断末魔
少し短めです。
お楽しみください。
翌日。オフィスに出社した俺を迎えたのは、昨日とは比較にならないほど上機嫌な神谷の姿だった。
彼はコーヒーを啜りながら、あからさまに俺を見下ろす笑みを浮かべている。
「……本田。昨日はいい仕事をありがとうな。おかげで部長も、今回の契約は『俺が教育した結果』だと大変喜んでおられたよ」
勝ち誇ったような、薄ら寒い笑み。
周囲の社員たちが、気の毒そうな視線を俺に送ってくる。神谷は俺が黙り込んでいるのを「敗北感に打ちひしがれている」と勘違いし、さらに調子に乗って言葉を重ねた。
「これからは、俺の指示に従っていればいい。身の丈をわきまえ――」
その時だった。
バァンッ!! と激しい音を立てて、部長室の扉が開かれた。
飛び出してきた部長は、顔を真っ赤に染め、血管を浮き上がらせて神谷のデスクへと突進してくる。
「神谷ォ!! お前、一体全体、何をしたんだッ!!」
怒号がオフィスに轟く。神谷はコーヒーカップを落としそうになり、腰を抜かさんばかりに振り返った。
「へ、へっ……? 部長、一体何のことでしょうか……?」
「とぼけるな!! 『なんと商事』から連絡があったぞ! 今回の担当変更を理由に、契約の即時解除も辞さないという通達だ!!」
神谷の顔から、一気に血の気が引いていく。
さっきまでの傲慢な笑みはどこへやら、彼はガタガタと震え始め、顔面は死人のように真っ青だ。
「そ、そんな……! 先方は、俺からの挨拶に納得していたはずでは……!」
「黙れ! 先方が怒り狂っているんだ! 『本田君以外、担当としては認めない。今すぐ契約書を破棄する』とな!」
神谷は呆然と立ち尽くし、ただ「そんな……」と繰り返すことしかできない。自分の権力で契約を我が物にしたはずが、その権力こそが契約を殺す凶器だったと突きつけられたのだ。
自分の保身のために見苦しく言い訳を始めようとする神谷。
その時だ。
昨日、俺のバインダーを奪い去った葵が、神谷の前にゆっくりと歩み寄った。
彼女の表情から、昨日までの冷徹な仮面は消え失せていた。そこにあったのは、神谷という男を社会的に抹殺する者の、静かな決意だけだった。
葵は立ち尽くす神谷の目の前で、静かに言い放つ。
「神谷課長、ここまでですね」
――
神谷の企みが、阻止されました。
葵の行動にツカサは、何を思う……
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