9話「決闘後の奢り」
「ホッホッホ、本来なら武器の試し斬りの決闘のはずなのにとんでもない試合となりましたね」
「いや、あれはアキラさんがガチりすぎたせいだな」
「人のせいにしないでくれる!?」
決闘が終え、ボロボロになりすぎて行動不可能となったアキラとハヤトは治療室に運ばれ、回復魔法が使える従業員に治療されていた。 そして、その様子をニコニコとしながら社長が椅子に座って眺めていた
「てか、私の最大火力の属性スキルを喰らっておきながら何で武器を投げれるほどの意識があったのよ」
「だから、言っただろ?気合と根性でどうにかしたんだよ」
ハヤトはそう無表情でそう言ってから、回復魔法をかけてくれた従業員に礼を言い、立ち上がった。どうやら、治療が終わったみたいだった。
「うし!!身体も無事動くしOKOK!!…………社長、今日は色々とすまなかったな」
武器の修理&教科、決闘の為の広場の提供や審判、そして、決闘後の治療などなど………
今日は色々と社長に無理をさせてしまった。ハヤトは少ししょぼんとした表情で社長に謝罪をしたが、社長はニコニコとしたまま
「いえいえ、とんでもない。私は、あの雨の夜、ハヤト様が手を差し伸ばしてくれたお陰で今の『疾風』があります。これは私にとって恩返しみたいなものです。そんなに気になさらないでください」
「そっか………。じゃあ、何かあればすぐ依頼出してくれよな。すぐ駆けつけるから」
「えぇ、是非とも」
しょぼんとしていたハヤトは微笑み、社長はさらにニコニコ感が増すと2人は握手を交わした。それを見ている間にアキラの治療も終わり、立ち上がった。
「社長さん、私からも言わせて下さい。今日は本当に迷惑かけてすみませんでした」
ハヤトだけではなく、アキラも罪悪感を感じていた。ましてや、相手はいくらハヤトに慕っている人とはいえ、一流メーカーの社長を務めるお方だ。ハヤト以上に頭を下げて謝罪した
「あまり気にすることではないのですが、そうですね。これからは我社を贔屓してくれるなら全然問題ありませんよ」
そう言って、社長は可愛らしくウィンクをした。いや、可愛いなおい!!とアキラはトキメキを感じ、これからは『疾風』を利用しようと決めた。
「よし!!アキラさん!!腹も減ったしご飯食べに行こう!!もちろん、アキラさんの奢りで」
「はぁ??なんで奢らないと行けないのよ」
突然のハヤトの提案と奢りという発言でアキラは反論するが、ハヤトは無表情で首を傾げながら
「いや、だってアキラさん決闘で負けたし…………。俺にだって何かあっていいよね??」
「ぐっ…………!!しょうがないわね」
確かに、いくら決闘の相手をお願いするための勝った時の褒美があったとはいえ、アキラだけなのはずるい。なので、ハヤトにも勝った時の褒美はあって当然だ。
「じゃ、社長。俺たちはこれで」
「はい、またのお越しをお待ちしております」
そう言って、ハヤトとアキラは『疾風』本社を出た。もう、だいぶ時間が経過していたらしく、夕方になっていた。ご飯を食べに行くにはちょうど良い時間帯だ。
「んで、どこ行くのよ??」
「え?もちろん、アソコに決まってるよ??」
「アソコ??」
そして、ハヤトとアキラはアソコに向かってぼちぼち歩き始めた
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「あのね、ハヤトくん。私、今とっても帰りたい」
「なんで??美味しいじゃん」
「いや、ご飯はとっても美味しいよ?なんなら、今まで食べたヤツより何十倍も美味しいぐらい。けどね」
肉を頬張っているハヤトに対して、アキラは呆れたように親指を背後の方にちょいちょいと指す。
「あの子の目線がとっても痛いの」
アキラが親指を指した方には厨房の壁からじぃーと、アキラを睨みつけているチアキがいた。
そう、ハヤトとアキラはハヤトの事がめっちゃ好きでかつ勘違いでアキラのことを恋のライバル視しているチアキが働いている『スズラン』に来ていた。
「きっと、Sランク冒険者さんが来てるから緊張してるんだよ。あ、この肉うま」
「絶対違うと思う。だって、あの子、右手に藁人形、左手にトンカチ持ってるんだよ??普通、店の看板娘がそんなの持ってる??」
「じゃあ、今のスズランはそういうイベントが開催してるんだよ。あ、この肉も美味い」
「不屈すぎるわ!!あんた、絶対に適当なことしか言ってるでしょ!!」
すると、気づいたらチアキはいなくなっていたが、隣の窓から釘を叩く音が鳴り響いてきた。この音を聞いたアキラは顔を青ざめながら
「ほらぁ!!あの子絶対に藁人形を釘で刺してるよ!!絶対私のこと怨んでるよ!!」
「肉うまかぁ」
「ついに、肉の感想しか言わなくなったわね!!」
ハヤトは危険を感じているアキラに目を向けず、ひたすら美味い美味い言いながら肉を頬張っていた。アキラは「もういいわ」と諦めたかのように溜息を吐き、食事を再開した。
「これからどうするの??」
会話が無くなったので、少し耐えられなくなったアキラはハヤトに質問する。すると、ハヤトは無表情で
「ん?今までと一緒でFランククエストやったり、友達と一緒に酒場行ったりしたりしてダラダラと過ごすと思うよ」
「本当にSランクになる気はないの?」
「アキラさんも諦め悪いねぇ。全然ないよ」
「勿体無いのになぁ。けど、私は諦めないけどね!!」
真剣な眼差しを向けるアキラを見たハヤトは面倒くさそうな表情をした。それ以降はちょいちょい世間話をしながら、時間は経過した。
「ふぃー、お腹一杯だ。アキラさん、ご馳走様でした」
「あなた、凄い食べたわね。まさかAランククエスト1つ分の報酬金が飛んでくとは思ってもみなかったわ」
それなりに稼いでいるアキラにとっては、そこまでダメージとなる金額では無かったが、飲食店だけで大金が飛んだのことに対して、驚きが隠せなかった。ハヤトは「まぁ、いいじゃんいいじゃん」と言って茶化した。
「ハヤトさん!!また来てくださいね!!」
店から出ると、チアキがニッコリとして、ハヤトに声をかけた。そして、ハヤトも無表情で
「もちろん!!また来るねチアキちゃん!!」
「そこの雌ぶt……………アキラさんもまた来てくださいね。一杯サービスしますから」
「いや、今、雌豚って言おうとしたよね!?」
ニコニコとしているが、隠しきれていない殺気を放出するチアキに対してアキラはツッコミを入れる。一体、どんなサービスをされるのか、恐ろしくて聞けやしない。
もう、この店には近づくのはやめよう!!と、アキラは本気で思った。
そして、ハヤトとアキラはそれぞれの場所に帰り、別れた。
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