。俺の親父は、矛だった。・・・そして、俺は・・・』
光を掴む。そして、一振りの剣を取り出した。
『この、双剣だ』
『・・・双剣? 片方しかないじゃないか』
俺は笑って言った。
『俺たちは双子だ。だから、一人一振りだ。それに、』
俺は一気に踏み込む。
『・・・・・・お前らは一振りで十分倒せる。・・・残念だったな』
峰で腹を打つ。・・・奴は、崩れ落ちるように倒れ、元の姿に戻る。・・・俺は、深呼吸し・・・俺に戻った。
「・・・くそぉ・・・何で・・・なんで俺は、お前に勝てないんだよぉ・・・?」
「お前は、・・・弱いんだ。・・・自覚しろ。そして俺の力に嫉妬するな。鍛えれば勝てる」
敵の俺に教わったのがとても気に障ったらしい。
「馬鹿野郎ッ! そんなの言わなくても分かってるッ!!」
・・・駄目だ、こいつ。
「ってわけで、方舟は諦めろ。そんでもって、弁償するまで帰さないぜ」
「・・・もうお前の顔を見るのもいやだ。帰るッ! お前とは永遠に会いたくないぜッ!!」
そういうと、彼は再び竜になり、空高く飛んでいった。
「・・・弁償して帰れよッ! バカヤローッ!」
つい叫んでしまい、・・・虚しくなった。
「・・・はぁ・・・だいぶ壊れちまったな・・・」
俺は、一度外へ出て、外見をみる。・・・外から見れば、それほどでもない。玄関と屋根はともかく。
・・・サイレンが聞こえる。警察か・・・。
「おやおや、家がぼろぼろみたいですねぇ、芳養房さん」
「め、め・・・白でしったけ? 黒でしたっけ?」
「白です。・・・何があったんですか?」
「どうもこうもないです。いきなり巨大トカゲと巨大ガですよ? 何かのドッキリですか?」
目白さんは、少し笑うと言った。
「そういえば、奥さんはどうしたんです? 買い物ですか?」
あ、そうだ・・・。三千重はもうすぐ戻ってくると思うが・・・。
「大丈夫だったァ?」
「ほら、今帰ってきた」
「・・・あ、今さっきの刑事さんか。ほんと、度々すみません」
「今さっき? はて・・・この前ここへ来た時以外にあなたに会った覚えはありませんが・・・」
「ほぇ? 会ったというか、ぶつかったじゃないですか! 覚えてないですか?」
だが、それでも目白さんは横に首を振る。少し三千重の頭から煙が出ているような・・・。
「・・・そういえば、あの紙の鑑定結果、出ましたよ。・・・あれは間違いなく被害者の血液でした」
あの紙・・・姉御に送りつけられた魔法陣の書かれた紙か。ほとんど忘れかけていた。最近はその事件に関するニュースもめっきり減った。・・・未解決事件の仲間入りか?
「・・・あなただから、言えます。昨晩、・・・また一人・・・」
「なッ―――?!」
何だそりゃ? また被害者が増えたのかよッ?! ちきしょう、あと何人殺せば終わるんだッ?!!
「・・・茂?」
「・・・あいつらはどうしたんだ・・・?」
「あ、帰っちゃったよ?」
「・・・なら、いいんだ」
俺は、警察の奴じゃない。・・・彼らを信じて、解決を待とう・・・。
風呂から上がり、体が乾ききった頃、電話がなる。
「・・・誰からかな?」
私は受話器をとる。
「はい、もしもし?」
『よう、姉御』
「・・・あのさ、その姉御っていうの・・・」
『・・・魔法陣の紙、あったろ? あれ、被害者の血だったって分かったぜ』
「・・・そう」
私はテレビのスイッチを入れる。
【・・・在映像を確認し、それが本物か調べています。首相官邸には再び投書があり、内容はまだ公開できないようです。・・・木村さん、どう思います? ・・・えぇ。・・・これは、日本という国に対する宣戦布告、・・・いえ、全世界への、と思われますね・・・】
『・・・今、特番やってるよな? ・・・国家に対する何とかって』
「え、うん・・・」
【現場は今どうなっているか確認したいと思います。那岐さん? ・・・はい、那岐です。芳養房 茂さん宅は外見は普通のようですが・・・と、な、何するんですがッ?!】
カメラが揺れる。なにこれ? で、映像が鮮明に映ると、なぜか茂が出演。
【・・・俺が、この家の主です。そんでもって。なにがあったかを思いっきり見ました。・・・っと、茂さん本人が登場しました。茂さん、何があったか説明できますか? ・・・あぁ。・・・虫を義兄さんが撃退して、それであのガキ・・・もとい少年が竜になって、それで逃げ出したんです。で、俺は三千重と方舟が家にいるのを思い出して、義兄さんと蒼真・・・弟と一緒に家へ向かっていると、・・・巨大なトカゲが家に這い蹲っていて、家を破壊し始めたんです。・・・いや、あれはトカゲなんかじゃない。・・・背中には翼が生えていた。そうさ、ありゃ・・・翼竜でしたね】
「ちょッ、何言っちゃってるのよッ?!」
と、ブツッと電話が切れる。
「切りやがったわね・・・」
【・・・それで、なんとか全員避難して、・・・戻ってきてみれば、いなくなっていました。・・・はい、ありがとうございます。どうやら映像と同じことを言ってるみたいですね・・・それにしても、人が竜になるとは、・・・信じられませんね。何かのドッキリカメラでしょうか?】
もうめちゃくちゃ。今さっきまで国家の話かと思えば少しファンタジックな話になってきてる。私は、頭がパンクしそうになってテレビを消す。
くたびれた私は、そのままソファーに寝そべり、・・・小さな寝息を立て始めた・・・。
To be continued...
・・・何これッ?! ファーストインプレッションがそれ。
自分も亜麻弥みたいに頭がパンクしそうです。特にラストのテレビ!
でも、このフラグが立って初めてストーリーが成立しますから・・・。
いや、自分でも分かってます。今回は頭がくらくら。やっぱ夜はきついです。
というわけで、少し執筆を休憩して、登場人物紹介を投稿します。
でもそれに気力を費やしたら・・・もうおしまいですよね(苦)