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Fランク魔王と魔眼メリエス  作者: はかまだ
一章 【独立】
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19話 機甲進撃

 それにしても、帰郷の日の朝食までには顔を出さなくちゃいけないだなんて。

 1日前には魔界へと転移して、オリビア邸付近で寝泊まりしないとならないね。


 オリビア領地街【ネストク】で、先日クレアが放った別れ際の言葉を思い出していた。


 グレンさんの言葉は話半分でいいとして。

 僕はレイミーとサリーを引き連れ、魔界へ続く転移門がある、ネストクの転移施設にやってきていた。


「なあネル、本当にわたし達も行かないと駄目なのか?」

「うう……アレクセン家の者が敷居を跨いで、オリビア家ご当主様はお怒りにならないですかね……い、胃が痛いです」


 レイミー、それ逆じゃないかな。

 どちらかと言えば、アレクセン家の当主のほうが激怒しそうだよ。

 その人となりは伝聞でしか知らないからなんとも言えないけどね。


 遺跡の留守をスライ、フレイネ、シザリーに任せ、昼過ぎに出発。

 レイミーの使い魔である空竜の背に乗って、夕方にはネストクの街に到着していた。


 行先を告げたのは出発の日の朝食の席だった。

 それを聞いた途端、フォークを持つ手を止めて逃走してしまった。


 真っ先に姿をくらましたサリーはスライに捕まり、寝床にうずくまってしまったレイミーには「僕のお願いなのに聞いてくれないなんて残念だよ」と囁いたら、鼻息荒く卓に戻ってくれた。


 暴れて連れ戻されたサリーも、やる気を見せ始めたレイミーも、しばらくすると意気消沈。

 なぜに2人が同伴する事になったかを知って、戦々恐々といった感じだったね。

 


 そんな一悶着はあったものの、ようやくここまで引っ張ってきた。

 転移門の前まで来ておいて未だ決心がつかないところを見ると、オリビア家の威光って言うのは絶大なのだと改めて認識させられる。


「大丈夫だよ。2人とも僕を支える大事な魔王なんだし、そうと知ればダレルさんもクレアも親しみを持って接してくれるからさ」


 とは言ったものの、ダレルさんとクレアなら2人が僕の配下に相応しいかどうか、その資質を確かめようとするだろうからね。

 万が一そんな事態になったとしても、対策は施してある。


 あとはもうオリビア家というものに慣れてもらうしかないね。



 ◆



 魔界エルドネにいくつかある転移施設のひとつは、オリビア家からほど近い【オリビナスの魔都】にも置かれている。


 実はこの転移門、元々は人間界で発見された【神々の失物(かみがみのしつぶつ)】と言われる古代遺産だったんだ。

 人間界の各地に散らばっていたこの遺産は、特に大魔聖地ジグに密集して発見された事もあり、ジグリビアが施す洗脳に一役買っている。


 魔聖教の教義は『魔と聖の調和こそが神へと至る道しるべ』と聞いた。

 そして、神々の失物が多いこの土地こそ、魔と聖が神に近付ける神聖な場所であると。


 ジグリビアがその地に目を付けたのは、きっとその古代遺物の存在を知っていたからだろうね。

 

 まあ今はそれについては置いておこうかな。

 

 オリビナスの魔都にて一夜を明かした僕たちは、転移施設の出口で待ち構えていたオリビア家の従者に連れられて行く。


 ジラフホースと言う魔物の背に乗り屋敷へと向かった。


 首の長い馬の魔物で、1人1匹ずつその背中にまたがる。

 すると、先頭の従者が駆るジラフホースの腰に、その後ろのジラフホースの首が巻き付く。

 僕の後ろも同じように連なって、四足歩行の魔物は十六足歩行となり器用に走っていた。


「ジラフホースの連結は初めて見ました……天邪鬼なこの魔物がここまで従順だなんて、やはりオリビア家は恐ろしいですね」


 と言っていたのはレイミーで、サリーはと言うと、大声ではしゃぎながら屋敷までの道のりを満喫している様子だった。


 念の為言っておくけど、こう見えてサリーは僕たちの中で最年長だからね。

 要所では知的に光る発言をするものの、普段のサリーはお子様そのものなんだよなぁ。

 まあ、だからと言って困る事じゃないけどね。

 いざとなったら実力行使で言う事を聞いてもらうだけだからさ。



 ◆



 ネル達がオリビナスの魔都から、オリビア邸へと向かっていた時。

 主人の留守を預かっている3体の分身体の内、見張り役のスライが遺跡周辺の異常を感じ取った。


「フレイネ、シザリーちょっと来て」


 この3体は徹底した忠心が植え付けられている。

 その対象は、ネル、レイミー、サリーの3人であるのは言うまでもない。


 そんな主人の期待を裏切るのは許されない事であり、交代で見張りを立てている間、手の空いた2体で常に戦闘訓練が行われている。

 片方がゴーレムゴブリンを従え、片方がパラサイトとスナイパーのスライムを使い、攻防の演習を怠らない。


 張りつめたスライの言葉に、フレイネもシザリーも使い魔さえその動きを即座に止める。


「どうしましたかスライ」

「どうしたのだ?」


 この3体の振る舞いは、各個体の主人格を成熟させたような素養へと進化されている。

 分身体となって日々を過ごすうちに、驚くべき吸収速度を見せて成長していった。


 さて、使い魔であるこの3体とここを守護する各魔物達が、なぜに独立して行動出来ているか。

 通常の使い魔であれば、主人が離れ魔導書(ブック)からの魔力供給が途切れた時点で、召喚は解除されてしまう。


 しかし。

 留守を任されここにいる使い魔達は、魔眼メリエスの能力【魔素吸引】の情報をコピーして合成されている。


 常体魔力と対に位置する体外魔力を、大気に浮遊する魔素から作り出し召喚を持続させているのだった。


「外の様子がおかしい。それにもう朝だって言うのに、侵入者が1人も現れないのも変じゃないか?」


 ここ数日で、遺跡を攻略しようとする者は激減した。

 それでも腕に覚えがある高ランクの魔王や、身の程を知らない人間の冒険者の姿がちらほらと見受けられていた。


「パラサイトスライムを斥候に出しましょう」

「うん、もう外に放ってある。もしかしたらネル様が言っていた機甲国家が動いたのかもしれない」

「わたしはゴーレムゴブリンと入り口の警戒にまわっておくぞ」


 遺跡1階。

 この数日、ここは生命の泉を大量に生みだした。


 その経験値が各々の動きを洗練させて行く。


 入り口から地下へ続く最奥の壁までは50メートルほど。

 その半ば辺りでスライへと応答していたシザリーが、ゴーレムゴブリンを盾にしながら入口へ向かう。

 偵察に出ていたパラサイトスライムが、気体から通常の姿へ戻りスライへと報告を済ませた。


 その時。


「まずいっ、敵襲くるぞシザリーっ!」


 スライがそう言ったのと同時。

 「ドゴンっ!」と言う、何かが破裂したような轟音が響く。

 シザリーの前を行く10体のゴーレムゴブリンの内、2体の頭が吹き飛んだ。


 スライは吹き飛んだ頭越しに入口の向こうへと目を向けると、様々な恰好で武装した集団が遺跡へ向かって来るのを確認する。


「フレイネ、迎撃態勢っ! シザリーはゴーレムゴブリンの硬度を最大にして入り口を死守だ! あいつらのあの武器は普通じゃないからな。今までの相手とは同じに思わない事!」

「了解ですスライ」

「任せるのだ。我が同胞2体の仇、思い知らせてやるぞ!」


 ネルが魔界へと旅立って約1日。

 遂に、機甲国家フォーレンの精鋭部隊が動き出した。

 様々な能力を秘めた機甲魔装を手に迫りくる。


 その数20。


 魔改造魔物軍はスライを筆頭に迎え撃つ。

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