15話 疑念
本日2回目の更新です。
平原から玉座の間に戻ると、サリーとユレイさんが打ち解けていた。
なんでも、サリーのお父さん繋がりで話が弾んだとか。
この調子なら、サリーの心も案外回復してきたかもね。
逆にレイミーの様子が少しおかしく見えたのは気のせいだろうか。
夕飯を囲っていても、何かを言いたげに視線を寄越すばかり。
と言っても、今日は少し疲れたよ。
明日から本格的に遺跡の整備もしないといけないし、早く休んでおこうかな。
本当なら魔角が決まってからと思ってたんだけど、思わぬ来客があったからね。
それに。
僕がオリビア家に里帰りしている間、この2人に留守番を任せると言う僕の予定が狂ってしまった。
なので僕たちがいない間の代わりを探さないといけないし、相応の戦力を用意しなくちゃ。
そんな事を考えながら眠りについた翌日。
玉座に座り、帰郷までのスケジュールを思案する。
すると通路の先から話し声が響いてきた。
揃って姿を現したところで朝の約束を済ませる。
「おはよう2人とも」
「おはようなのだ……ふぁぁ~」
「おはようございますネルさん」
ここ数日続く朝の挨拶。
オリビア家での決まりは、僕が独立しても変わらない。
朝、顔を合わせたら必ず挨拶をする。僕のそばにいる限りこれは守ってもらう約束だ。
寝室なんてないから僕が玉座の間、レイミーとサリーは通路の先の小部屋を使っている。
まずはこの拠点の防御を構築したいけど、各自の部屋も欲しいところだね。
「今日はさっそくだけど、2人には働いてもらうからそのつもりでよろしくね」
「ぬ? いったい何を企んでいるのだ?」
どうやらサリーは朝が弱いのか、それともまだうなされていて寝不足なのか、あくびをしながら露骨に嫌そうな顔で抗議しているよう。
とは言っても、なんだかんだで僕の言う事は聞いてくれるから大丈夫。
それより、一夜明けてもレイミーの様子がやはりおかしい。
どうしたんだろうか。
昨日から引き続いて、今日にまで持ち越すような悩みでもあるのかな。
そんな僕の思考に気が付いたわけじゃないだろうけど、神妙な顔つきになったレイミーが口を開いた。
「そ、その前にひとついいですか? ネルさん」
「どうしたのレイミー? ちょっと様子がおかしいね」
何やら改まった感じだから、大事な要件を抱いてるのかも。
「その……サリーさんとも話してたんですけど」
「うん、いいよ、話してみて」
レイミーがチラっとサリーに目をやると、どうやらサリーはその内容に気付いたらしい。
まさか2人とも一緒にお嫁さんにして、なんて事じゃないとは思うけどね。
それとも、サリーの調子が未だに思わしくないとかかな。
「ネルさんはなんでわたし達を殺さずに、こうして側に置いてくれてるのかな、と。この数日間、サリーさんと話して思ったんです。ネルさんならもっとすごい魔術を持ったAランクでも上位の魔王を従えられるはずじゃないですか? なのになんで……」
レイミーの抱えていた、様子をおかしくさせていた悩みは僕の予想とは大きく離れていた。
それを聞いたサリーも、同じ事を言いたかったのだと言わんばかりに「うんうん」と大きく頷いている。
「それにだ。なんでネルはわたしを助けたのだ? ま、まあ、わたしが言うのも恥ずかしいのだが……。
いくらリックがずる賢くて卑怯な手段を使ったとは言え、それがリックを殺す理由にはなれどわたしを生かす理由になるのか?
レイミーはAランクだが、わたしはBなのだぞ? B。そうなると、わたしの美貌に憑りつかれたとしか考えられないのだが、どうなのだ?」
なるほど。
確かにそう言われてみればその通りかもしれない。
憑りつかれてなんかはないけどね。
『あらあら、この子達いつも変な事ばっかりしてるから、ネル以上のお馬鹿さんかと思ってたのに。意外と真面目に自分たちの置かれた状況を考えてたのね。自意識過剰な部分もあるけど、ふふっ』
いや、何か聞き捨てならない言葉も混ざっているけど、メリエスのその印象はおおむね僕と一致している。
こうして聞くと、レイミーの疑問は矛盾してる様に思えるかも知れない。
でも『一緒にいたい気持ち』が満たされて『一緒にいられる理由』を知りたくなったんだろうね。
サリーに至っては珍しく正論かも。
いや、そんな事はないか。
実は彼女、要所で的を射ている発言が多い。
だからまあ、浮かれて調子づいてさえいなければ、僕にすると貴重な戦力なんだよね。
それに、Fランクの魔王に従うAランクなんて探すのに苦労するよ。
僕は早く一人前の魔王として、オリビア家の役に立ちたかったんだ。
何より2人が持つ魔術は、僕が手駒に欲しかった中でも上位の能力だからね。
AランクとBランクの魔物を使えるのも大きな理由。
幅広い使い魔を召喚できるのは僕の理想に適ってるし。
「うん、2人の言いたかった事は充分に理解できたよ。じゃ、その答えを教えてあげるから少しだけ僕に付き合ってもらおうかな」
今ここで、その答えを聞けると期待していた2人のチビッコ魔王は、キョトンとした顔をしている。
まあそれでも僕は彼女たちの了承なんて待たずに、その横を通り過ぎて遺跡の外へと歩きはじめた。
◆
遺跡の入り口と、森の間にある少し開けた場所に来た。
「これからやる事は、もしかしたら2人の意に反する事かもしれない。でも大丈夫。言う通りにしてくれて損はないからさ」
2人の呆けた顔は次第に、怪訝な顔へと変わっていく。
そりゃそうだよね。
いきなりここへ来てそんな事言われたって、さっきの話とどう関係するのか分かりっこないもんね。
「いったい何をするんですか? それがさっきの答えになるのでしょうか?」
「何をしようとしてるのかは分からないが、早くして欲しいのだ。気になって気になってしょうがないぞ!」
傘下同盟なんて言う魔導書の機能があるんだけど、これって文字面だけ見るとそこまでの上下関係が無いように見える。
でも、結局は主従関係を結ぶのと同じなんだよ。
僕の傘下に入った魔王が反旗を翻す事は許されない。
僕に牙を剥いた時点でランクを失って魔王じゃなくなってしまうのだからね。
そのリスクを重々説明する義理は僕にない。
だからこそ、僕は彼女たちにも利益をもたらさなきゃいけないと考えている。
配下に置いた魔王、魔族、魔兵は子と同じ。
何が何でも子を守り、自身の家族を繁栄させるのだと。
なんて言うのは、ダレルさんの受け売りでもあるけどね。
だけど、僕はその理念に共感してここまで過ごして来た。
そしてこれからもそれは変わらない。
だからこそ僕は、親魔王としてのダレルさんも、親としてのダレルさんも支えていきたいと思うんだ。
さあ、そろそろ彼女たちの疑問に答えをあげないといけないね。
これから2人に、いや2人の使い魔にやる事は僕のスライムにも施している【魔改造】。
もしかしたら、2人が可愛がっている使い魔の性能が思わぬ変化を来してしまうかもしれない。
でもそこは僕に任せて欲しい。
何せ僕の手駒として、僕の欲しい能力を有する使い魔じゃないと意味が無いからね。
『最近、働かせてばかりでごめんねメリエス』
『いいえ、むしろ学校にいた時は退屈だったもの。これくらいの方が賑やかでいいじゃない』
相変らずのメリエスに安心し、今日も僕の右眼には紫の炎が灯された。
初の1日2話更新です。
本当なら魔改造の中身まで進めたかったのですが、区切りが悪かったので今日はここまでとなりました。
いつもお読みくださりありがとうございます。




