5、令嬢たる者奇襲くらいできなくてどうしますの
ふと目を覚ますとそこは見慣れない木目調の天井でした。
そして何故かふかふかのベッドのにいました。
私が何処にいるのか分からなくて目だけで辺りを窺うと、そこは小さな小屋の様でした。
そして、私の枕元には見たことのない美形がいました。
あ、いえ、気を失う前に見た方ですね。私を物理で揺さぶった人ですわこの方。
私が起きたことにはまだ気付いていないようで、乙女の寝顔を盗み見る不審者と判断した私は、先手必勝で勢いをつけて起き上がり、渾身の頭突きをお見舞いして差し上げました。
「っ―…」
相手方が悶えてのたうち回っている間にベットから飛び降り、手近にあったキャンドルスタンドの先端を突き付けて相手の動きを封じることに成功しました。
(危ないですから良い子は真似してはいけませんよ)
「何方が知りませんが乙女に無体を働く方は等しく制裁してしまえ。と私昔から教えられてますの」
「は、ちょ、ま、誤解で、やめ、うあぁあ」
私がキャンドルスタンドでさわさわと男の脇腹を(未遂だったので)くすぐりの刑を執行中にふと既視感を感じました。
この泣き方を私は知っている。と。
それは、そう、先程鱗をぺろりと頂いた時に聞いた…
「もしかして旦那様ですか?」
キャンドルスタンドを床に置きそっと顔を覗き込む。
綺麗な黒銀の瞳から零れそうな涙に黒髪の男。確かに旦那様と同じ色はしてますね。
「っは、ぼ…私はお前の求婚を受けた覚えは無い、ぞ!」
「!!やっぱり旦那様なのですね!すみません私人は見分けるのが苦手でして」
旦那様の顔が引くついてますが、本当の事ですので正直に言いました。
「旦那様でしたら夜這いだろうが何でも私はいつでも構いませんわ」
「は?いや、僕は夜這いにきた訳じゃ………って降りろ、僕の上から今すぐ降りろ」
「?あら?」
私いつの間にか床に倒れた旦那様を跨ぐ様な体制になっておりました。
気づきませんでした…これじゃあ私が旦那様を襲っているように見えるのでは…?
「叫び声と音が聞こえたが一体な、に、を…し……て????」
突然小屋の扉が開き、人の形をした赤茶髪の男が入ってきました。この方も竜の方でしょうか?
そしてその方は扉に手を掛けた体勢で固まってしまいました。
そしてはい、ばっちり私が旦那様を押し倒した(様に見える)現場を見られてしまいました。
「「「…」」」
数秒後に旦那様の悲鳴が谷中に響いたのは言うまでもないですね。




